1.事案の概要
本件は、不正競争防止法(不競法)2条6項の営業秘密該当 性が争点となった事案です。原告Xは、被告Yとの間で、Xの製造 にかかる「バイオ乾燥機」と称される木材用乾燥機をYに販売す る売買契約を締結していましたが、Xの納入が遅れたことを理 由に、Yより当該契約を解除する意思表示がされました。その 後、Yが自身で同種の乾燥機を製造した等の事情があったとこ ろ、Xが、Yは本件契約に際してXから開示された資料(本件資 料)に記載された「バイオ乾燥機」に関する情報(本件情報)を 不正に取得又は使用したと主張し、当該行為は不競法2条1項4 号又は7号の不正競争行為であるとして、Yに対して損害賠償を 求めて本訴訟を提起しました(なお、YからXに対して売買代金 返還請求訴訟も提起され、本訴訟に併合されています。)。
2.本判決-営業秘密該当性の否定
本判決は、概要以下のように述べ、本件情報は不競法2条6 項の営業秘密に該当しないとして、Xの請求を棄却しました。
- 不競法2条6項所定の営業秘密に当たるというためには、本件 情報について、①「秘密として管理されている」こと、②「事業 活動に有用な技術上又は営業上の情報」であること、及び③ 「公然と知られていないもの」であること、の各要件を満たす 必要がある。
そして、上記①の「秘密として管理されている」とは、客観的に みて、情報にアクセスした者において当該情報が秘密情報で あることを認識し得る程度に管理されていることと解される。
- 本件についてみると、本件資料の中には、不動文字で「極秘 資料」である旨の記載や手書きで「秘密情報」である旨の記 載が認められる。
しかし、これらの記載がされた具体的な時期を認めるに足り る的確な証拠はなく、かえって、XからYに送付された同様の資料には、「極秘資料」、「秘密情報」等の記載が存在しない。 そうすると、XがYに本件資料に記載された本件情報を開示し たと主張する時点において、本件資料に「極秘資料」又は「秘 密情報」の記載がされていたと認めることはできない。
- 他に本件資料及び本件情報の具体的な管理方法を認めるに 足りる証拠はないことからすれば、本件情報が、客観的にみ て、これにアクセスした者において当該情報が秘密情報であ ることを認識し得る程度に管理されていたと認めることはでき ず、秘密として管理されていたということはできない。
3.秘密管理性が認められるための留意点
不競法上の営業秘密といえるためには、秘密管理性の要件 を満たす必要がありますが、本判決も指摘するとおり、そのため には、当該情報が秘密情報であることが客観的に認識可能な 程度に管理されていることが必要となります。この点、当該情報 が記録された資料に「秘密資料」や「持出厳禁」といった表示が されていると、秘密管理性を肯定する方向に傾きやすいといえ ますが、仮にそのような表示がされていたとしても、それがいつ の時点から表示されていたのか(行為者に取得・開示された時 点で表示されていたのか)について疑義があると、本件同様、当 該表示をもって秘密管理性を肯定することができなくなります。 したがって、営業秘密として扱われることを企図して、秘密情報 が記録された資料等にその旨の表示を施す場合には、当該表 示を付した時期も証明できるようにしておくことが望ましい点に ご留意ください。
