1Banking & Finance - Insurance2026 年 3 月 6 日大規模乗合保険代理店等に関する内閣府令等の改正案の概要弁護士 村井 惠悟 / 弁護士 津江 紘輝 / 弁護士 高野 聖也監修 弁護士 出張 智己 / 弁護士 福田 直邦 / 弁護士 若狭 一行I. 大規模乗合保険代理店等に関する内閣府令等の改正の経緯「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書(以下「有識者会議報告書」という。)(2024 年6 月 25 日付)1及び「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告書(以下「損害保険業等 WG 報告書」という。)2(2024 年 12 月 25 日付)の提言を踏まえ、2025 年 5 月 30 日に「保険業法の一部を改正する法律」が成立した(2025年 6 月 6 日公布)(以下、同法による改正後の保険業法を「改正保険業法」という。)3。その後、特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する体制整備義務と同様の体制整備義務を、大規模な乗合代理店である生命保険募集人に対しても求める保険業法施行令の改正案のパブリックコメント手続が実施された(2025 年 12 月 19 日公布)(以下改正後の保険業法施行令を「改正保険業法施行令」という。)4。そして、2025 年 12 月 17 日、改正保険業法及び改正保険業法施行令の内容を踏まえて、保険業法施行規則及び保険会社向けの総合的な監督指針(以下「監督指針」という。)の改正案(以下、それぞれ「府令案」、「監督指針案」という。)が公表された。1 https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/houkokusyo.pdf2 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20241225/1.pdf3 損害保険業等 WG 報告書に関する詳しい内容は、当事務所のニュースレター(2025 年 1 月 31 日号)を参照されたい。また、2025 年3 月 7 日に国会に提出された保険業法の一部を改正する法律案に関する解説は、当事務所のニュースレター(2025 年 3 月 25 日号)を参照されたい。4 https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251219/20251219.htmlContentsⅠ.大規模乗合保険代理店等に関する内閣府令等の改正の経緯Ⅱ.大規模乗合保険代理店等に関する内閣府令等の改正案の概要1. 特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)―保険代理店業務(本業)に関する体制整備義務の強化―2. 特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)―自動車修理業等の兼業に関する利益相反管理体制整備義務の強化―Ⅲ.まとめに代えて2これらの改正案については、乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保、保険会社等に対する体制整備義務の強化、保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止及び保険仲立人に関する改正案等と併せてパブリックコメントの募集が開始された5。これらの改正により、改正保険業法の全貌が概ね明らかになったといえる。本ニュースレターは、これらの改正のうち、以下の事項に関する改正について解説する。(1) 特定大規模乗合保険募集人6に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)―保険代理店業務(本業)に関する体制整備義務の強化―(2) 特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)―自動車修理業等の兼業に関する利益相反管理体制整備義務の強化―なお、比較推奨販売に関する改正案の概要については、当事務所のニュースレター(2026 年 1 月 23 日号)を参照されたい。また、保険会社等に対する体制整備義務の強化、保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止及び保険仲立人に関する改正等については、追って別のニュースレターにて解説することを予定している。参考までに、有識者会議報告書及び損害保険業等 WG 報告書による提言の主な内容及びそれに対応する改正等7を示した一覧表を本ニュースレターの末尾に掲載している(2025 年 12 月 17 日にパブリックコメントの募集が開始された前記各改正を除き、関連するリンクは各脚注参照)。改正保険業法の施行日は 2026 年 6 月 1 日8であるが、当該一覧表は今後の動向次第でまだ若干流動的な部分があり得る点は留意いただきたい9。5 「令和 7 年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施について」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/20251217.html)「令和 7 年改正保険業法(1 年以内施行)に係る「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/20251217-2.html)「「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について(保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)関係)」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-3/20251217-3.html)「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-4/20251217-4.html)6 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店をいう(監督指針案Ⅱ-4-2-1④)。なお、「特定大規模乗合生命保険募集人」は、府令案第 53 条の 13 において定義されており、生命保険募集人のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が内閣府令で定める額以上であることその他内閣府令で定める要件に該当するものをいう。また、「特定大規模乗合損害保険代理店」は、改正保険業法第 294 条の 4 において定義されており、損害保険代理店のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が内閣府令で定める額以上であることその他内閣府令で定める要件に該当するものをいう。7 損害保険協会(以下「損保協会」という。)により、ガイドラインの策定予定等が「お客さま・社会からの信頼回復に関する損保協会の取組み」と題するウェブサイト(https://www.sonpo.or.jp/news/shinrai/index.html)(以下「損保協会特設サイト」という。)において公表されている。なお、本ニュースレターの末尾に掲載している一覧表に示した取組みのほか、損保協会は、「募集コンプライアンスガイド」(情報管理版)の策定、会員会社向けコンプライアンスセミナーの開催、損害保険会社に係る個人情報保護指針に基づく対象事業者 4 社に対する指導及び全ての対象事業者に対する個人情報保護法及び「損害保険会社に係る個人情報保護指針」等の遵守についての要請、といった個人情報保護法等遵守態勢の整備のための取組みその他の取組みを実施している。8 「令和 7 年保険業法改正に係る政令の公布及びパブリックコメント結果の公表について」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251219/20251219.html)及び 2025 年 12 月 19 日付官報(号外第 277 号)9 2025 年 9 月 19 日付の生命保険協会(以下「生保協会」という。)「顧客本位の業務運営を推進する今後の取組み~法令・監督指針改正等を踏まえた、会員各社と保険代理店との適切な関係性の構築の推進等の取組み~」によれば、以下の見直しが今後予定されている(https://www.seiho.or.jp/info/news/shared/mt-item/20250919_2.pdf)。(1) 「代理店業務品質評価運営」における評価基準・評価方法の見直し(ア) 2026 年度調査において、見直した評価基準や評価方法に基づき、全認定代理店について再評価を実施予定(2) 監督指針改正等を踏まえた協会ガイドラインの新設・改正(ア) 「保険代理店等に対する便宜供与及び出向に関するガイドライン」の新設(2025 年 9 月 19 日公表済)(イ) 「代理店監査の高度化」に係るガイドラインの改正(ウ) 「比較推奨販売」に係るガイドラインの改正(エ) 「募集代理店共通自己点検表」の点検項目の見直し(3) 代理店への過度な便宜供与に関する通報制度の新設(ア) 生保協会内に、生命保険会社の役職員からの通報窓口を新設(2026 年 4 月頃運用開始予定)3II. 大規模乗合保険代理店等に関する内閣府令等の改正案の概要1.特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)―保険代理店業務(本業)に関する体制整備義務の強化―損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容【特定大規模乗合保険募集人の要件等】⚫ 現行の保険業法令において、乗合代理店のうち、事業報告書の提出等が義務付けられている規模が大きい特定保険募集人(2022 年度において450 社程度存在)の中で、一定規模以上の特定保険募集人に対して、体制整備義務を強化することが適切である。⚫ どのような指標で規模の大きさを考えるかについては、保険代理店としての主たる売上である、保険募集の業務に関してその所属保険会社等から受け取る手数料収入額が、保険代理店としての活動の程度を表していると考えられることから、これを定量的基準として用いることが適切である(損害保険業等 WG 報告書 5 頁)。【特定大規模乗合保険募集人の要件】⚫ 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店の要件として求められる、各事業年度における所属保険会社等10から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額11を、20 億円と規定(府令案第 215 条の 3 第 1 項、第 227 条の 16 第 1項)。⚫ 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店の要件のうち、「その他内閣府令で定める要件」として、以下の事項を規定(府令案第 215 条の 3 第 2 項、第 227 条の 16 第 2 項)。(下線は筆者らによる。)<特定大規模乗合生命保険募集人>➢ 生命保険募集人が損害保険代理店でない場合:当該事業年度の直前の事業年度(以下「判定事業年度」という。)に、二以上の所属生命保険会社等12から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が 20 億円以上➢ 生命保険募集人が損害保険代理店でもある場合:判定事業年度における二以上の所属生命保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が 10 億円以上であり、かつ、当該手数料等の額と、判定事業年度における二以上の所属損害保険会社等13から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額の合計額が 20 億円以上<特定大規模乗合損害保険代理店>➢ 損害保険代理店が生命保険募集人でない場合:二以上の所属損害保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が 20 億円以上➢ 損害保険代理店が生命保険募集人でもある場合:判定事業年10 生命保険募集人、損害保険募集人又は少額短期保険募集人が保険募集を行う保険契約の保険者となるべき保険会社(外国保険会社等を含む。)又は少額短期保険業者をいう(保険業法第 2 条第 24 項)。11 事業報告書の提出等が義務付けられている規模の大きな特定保険募集人の要件にも「手数料、報酬その他の対価の額の総額」という文言が用いられているところ(保険業法施行規則第 236 条の 2 第 1 号~第 3 号)、当該文言は、保険募集に関して特定保険募集人が保険会社から収受している全ての金銭(加入勧奨に係る金銭の収受があればそれを含む。)をいうものと解されている(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(2015 年 5 月 27 日付)No.137-138 回答)。特定大規模乗合代理店に係る要件においても、かかる解釈が参考になると考えられる。なお、2026 年 6 月 1 日に施行予定の改正保険業法施行令第 40 条中の「法 294 条の 3 第 1 項に規定する保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬、その他の対価の額」は、保険業法施行規則第 236 条の 2 各号に定める「手数料、報酬その他の対価の額」と同じとの解釈が示されている(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」No.3 回答(2025 年 12 月 19 日付))。12 所属保険会社等のうち、生命保険会社又は外国生命保険会社等をいう(府令案第 215 条の 3 第 2 項第 1 号)。13 所属保険会社等のうち、損害保険会社又は外国損害保険会社等をいう(府令案第 215 条の 3 第 2 項第 2 号ロ)。4損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容度における二以上の所属損害保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が 10 億円以上であり、かつ、当該手数料等の額と、判定事業年度における二以上の所属生命保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額の合計額が 20 億円以上【特定大規模乗合保険募集人へのみなし規定】⚫ 対象事業年度に係る判定事業年度において上記のいずれかに該当する特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店は、対象事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度に係る各判定事業年度に上記のいずれにも該当しない場合であっても、次の場合には、翌事業年度・翌々事業年度の各判定事業年度において、上記のいずれかに該当するものとみなす(府令案第 215 条の 3 第 3 項、府令案第 227 条の 16 第 3 項)。<特定大規模乗合生命保険募集人>➢ 二以上の所属生命保険会社等から受けた手数料、報酬その他の対価の額の総額が 10 億円以上(府令案第 236 条の 2 第 1 号ロ)である場合(当該翌々事業年度に係る判定事業年度にあっては、当該翌事業年度に係る判定事業年度において、府令案第 236 条の 2 第 1号ロに該当したときに限る。)<特定大規模乗合損害保険代理店>➢ 二以上の所属損害保険会社等から受けた手数料、報酬その他の対価の額の総額が 10 億円以上(府令案第 236 条の 2 第 2 号ロ)である場合(当該翌々事業年度に係る判定事業年度にあっては、当該翌事業年度に係る判定事業年度において、府令案第 236 条の 2 第 2号ロに該当したときに限る。)【特定大規模乗合保険募集人の該非の確認】⚫ 保険募集人は、自社が特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店に該当するか否かを事業年度ごとに確認(監督指針案Ⅱ-4-2-9(9))14。⚫ 特定大規模乗合保険募集人は、自社が特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店の要件を満たすか否かを事業年度ごとに確認し、その確認の結果を所属保険会社等に対して共有する(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(6))。14 なお、特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の履行を免れることを目的とした不適切な行為を行わないといった観点にも留意すべきであるとされている(監督指針案Ⅱ-4-2-9(9)注)。どのような行為を指すかはパブリックコメントを通じて明確化されることに期待したい。なお、金融庁は、国会において、意図的な分社化等によりあえて複数の専属代理店を多数設立するといったような形で潜脱を行おうとする保険代理店が現れた場合には、こうした保険代理店を一体のものとして捉えた上でモニタリングが行われる旨答弁していた(第 217 回国会衆議院財務金融委員会議事録第 21 号(2025 年 5 月 14 日)(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009521720250514021.htm)・金融庁油布企画市場局長答弁及び第 217 回国会参議院財政金融委員会議事録第 14 号(2025 年 5 月 29 日)(https://kokkai.ndl.go.jp/#/detailPDF?minId=121714370X01420250529)・金融庁油布企画市場局長答弁)。5損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容➢ なお、手数料等の総額が府令案第 215 条の 3 第 1 項及び第 2 項又は府令案第 227 条の 16 第 1 項及び第 2 項に定める額に満たない事業年度の翌二事業年度の間においても、府令案第 215 条の 3 第3 項又は府令案第 227 条の 16 第 3 項に基づき、手数料等の総額に応じて、監督指針案Ⅱ-4-2-15-1(1)①ア及びイに掲げる区分に従い、特定大規模乗合保険募集人としての措置を講じる必要がある(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(6))。➢ 当該要件の充足の有無の確認や、当該要件に該当する場合の態勢整備にあたって、特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備義務の履行を免れることを目的とした不適切な行為を行わないことも定められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(6))15。【所属保険会社への通知】⚫ 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める者に対し、遅滞なく、特定大規模乗合生命保険募集人/特定大規模乗合損害保険代理店である旨を通知16(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 8 号、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 5 号)。イ 新たに特定大規模生命保険募集人/特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなったとき:全ての所属保険会社等ロ 特定大規模乗合生命保険募集人/特定大規模乗合損害保険代理店が新たに所属保険会社等を有することとなったとき:当該所属保険会社等【特定大規模乗合保険募集人の体制整備義務】⚫ 「特定大規模乗合保険募集人」に対しては、以下のような体制整備義務等を課すことが適切である(損害保険業等WG 報告書 6-7 頁)。⚫ 府令案・監督指針案において、以下の事項を規定。➢ 営業所又は事務所ごとに、同営業所等において法令等17を遵守して業務を行うための指導等を行う者(以下 「法令等遵守責任者 」という。)を設置すること。【法令等遵守責任者】➢ 保険募集の業務を行う営業所又は事務所ごとに、次に掲げるところにより法令等遵守責任者を設置(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 1号、府令案第 227 条の 17)。 新たに特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して 6 月以内に法令等遵守責任者を設置すること。 法令等遵守責任者として設置した者が欠けるに至ったときは、その日から起算して 3 月以内に新たに法令等遵守責任者を設置15 脚注 14 参照。16 併せて、所属保険会社等の求めに応じて、監督指針案Ⅱ-4-2-15-3 及びⅡ-4-2-15-4 において特定大規模乗合保険募集人に求められる態勢整備等の状況(その予定も含む。)や自社における府令案第 53 条の 14 の 3 に定める業務の実施状況(実施の予定も含む。)その他参考となるべき情報を提供することも求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(1))。17 府令案では、法令、法令に基づく行政官庁の処分又は定款その他の規則と定義されている(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 1 号)。6損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容すること。 法令等遵守責任者は、その業務を的確に遂行するに足りる能力18を有する者であること。 法令等遵守責任者は、他の営業所又は事務所の法令等遵守責任者でないこと。ただし、法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合19は、この限りではない。➢ 本店又は主たる事務所に、法令等遵守責任者を指揮し、法令等を遵守して業務を行うための指導等を行う者 (以下 「統括責任者 」という。)を設置すること。【統括責任者】➢ 本店又は主たる事務所に、次に掲げるところにより統括責任者を設置(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 2 号、府令案第 227 条の 18)。 新たに特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して 6 月以内に統括責任者を設置すること。 統括責任者として設置した者が欠けるに至ったときは、その日から起算して 3 月以内に新たに統括責任者を設置すること。 統括責任者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者であること。⚫ 統括責任者としての業務を的確に遂行するに足りる能力20を有すること。⚫ 統括責任者としての業務を適切に実施することができる管理的又は監督的地位にあること。⚫ 保険募集に現に従事していないこと。⚫ 法令等遵守責任者でないこと。➢ その職務の性質を踏まえると、さらに、コンプライアンス部門や監査部門での業務に従事した経験を有することが望ましい(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3(2)注)。➢ 法令等遵守責任者及び統括責任者には、一定の資格要件を求めることとした上で、そのための試験制度を新設すること。➢ (府令案・監督指針案に直接の定めなし)2118 保険募集の業務を行う役員又は使用人に対し、これらの者が法令等を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行うことができるよう、法令や保険契約に関する知識等を有する人材が選任されることが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3)。19 「法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合」に該当するか否かは、例えば、法令等遵守責任者が担当する営業所又は事務所の数や規模、当該営業所又は事務所における契約件数、当該営業所又は事務所に所属する保険募集人の数、営業所又は事務所間の地理的近接性等の要素も踏まえつつ、法令等遵守責任者としての業務が実効的に実施可能であり、役割や職責が十分に果たされているかに照らして判断される旨注記されている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3(1)注)。このような注記が付されたのは、「数名程度の人員しかいない小規模の営業所又は事務所において法令等遵守責任者が管理業務に専念するには実務上の困難が伴う場合も想定され得るため、こうした営業所又は事務所においてはその実情に応じたできる限りの対応が許容されるべきとの指摘」(損害保険業等 WG 報告書 7 頁脚注 9)を踏まえたものと考えられる。20 法令等遵守責任者を指揮するとともに、役員又は使用人に対し、これらの者が法令等を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行うことができるように、法令や保険契約に関する知識等を有し、業務を適切に実施することができる管理的又は監督的地位にある人材が選任されることが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3(2))。21 業界団体において資格試験制度の創設の動きが進んでいる。脚注 33 参照。7損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容➢ 顧客本位の業務運営に基づく保険募集を確保する観点から、保険募集指針の策定・公表・実施をすること。【保険募集指針】➢ 保険募集の公正を期するため、保険募集に係る保険契約の引受けを行う保険会社の商号又は名称の明示、保険契約の締結にあたり顧客が自主的な判断を行うために必要と認められる情報の提供その他の事項に関する指針を定め、公表し、その実施のために必要な措置を講ずること(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 4 号、府令案第227 条の 21 第 1 項第 1 号)。➢ 具体的には、保険募集指針に、以下の事項のほか、保険募集の公正の確保に関する事項が定められることが求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-2)。 保険業法第 294 条第 3 項に基づき、保険募集を行う保険契約の引受保険会社の商号・名称を明示すること。 保険契約の締結にあたり顧客が自主的な判断を行うために必要と認められる情報として、保険業法第 294 条第 1 項に基づき、保険契約の内容、その他保険契約者等の参考となるべき情報を提供し、わかりやすく説明すること。 特定大規模乗合保険募集人における苦情・相談の受付先を明示するとともに、顧客からの苦情・相談に適切に対応する等契約締結後においても必要に応じて適切な顧客対応を行うこと。➢ 保険募集指針の内容について、顧客に周知するため、保険募集指針の書面による交付又は説明、店頭掲示、インターネットホームページの活用等の必要な措置が講じられること、定期的に検証を行い、必要に応じた見直しが行われることも求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-2)。➢ 苦情処理・内部通報に関する体制を整備すること。【苦情処理】➢ 次に掲げるところにより、保険募集業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保すること(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 3 号、府令案第 227 条の 19 第 1 項~第 4 項)。イ 苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置を講じること。具体的には以下の措置。(1)苦情を受け付けたときは遅滞なく当該苦情に係る事項の原因を究明。(2)改善が必要な場合には所要の措置。(3)苦情申立者から求めがあった場合には、(1)及び(2)の説明を行うこと。(4)苦情受付のための窓口を設置しその連絡先を公表。ロ 苦情を処理したときは、次に掲げる事項を記録した記録を作成し、作成日から 5 年間保存。(1)苦情申立者の氏名・連絡先(明らかでない場合はその旨)(2)苦情受付の日時・場所・苦情受付者の氏名(3)苦情内容(4)苦情に係る事項の原因究明のための調査の内容・結果8損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容(5)苦情の受付から苦情申立者への説明に至るまでのやり取りの経緯(6)イ(2)の措置の内容(7)イ(3)により苦情申立者に説明したときは、その説明した内容・日時ハ イ・ロの措置に関する社内規則等を整備すること。【内部通報】➢ 役員又は使用人による保険募集の業務に係る通報及び相談(以下「内部通報等」という。)に応じ、適切に対応するための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備(府令案第 215 条の 4 第1 項第 6 号、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 3 号)。➢ 体制整備の状況については定期的な検証及び見直しが求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(4))。➢ 内部通報等がなされた事案に係る利害関係者の排除や責任者の独立性の確保等により、内部通報等に対応する業務の独立性・中立性・公正性を確保することや、内部通報等を行った者を特定させる情報の共有は必要最小限にする等により、内部通報等を行った者の探索や不利益な取扱いを防止すること等も求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(4))。➢ 独立した内部監査部門を設置する等、内部監査体制を強化すること。【内部監査】➢ 保険募集の業務に係る内部監査を定期的に行うための責任者の設置、社内規則等22の整備その他の体制の整備(府令案第 215 条の 4第 1 項第 5 号、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 2 号)。➢ 体制の整備に際しては、以下の点に留意すべきことが求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(3))。<経営陣> 代表取締役及び取締役会等に求められる事項は以下のとおりである。⚫ 適正な保険募集の管理を行うことが特に求められる特定大規模乗合保険募集人の特性上、内部監査が極めて重要であることを認識し、内部監査に係る責任者がその業務を適切に遂行するために必要な人員の確保・配置を行うこと。⚫ 内部監査部門(内部監査を定期的に行うための責任者の指示を受けて内部監査に従事する者を含む。)の独立性を確保し、内部監査が確実に実施されるための態勢を構築すること(内部監査の進捗が恒常的に遅延する等、改善を要すると見込まれる場合には必要な対応策を講じることや、代表取締役及び取締役会等による検討状況の記録や証跡の保存を行うことを含む。)。22 社内規則その他これに準ずるものをいう(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 3 号ハ、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 2 号)。9損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容⚫ 被監査部門におけるリスク管理状況等を踏まえた上で、内部監査計画を承認するとともに、内部監査の結果を踏まえて適切な措置を講じること。⚫ 内部監査態勢に関し、所属保険会社等による代理店監査や当局検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組むこと。<内部監査部門> 内部監査部門には以下の事項が求められる。⚫ 被監査部門に対して十分牽制機能が働くよう独立し、かつ、実効性ある内部監査が実施できる態勢となっていること。⚫ 被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上で、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案し、取締役会等の経営陣の承認を得た上で、当該内部監査計画に基づき内部監査を確実に実施すること。⚫ 内部監査の実施にあたって、当該内部監査計画に基づく内部監査の進捗状況のほか、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表取締役及び取締役会等に報告すること。⚫ 内部監査報告書で指摘した問題点に関して、被監査部門に対し改善策の策定を行わせるとともに、被監査部門等による改善への取組状況を適切に管理し、その記録や証跡等を保存すること。⚫ 効率的かつ実効性ある内部監査の実施に向けて、必要に応じて、外部の専門家や保険会社等に意見を求めるとともに、業務運営に反映させること。<監査役監査> 監査役監査を行う場合にあっては、取締役会等(取締役会非設置会社にあっては、代表取締役)による内部監査態勢の構築状況についても業務監査の対象とすること。➢ 保険会社が保険代理店に係る不祥事件届出書を当局に提出した場合、同保険代理店自身が、同不祥事件届出書に係る情報を他の所属保険会社等に通知すること。【不祥事件に関する非届出所属保険会社等への通知】➢ 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店は、所属保険会社等から委託された業務において発生した不祥事件(特定大規模乗合生命保険募集人・特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日以後に発生したものに限る。)について、所属保険会社等が不祥事件の届出を行ったことを知ったときは、遅滞なく、当該所属保険会社等を除く所属保険会社等(以下「非届出所属保険会社等」という。)の全てに対して、当該不祥事件の概要を通知する(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 7 号、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 4 号)。 非届出所属保険会社等に対する不祥事件の概要の通知に際しては、必要に応じて、不祥事件の届出を行った所属保険会社等の協力を得つつ、自らの責任において不祥事件の概要を作成する10損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容ことが求められ、非届出所属保険会社等による照会や調査にも適切かつ十分に協力することが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5))。➢ それとともに、特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店は、当該非届出所属保険会社等から委託された業務において、当該不祥事件を惹起した者が当該不祥事件と類似の不祥事件を惹起した疑いがあると思料するとき23は、当該非届出所属保険会社等に対し、遅滞なく、当該不祥事件を惹起した者の氏名・役職名その他参考となるべき事項を通知する24(府令案第215 条の 4 第 1 項第 7 号、府令案第 227 条の 21 第 1 項第 4 号)25。 非届出所属保険会社等による照会や調査に適切かつ十分に協力することも求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5))。【事業報告書記載事項の拡充】⚫ 「特定大規模乗合保険募集人」に課される体制整備義務を回避することを目的として一定の定量的基準に該当しないよう潜脱する行為や、「特定大規模乗合保険募集人」に該当しない者であっても、保険会社による一定の営業上の配慮が働くことによる保険金不正請求事案と類似の事案の発生を防止する観点から、「特定大規模乗合保険募集人」に対する体制整備義務を強化するだけでなく、現行の保険業法令上、規模が大きい特定保険募集人に提出が義務付けられている事業報告書の記載項目を拡充するとともに、当局による機動的なリスクベースのモ⚫ 別紙様式第 25 号の 2、第 25 号の 3 の事業報告書の様式について、例えば以下のような改正が行われる。➢ 募集関連行為従事者等を通じた見込客の紹介等の有無の記載事項の拡充(提供元の事業者名、有償・無償の別、被紹介者数の記載欄の追加等)➢ 保険募集を除く保険会社等との取引の状況として、保険会社等からの便宜供与に関する社内規則・基準等の内容、保険会社等からの出向(出向元、出向者の人数・担当業務等)、保険募集に関する事務代行、広告出稿、研修費用、システム費用、その他保険会社等と行っている経営支援を目的とした取引等、保険会社等との取引等が比較・推奨販売に与える影響の確認・検証方法の記載欄の追加➢ 保険会社等から支払われている募集手数料以外の金銭の状況の追加➢ 保険募集・契約管理・共同募集に関するシステムの導入状況の追加23 類似の不祥事件を惹起した疑いの有無については、所属保険会社等の協力も得つつ、組織として適切に検討を実施することが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5))。24 「不祥事件を惹起した者の氏名及び役職名その他参考となるべき事項」に係る個人情報等としては、不祥事件を惹起した者に係る個人情報に限定される(例えば、当該不祥事件の被害者や当該不祥事件を惹起した者の関係者等の氏名等は含まれない。)ことを踏まえ、通知の内容に当該不祥事件を惹起した者以外の個人情報等が含まれていないか、通知の送付先に誤りがないか等を複数名で確認するなどにより、個人情報等の漏洩などの個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)への違反又は抵触が生じないよう、十分に留意することが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5))。なお、ここでの個人データの提供は、あくまでも個人情報保護法第 27 条第 1 項第 1 号にいう「法令に基づく場合」として、府令案第215 条の 4 第 1 項第 7 号又は府令案第 227 条の 21 第 1 項第 4 号に基づき非届出所属保険会社等への共有が認められる場合を示すものであるが、その他の根拠法令に基づき非届出所属保険会社等への共有が認められる場合があることを踏まえ、適法かつ必要な範囲での情報共有が図られるよう、併せて留意することが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5)注)。また、上記の通知に係る期間・頻度に関しては、例えば、金銭の費消・流用事案(その疑いのある事案を含む。)等、顧客の財産に被害が生じ得る事案や犯罪行為のおそれがある事案等、不祥事件の内容や性質によっては被害の拡大防止の観点から非届出所属保険会社等による迅速な伏在調査の実施が必要となる場合もあることから、事案の内容に応じて可能な限り迅速かつ適切な頻度で行うよう努めることが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(5))。25 当該通知に基づき、非届出所属保険会社等においても、必要に応じて、伏在調査等を適切に行うことが求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-1(4)④)。11損害保険業等 WG 報告書の提言の内容 府令案・監督指針案の内容ニタリングを行っていくことが適切である。(損害保険業等 WG 報告書 5 頁)以上のとおり、特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店の要件が規定された上で、保険募集の業務に係る特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備義務として、多岐にわたる事項が規定されている。以下では、上表記載の事項から、特に注目される点について敷衍する。(1) 特定大規模乗合保険募集人の該非の確認損害保険業等 WG 報告書の提言で明記されていたわけではなかったものの、特定大規模乗合保険募集人に該当することとなった場合等における保険募集人による所属保険会社等への通知(府令案第 215 条の 4 第 1 項第 8 号、府令案第227 条の 21 第 1 項第 5 号)や、保険募集人による特定大規模乗合保険募集人該当性の事業年度ごとの確認(監督指針案Ⅱ-4-2-9(9))及びその結果の所属保険会社等への共有(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(6))が規定されている。これらの制度は、ある保険代理店が特定大規模乗合保険募集人にあたるか否かに関しては、保険会社側が把握できるわけではないことを踏まえたものと考えられる。これらの制度により、保険会社は、保険代理店側からの情報提供に依拠して、その保険代理店が特定大規模乗合保険募集人に該当するか否かを判断できるような仕組みとなっていることが注目される。なお、金融庁による国会における答弁によれば、特定大規模乗合保険募集人に該当する保険代理店は約 70 社~100社となることが見込まれている26。(2) 法令等遵守責任者・統括責任者に求められる事項及び猶予期間特定大規模乗合保険募集人には、法令等遵守責任者及び統括責任者の設置義務が課されることとなる。しかし、これらの役職に就くには、一定の資格要件が求められることが想定されている。そのため、特定大規模乗合保険募集人に該当することとなったとしても、法令等遵守責任者及び統括責任者の要件を充たす適切な人材が不足しているといった事態が生ずることも予想される。法令等遵守責任者及び統括責任者の設置に関して、特定大規模乗合保険募集人に該当することとなった日から起算して 6 月以内に設置という一定の猶予期間が設けられたのは、このような配慮に基づくものと考えられる。法令等遵守責任者については、特定大規模乗合保険募集人は、保険募集の業務を行う営業所又は事務所ごとに設置することが求められている。また、法令等遵守責任者には、以下の対応が求められているが(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3(1))、保険募集に現に従事していないことは求められていない。・ 役員又は使用人に対する助言又は指導を的確に実施するため、統括責任者による指揮の下、自らが担当する営業所又は事務所の保険募集の実態(保険会社等からの便宜供与の状況等を含む。)を把握し、その適切性について定期的な検証(便宜供与による比較推奨販売への影響の有無に係る確認・検証等を含む。)を行い、その結果を統括責任者に報告すること。・ 上記の検証の結果不適切と認められる場合には、改善に向けて適切な措置を講じること。・ 自らが担当する営業所又は事務所の法令等遵守の状況等について、保険会社等又は当局の求めに応じて、適切かつ十分な説明を行うこと。一方、統括責任者について、特定大規模乗合保険募集人は、営業部門からの独立性を確保した上で統括責任者を設置するとともに、統括責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要な人員の配置を含めた体制整備を行うことが求められている。その際、統括責任者には保険募集に現に従事していないことが求められているため、保険募集を行う部門26 第 217 回国会衆議院財務金融委員会議事録第 21 号(2025 年 5 月 14 日)・金融庁油布企画市場局長答弁(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009521720250514021.htm)及び第 217 回国会参議院財政金融委員会議事録第 14 号(2025 年 5 月 29 日)・金融庁油布企画市場局長答弁(https://kokkai.ndl.go.jp/#/detailPDF?minId=121714370X01420250529)12の者が統括責任者を兼ねることは想定されていない点に留意を要する。また、統括責任者には、以下の対応が求められている(監督指針案Ⅱ-4-2-15-3(2))。・ 役員又は使用人に対する助言又は指導を的確に実施するため、法令等遵守責任者等を通じて、自社の保険募集の実態(保険会社等からの便宜供与の状況等を含む。)や法令等遵守責任者の業務の内容を把握し、その適切性について定期的な検証(便宜供与による自社の比較推奨販売への影響の有無に係る確認・検証等を含む。)を行うこと。・ 上記の検証の結果不適切と認められる場合には、改善に向けて適切な措置を講じること。・ 自社の法令等遵守の状況等について、取締役会等の経営陣へ定期的に報告すること。・ 保険会社等又は当局の求めに応じて、適切かつ十分な説明を行うこと。このように、統括責任者に求められる事項は厳格なものとなっているように見受けられるところ、その背景には、「法令等遵守責任者や統括責任者の設置にあたっては、これらの者が保険代理店の経営陣に直接報告できるようなレポーティングラインが確保されていることや、営業部門からの介入が及ばないような体制が確保されていることが必要であるほか、これらの者は保険募集業務に従事することなく、管理業務に専念できるようにすべき」との指摘が存在するものと考えられる(損害保険業等 WG 報告書 7 頁脚注 9)。一方、法令等遵守責任者に関しては、「数名程度の人員しかいない小規模の営業所又は事務所において法令等遵守責任者が管理業務に専念するには実務上の困難が伴う場合も想定され得るため、こうした営業所又は事務所においてはその実情に応じたできる限りの対応が許容されるべきとの指摘」(損害保険業等 WG 報告書 7 頁脚注 9)を踏まえ、統括責任者ほどに厳格な規制は設けられていないように見受けられる点に注目される。(3) 保険募集指針・苦情処理・内部通報・内部監査に関する猶予期間保険募集指針の策定・公表・実施、苦情処理(苦情記録の作成・保存義務を除く。)、内部通報、及び内部監査のための体制の整備に係る措置は、新たに特定大規模乗合生命保険募集人又は特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して 6 月間の猶予期間が設けられている(府令案第 215 条の 4 第 2 項、府令案第 227 条の 19 第 4項、府令案第 227 条の 21 第 2 項)。ただし、6 月間という期間は決して余裕のあるものではないことには留意が必要である。(4) 不祥事件に関する非届出所属保険会社等への通知前述のとおり、特定大規模乗合保険募集人は、所属保険会社等から委託された業務において発生した不祥事件について、所属保険会社等が不祥事件の届出を行ったことを知ったときは、遅滞なく、非届出所属保険会社等の全てに対して、当該不祥事件の概要等を通知する等が求められることとなり、当該通知に基づき、非届出所属保険会社等においても、必要に応じて、伏在調査等を適切に行うことが求められるため、複数の所属保険会社等において同時並行で調査が行われることも想定される。この点に関連して、損害保険業等 WG 報告書では、保険代理店に係る不祥事件について、保険会社ごとに不祥事件に該当するか否かの判断基準に差異が見られることから、不祥事件の届出制度の実効性を確保するためには、保険会社において恣意的な判断がなされないような仕組みを検討することも重要であるとの指摘があったことも記載されていた(損害保険業等 WG 報告書 7 頁脚注 10)。しかし、今般の府令案及び監督指針案には、「不祥事件」の判断基準に関する追加的な記載は見受けられない。なお、不祥事件に関する非届出所属保険会社等への通知が、不祥事件の届出を行った所属保険会社等との間の代理店委託契約上の秘密保持条項に違反しないかは、念のため確認を要すると思われる。(5) 事業報告書の記載事項の拡充前述のとおり、特定大規模乗合保険募集人にあたらなくとも、規模が大きい特定保険募集人に提出が義務付けられている事業報告書の記載内容を拡充することで、特定大規模乗合保険募集人に課される体制整備義務の潜脱目的の行為や、特定大規模乗合保険募集人に該当しない者への保険会社による営業上の配慮に基づく保険金不正請求事案と類似13の事案の発生を防止するのを防止することが図られている。このため、事業報告書の提出が義務付けられる規模が大きい特定保険募集人は、保険会社による営業上の配慮に基づく保険金不正請求事案と類似の事案の発生防止のための体制整備の検討にあたっては、事業報告書を通じて当局によるモニタリングがなされることを念頭に、事業報告書にどのような事項・粒度の記載が求められているかというところから逆算して検討することも有用であると考えられる。2.特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)―自動車修理業等の兼業に関する利益相反管理体制整備義務の強化―損害保険業等 WG 報告書の提言 府令案・監督指針案の内容⚫ 「特定大規模乗合保険募集人」のうち保険金関連事業を兼業する者に対しては、「特定大規模乗合保険募集人」に求める体制整備義務の一環として、以下の事項を求めることが適当である(損害保険業等 WG 報告書 6 頁)。【保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務の範囲(兼業特定保険募集人の範囲)】⚫ 「保険募集の業務以外の業務」の定義中の「保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務」(改正保険業法第 102 条の 2 の 2 第 2項)として、自動車の修理業務及びこれに付随する業務を規定(府令案第 53 条の 14 の 3)。【兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店に求められる体制整備】⚫ 特定大規模乗合損害保険代理店は、自身の行う業務が、「保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務」(府令案第 53 条の 14 の3)に該当するかを定期的に確認することが求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(7))。⚫ 「保険募集の業務以外の業務」(改正保険業法第 100 条の 2 の 2 第 2項)により顧客の利益が害されることを防止するために、特定大規模乗合損害保険代理店に求められる体制整備義務として、以下の事項を規定。➢ 不当なインセンティブにより顧客の利益又は信頼を害するおそれのある取引を特定すること。(a)対象業務27を特定するための体制の整備(府令案第 227 条の 20 第1 項第 1 号)。➢ 当該取引を適切に管理する方針の策定・公表を求めること。(b)(a)、(c)、(d)及び(e)の措置の実施の方針(以下「実施方針」という。)の策定及びその概要の適切な方法による公表(同項第 5 号)。なお、下記(3)も参照。➢ 不当なインセンティブにより顧客の利益又は信頼を害することを防止するためのその他の体制整備(修理費等の請求に係る適切な管理体制の整備等)を求めること。(c) 対象業務がその所属保険会社等による保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう適切に監視すること(同項第 2 号)。(d)上記の監視のための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備(同項第 3 号)。(e)対象業務の全部又は一部を委託する場合は、その委託先の監督に際して、当該特定大規模乗合損害保険代理店又はその所属保険会社等が行う保険関連業務28に係る顧客の利益が不当に害されるこ27 その特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集業務以外の業務であって、保険金の支払の請求に関するものをいう(府令案第 227 条の 20 第 1 項第 1 号)。28 保険関連業務は、保険業法第 97 条、第 98 条及び第 99 条(これらの規定を第 199 条において準用する場合を含む。)の規定並びに他の法律により保険会社又は外国保険会社等が行うことができる業務をいう(改正保険業法第 100 条の 2 の 2 第 1 項)。14損害保険業等 WG 報告書の提言 府令案・監督指針案の内容とを防止するための体制の整備(同項第 4 号)。(f) 次に掲げる記録の保存(同項第 6 号)。 (a)の体制の下で実施した対象業務の特定に係る記録 (c)の対象業務の監視に係る記録 (d)及び(e)の体制の整備に係る記録(作成日から 5 年間保存。府令案第 227 条の 20 第 2 項)⚫ 自身の行う業務が「保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務」(府令案第 53 条の 14 の 3)に該当する場合、特定大規模乗合損害保険代理店は、監督指針案Ⅱ-4-2-15-5 に掲げる措置を講じるための体制を整備することを要する(監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(7))。具体的には、対象業務が保険金の支払に不当な影響を与えることを防止するため、以下の点に留意して体制整備を行うことが求められる(監督指針案Ⅱ-4-2-15-5)。(1)対象業務がその保険会社による保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう、その確認・検証を行う責任者を設置するとともに、当該責任者の関与の下、以下の観点も含め適切な措置を講じるための体制を整備。その際、当該責任者がその業務を適切に遂行できるよう必要な人員の配置を行う。① 自動車の損傷状況や修理内容など、見積額の適切性に係る証跡を適切かつ十分に記録・保存。また、当該責任者は、その記録・保存の状況や、修理費等の過大な見積り等の保険金不正請求につながり得る事案がないか、定期的に調査・検証。② 保険会社からの求めに応じて、上記①により記録・保存している証跡を提出し、その内容について適切かつ十分に説明できる体制を整備。(2)当該責任者が保険金不正請求に繋がり得る事案を把握した場合には、速やかに保険会社及び取締役会等の経営陣に対して報告を行うとともに、経営陣の適切な指示・関与の下、以下の観点も含めて適切な措置を講じるための体制を整備。① 深度ある調査・分析や関係者へのヒアリング等を実施。② 複数回の調査を経ても保険会社との間で見解の相違が存在する場合等には、必要に応じて事案の解明に向けて第三者の関与も含める等、透明性・客観性を確保。(3)実施方針(府令案第 227 条の 20 第 1 項第 5 号)の概要は、その趣旨が明確に現れていること。その公表方法は、店頭でのポスター掲示やホームページへの掲載等、顧客等に対して十分に伝わる方法となっていること。(4)見積額の適切性に係る証跡や(1)①に掲げる定期的な検証に係る記録のほか、(1)及び(2)に掲げる体制整備に係る記録について、府令案第 227 条の 20 第 2 項に基づき保存し、その適切性を事後的に検証できる体制を整備。また、対象業務の全部又は一部を委託する場合も、同条に基づく記録の保存も含め、上記(1)及び(2)に係る措置15損害保険業等 WG 報告書の提言 府令案・監督指針案の内容を適切に実施するための外部委託先管理を行う体制を整備。(5)対象業務に係る苦情処理体制について、監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(2)と同様の体制を整備。(6)対象業務に係る内部監査及び内部通報体制について、それぞれ監督指針案Ⅱ-4-2-15-4(3)及び(4)と同様の体制を整備。(7)上記(1)から(6)に掲げる措置((3)を除く。)に係る社内規則等を策定し、社内に周知。⚫ 兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店は、次に掲げる措置を講じることも求められる(府令案第 227 条の 21 第 1 項第 6 号)。(a)保険募集の業務以外の業務に係る内部監査を定期的に行うための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備。(b)役員又は使用人による保険募集の業務以外の業務に係る通報及び相談に応じ、適切に対応するための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備。⚫ 保険金関連事業を兼業する全ての保険代理店に関しても、以下が提言されている(損害保険業等 WG 報告書 6頁)。➢ 監督指針において、不当なインセンティブによる顧客の利益又は信頼を不当に害することの防止が重要であるとの理念を明確化⚫ 保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務を行う全ての損害保険代理店において、その規模・特性に応じて、兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店が講ずべき態勢整備等(監督指針案Ⅱ-4-2-15-5)に準じた態勢整備がなされることが望ましい旨追加(監督指針案Ⅱ-4-2-16)。➢ 「顧客本位の業務運営に関する原則」(特に原則3「利益相反の適切な管理」)の周知を改めて図り、同原則の理念を踏まえ、その規模や業務特性に応じた自主的な取組みを促す⚫ 規模・特性に応じた態勢整備の検討にあたっては、「顧客本位の業務運営に関する原則」、特に原則 3「利益相反の適切な管理」29を踏まえることも考えられる旨注記(監督指針案Ⅱ-4-2-16 注)。29 「顧客本位の業務運営に関する原則」(2024 年 9 月 26 日付)の原則 3 は、「金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである」としている。また、利益相反の可能性を判断するにあたって、例えば、以下の事情が取引又は業務に及ぼす影響についても考慮すべきとしている。・ 金融商品の販売に携わる金融事業者が、金融商品の顧客への販売・推奨等に伴って、当該商品の提供会社から、委託手数料等の支払を受ける場合・ 金融商品の販売に携わる金融事業者が、同一グループに属する別の会社から提供を受けた商品を販売・推奨等する場合・ 同一主体又はグループ内に法人営業部門と運用部門を有しており、当該運用部門が、資産の運用先に法人営業部門が取引関係等を有する企業を選ぶ場合16(1) 兼業特定保険募集人による保険募集の業務以外の業務の範囲改正保険業法に定義されている「兼業特定保険募集人」は、特定保険募集人30のうち、改正保険業法第 294 条の 3 第1 項に規定する保険募集の業務31以外の業務を行う者とされている(改正保険業法第 100 条の 2 の 2 第 2 項)。ここでの「保険募集の業務以外の業務」は、「当該業務の対価にその所属保険会社等から保険契約に基づき支払われる保険金が充てられる業務であって当該保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務として内閣府令で定めるものに限」るとされており、どの範囲の兼業業務が規制対象となるかについて注目が集まっていた。この点について、府令案第53 条の 14 の 3 は「自動車の修理業務及びこれに付随する業務」のみを規定している。もっとも、後述(3)のとおり、保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務を行う全ての損害保険代理店において、その規模・特性に応じて、兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店が講ずべき態勢整備等に準じた態勢整備がなされることが望ましいとされている点に留意が必要である。(2) 兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店に求められる体制整備に関する猶予期間兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店に求められる上表中の(a)から(e)の措置に関しては、新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して 6 月間の猶予期間が設けられている(府令案第 227 条の 20 第 3 項)。ただし、6 月間という期間は決して余裕のあるものではないことには留意が必要である。(3) 保険金関連事業を行う場合の体制整備前述のとおり、「兼業特定保険募集人」の定義における「保険募集の業務以外の業務」は、「自動車の修理業務及びこれに付随する業務」に限定されているが、監督指針案では、「保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務」を行う全ての損害保険代理店において、その規模・特性に応じて、監督指針案Ⅱ-4-2-15-5 に準じた態勢整備がなされることが望ましいとされている(監督指針案Ⅱ-4-2-16)。かかる監督指針案は、損害保険代理店に限定しており、生命保険代理店を対象としていないこと、及び損害保険代理店においても「その規模・特性に応じて」との留保がなされている点にも注目される。「保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務」の意義に関しては、損保協会の「募集コンプライアンスガイド」が定める利益相反取引の類型が、解釈上の参考となると思われる。「募集コンプライアンスガイド」は、保険金関連事業(「保険金の使途となるような財・サービスを提供する事業」)を兼業する保険代理店が、実際よりも高い金額で修理費用を請求する行為や、実際には存在しなかった損傷等をあったものとして保険金を請求する行為等を、利益相反取引に該当するものとしている。その上で、自動車修理工場を兼業する場合における自動車修理費等の請求以外にも、以下の取引を利益相反取引の類型として挙げている32。ただし、これらはあくまで具体例であり、「保険金関連事業を兼業する代理店のほかにも、利益相反のおそれがある場合には、適切に管理していくことが重要」であると考えられる(同「募集コンプライアンスガイド」100 頁参照)。・ 建設業等を兼業する場合における自然災害時の建物修理費用等の請求・ 不動産管理会社等を兼業する場合における不動産修繕費等の請求・ ロードアシスタンス業を兼業する場合における自動車事故時の代車・レッカー費用等の請求・ 旅行代理店を兼業する場合における救援者の旅行費等の請求・ 小売業を兼業する場合における携行品損害の事故による代替品の購入費等の請求・ 動物病院を兼業する場合におけるペットの手術費用等の請求30 生命保険募集人、損害保険代理店又は少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除く。)をいう(保険業法第 276 条)。31 自らが保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入させるための行為に係る業務その他の保険募集の業務に密接に関連する業務を含むとされている(改正保険業法第 294 条の 3 第 1 項)。32 損保協会「募集コンプライアンスガイド」(2025 年 9 月版)99-100 頁(https://www.sonpo.or.jp/about/pdf/boshuguide.pdf)。17III. まとめに代えて今般、府令案及び監督指針案が公表されたことで、改正保険業法に基づく新たな規制の全体像が示されたが、特定大規模乗合保険募集人に求められる体制整備は、一定の猶予期間が設けられている事項もあるものの、従前に比して相当に重いものとなる。現状では解釈が明らかとなっていない事項も多いことから、今後、パブリックコメントの結果並びに生保協会及び損保協会の取組みを通じて、これらの点の明確化が図られるか否かを含めて、今後の動向に引き続き注視が必要である。【有識者会議報告書及び損害保険業等 WG 報告書による提言の主な内容及びそれに対応する改正等の一覧表】提言項目 提言箇所 改正箇所顧客本位の業務運営の徹底大規模乗合代理店に対する体制整備義務の強化等・ 規制の対象となる大規模乗合代理店の特定・ 保険金関連事業(自動車修理業等の、保険金から修理費等の支払を受けることで利益を得られる事業をいう。以下同じ。)を兼業する大規模乗合代理店への対応・ 大規模乗合代理店に求める体制整備のあり方等・ 大規模乗合代理店以外に関する事業報告書の記載項目の拡充有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書法律・政令・府令・監督指針・協会ガイドライン等33乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書府令・監督指針・協会ガイドライン等34保険会社による指導等の実効性の確保等有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書法律・府令・監督指針35・協会ガイドライン等3633 損保協会により、2024 年 12 月 26 日、「募集コンプライアンスガイド」(追補版)が公表されている(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000005bfu-att/241226_01.pdf)。また、2025 年 9 月 5 日、「募集コンプライアンスガイド」の改定により、保険代理店の兼業に伴う弊害の防止の観点から、利益相反管理に関する記載が追加された(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/qt6qln0000000fkk-att/250905_01.pdf)。その他、損保協会特設サイトによれば、損保協会は、募集人資格制度の見直しのため、①損保協会が運営する募集人資格制度の高度化に向けた、継続教育の観点からの制度の充実を図ることが検討中のほか、②損保協会が運営する募集人資格制度の厳格化に向けた、損保一般試験の出題形式の変更、③募集人向けの法令等遵守責任者資格の創設がなされている(https://www.sonpodairiten.jp/oshirase/shiken_20250321.html、https://www.sonpo-dairiten.jp/oshirase/hourei_jyunsyu_202508.html)。34 損保協会により、2024 年 12 月 26 日、「募集コンプライアンスガイド」(追補版)が公表され、2024 年 12 月 18 日、「自動車保険のご加入時に知っておきたいポイント」と題するウェブサイトが公表されている。さらに、損保協会により、2025 年 4 月 25 日、乗合代理店における保険加入時の消費者の意向や認識を把握することを目的に実施された消費者アンケートの実施結果が公表されている(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000005bfu-att/241226_01.pdf、https://www.sonpo.or.jp/insurance/car/point.html、https://www.sonpo.or.jp/news/shinrai/pdf/enquete_250425.pdf)。35 「損害保険会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。36 損保協会により、2023 年 11 月 30 日、「損害保険の保険金支払いに関するガイドライン」の改訂版が公表され、2024 年 9 月 19 日、「修理工場向け写真撮影手引」が公表されている。2025 年 2 月には、事故車の査定を実施するアジャスター向けに不正請求に関する18提言項目 提言箇所 改正箇所損害保険分野における自主規制のあり方の整理(保険代理店の業務品質の第三者評価枠組み等)有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書協会ガイドライン等37※自主規制機関の設置は見送り代理店手数料ポイント制度 有識者会議報告書 監督指針38、協会ガイドライン等39保険代理店等に対する便宜供与の適正化有識者会議報告書 府令・監督指針40、協会ガイドライン等41保険代理店への出向等の適正化 有識者会議報告書 監督指針42、協会ガイドライン等43入庫紹介の適正化 有識者会議報告書 協会ガイドライン等44健全な競争環境の実現共同保険のビジネス慣行の適正化 有識者会議報告書 協会ガイドライン等45・公正取引委員会46知見を高めるための研修動画の提供を開始した(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i0000003yy6-att/240919_05.pdf)。37 損保協会は、2025 年 3 月 28 日、「代理店業務品質に関する評価指針」(案)の意見公募結果を公表し、2025 年 6 月 12 日、代理店の業務品質を中立的な第三者が公正かつ適正に評価する仕組み(「代理店業務品質評価制度」)を運営する第三者機関として、「代理店業務品質評議会」を設置し、2025 年度からトライアル運用を開始している。本格運用は 2026 年度からを予定されている(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i00000075wa-att/250328_01.pdf、https://www.sonpo.or.jp/news/release/2025/g34l0i0000007pzf-att/250612_01.pdf)。38 「代理店手数料の算出方法適正化」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。39 損保協会により、2024 年 9 月 19 日、「代理店手数料ポイント制度に関する基本的な考え方」が公表されている(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i0000003yw2-att/240919_04.pdf)。40 「保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r6/hoken/20250512/20250512.html)。41 損保協会により、2024 年 12 月 26 日、「募集コンプライアンスガイド」(追補版)が公表され、2025 年 9 月 5 日、保険会社向けの「損害保険会社による便宜供与適正化ガイドライン」が策定されて、損害保険会社による便宜供与の適正化に関する通報制度として、損害保険会社の役職員から通報を受け付ける過度な便宜供与にかかる通報窓口が新たに設置された(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000005bfu-att/241226_01.pdf、https://www.sonpo.or.jp/news/release/2025/qt6qln0000000kxk-att/250905_01.pdf)。生保協会は、2025 年 9 月 19 日、保険会社向けの「代理店業務品質評価運営」における評価基準・評価方法の見直しを行った。また、生保協会は、同日、保険会社向けの「保険代理店等に対する便宜供与及び出向に関するガイドライン」の策定及び「保険募集人の体制整備に関するガイドライン」の改訂を行い、生命保険会社による便宜供与の適正化に関する通報制度として、生命保険会社の役職員から通報を受け付ける過度な便宜供与にかかる通報窓口を新たに設置予定である(2026 年 4 月頃運用開始予定)(https://www.seiho.or.jp/info/news/shared/mt-item/20250919_2.pdf)。42 「保険代理店等に対する不適切な出向の防止」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。43 損保協会により、2024 年 9 月 19 日、「損害保険会社からの出向者派遣に係るガイドライン」(以下「損保協会出向ガイドライン」という。)が公表され、2025 年 9 月 18 日、損保協会出向ガイドラインが改訂されている(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i0000003yrf-att/240919_02.pdf)。また、生保協会により、2025年9月19 日、保険会社向けの「保険代理店等に対する便宜供与及び出向に関するガイドライン」が公表され、「保険募集人の体制整備に関するガイドライン」が改訂されている(https://www.seiho.or.jp/info/news/shared/mt-item/20250919_2.pdf)。44 損保協会により、2023 年 11 月 30 日、「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」の改訂版が公表されている(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2023/g34l0i0000000e64-att/231130_03.pdf)。45 損保協会特設サイトによれば、損保協会は、各保険会社の保険料率を統一せずに共同保険を組成する「ディファレンシャル方式」の手順書を策定し、2025 年 3 月に会員各社に周知したほか、シンジケートローンを参考にした「アレンジャー方式」の実現に向けた検討を行うとのことである。46 公正取引委員会により、2024 年 10 月 31 日、「共同保険に係る独占禁止法上の留意点等について」が公表され、独占禁止法遵守の周知徹底について金融庁及び損保協会に対して要請が発出されている。これを受けて、損保協会は、同日、「【協会長コメント】公正取引委員会からの要請を受けての対応について」を公表している19提言項目 提言箇所 改正箇所独占禁止法等遵守のための適切な法令等遵守態勢の確立有識者会議報告書 協会ガイドライン等47政策保有株式の縮減 有識者会議報告書 監督指針48・協会ガイドライン等49損害保険会社における態勢の確保・ 適切な営業推進態勢の確保・ 適切な保険引受管理態勢の確保有識者会議報告書 監督指針50保険仲立人の活用促進・ 媒介手数料の受領方法及び保証金制度の見直し・ 保険代理店等との協業の見直し・ 海外直接付保における保険仲立人の活用・ 保険仲立人の不祥事件の届出義務の新設有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書法律・政令・府令・監督指針51(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/oct/241031_shinsa.html)。47 損保協会特設サイトによれば、損保協会により以下の各種施策が講じられている。2023 年 12 月 15 日、「損害保険会社の独占禁止法遵守のための指針」の改訂(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2023/g34l0i0000000jfi-att/231215_01.pdf)2024 年 2 月 27 日、「募集コンプライアンスガイド」を改訂(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2023/g34l0i0000001jakatt/240227_02.pdf)2024 年 3 月 6 日、「保険契約引受にかかる独占禁止法上の留意点」の公表(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2023/g34l0i0000001vc4-att/240306_01.pdf)2024 年 10 月 17 日、独占禁止法の遵守に向けた会員会社向けのセミナーの開催(継続実施予定)(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000004sld-att/241108_02.pdf)2024 年 10 月 21 日、会員会社のガバナンス態勢強化に向けた、内部監査に関する会員会社向けのセミナーの開催(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000004qbh-att/241108_01.pdf)2024 年 12 月 26 日、「募集コンプライアンスガイド」(追補版)の公表(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000005bfu-att/241226_01.pdf)2025 年 9 月 5 日、「募集コンプライアンスガイド」を改訂(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/qt6qln0000000fkk-att/250905_01.pdf)2025 年 12 月 1 日、「独占禁止法コンプライアンス・セミナー」の開催(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/a5663v0000000ayr-att/251201_02.pdf)48 「政策保有株式の縮減」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。49 損保協会により、2024 年 9 月 19 日に、「政策保有株式に係るガイドライン」(以下「損保協会政策保有株式ガイドライン」という。)が公表され、2025 年 9 月 18 日、損保協会政策保有株式ガイドラインが改訂されている(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i0000003ynm-att/240919_01.pdf、https://www.sonpo.or.jp/news/release/2025/qt6qln0000000pt1-att/250918_01.pdf)。50 「適切な営業推進態勢の確保」に関しては、2025 年 12 月 17 日に公表された「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」において、保険金等支払管理態勢に関する事項とともに、改正案が示されている。一方、「適切な保険引受管理態勢の確保」に関する改正については、現時点では明らかではない(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-4/20251217-4.html)。なお、「顧客等に関する情報管理態勢の整備」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。51 「仲立人の媒介手数料の受領方法の見直し」に関しては、2025 年 8 月 28 日、「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/20250828.html)。20提言項目 提言箇所 改正箇所保険会社による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書法律・府令・監督指針・協会ガイドライン等52企業内代理店に関する規制の再構築・ 特定契約比率規制の見直し・ 保険仲立人への特定契約比率規制の適用・ 「特別の利益の提供」の禁止の観点からの適正化有識者会議報告書損害保険業等 WG 報告書監督指針・協会ガイドライン等53火災保険の赤字構造の改善等・ 企業向け損害保険商品のモニタリングの高度化・ 火災保険参考純率の算出方法の見直し・ 参考純率算出及び標準約款作成の対象となる保険種目の拡大損害保険業等 WG 報告書府令54・告示55・(監督指針・)損害保険料率算出機構以上52 損保協会により、2024 年 12 月 26 日、「募集コンプライアンスガイド」(追補版)が公表され、2025 年 9 月 5 日、「募集コンプライアンスガイド」が改定されている(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2024/g34l0i0000005bfu-att/241226_01.pdf、https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/qt6qln0000000fkk-att/250905_01.pdf)。53 損保協会特設サイトによれば、損保協会は、「保険代理店経由で契約情報を取得する際の同意書フォーム(ひな型)を策定する」ことを検討中とのことである。54 料率団体が参考純率の算出を行うことができる保険の種類に関しては、2025 年 8 月 29 日、損害保険料率算出団体に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令、及び、新たに参考純率算出の対象となる保険種目を定める告示案の意見公募結果が公表され、同日より適用が開始されている(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250829/20250829.html)。55 2025 年 4 月 1 日付で、「保険業法施行規則第七十条第四項等の規定に基づき、損害保険会社等の責任準備金の額の計算に用いる金額等を定める件の一部を改正する件」及び「保険業法施行規則第二百十一条の四十六の規定に基づく金融庁長官が定める方法及び積立て並びに取崩し等に関する基準の一部を改正する件」が公布・適用されている。これは、「昨今の自然災害の激甚化・頻発化を踏まえ、異常危険準備金の積立を促進するため、損害率の水準が同程度の保険種類における準備金残高について、一体的に管理することを認める等の改正を行うもの」である(https://www.fsa.go.jp/news/r6/hoken/20250401/20250401.html)。www.amt-law.com 本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的アドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、下記弁護士までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。 本ニュースレターの執筆者は、以下のとおりです。弁護士 村井 惠悟弁護士 津江 紘輝弁護士 高野 聖也監修者: 弁護士 出張 智己弁護士 福田 直邦弁護士 若狭 一行 ニュースレターの配信停止をご希望の場合には、お手数ですが、お問い合わせにてお手続き下さいますようお願いいたします。 ニュースレターのバックナンバーは、こちらにてご覧いただけます。
