【出典:台湾経済部国貿局ウェブサイト、台湾外交部ウェブサイト】

台湾は、「環太平洋パートナーシップ協定」(Trans-Pacific Partnership,略称:TPP)への加盟に積極的に取組んできたが、2017年1月にトランプが大統領に就任した後、アメリカがTPPからの離脱を決めたため、2017年11月に開催されたAPEC首脳会議で、日本主導のもとベトナムと共同で、アメリカを除くTPPの原加盟国11カ国による「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership,略称:CPTPP)」の合意を発表した。

この原加盟国の11カ国とは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレイシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムである。CPTPPは、TPPの高い基準を維持しつつ、申請条件が緩和、開放され、各国間の経済貿易統合の柔軟性が向上した。このほか、TPPの段階で困難だった条項、例えば、知的財産権保護などは、一部が凍結されることになった。

TPPの原加盟国は、ほとんどが台湾の主な貿易パートナーであり、台湾の対外貿易額の3割以上を占めている。CPTPPに変更になっても台湾にとっては非常に重要である。しかも将来的に米国が再度加盟する可能性もある。また、この11の加盟国のGDPは10.2兆ドルで、世界のGDPの13.6%を占め、台湾との貿易額は、台湾の対外貿易総額の25%以上を占めており、台湾が地域統合に参加することは不可欠である。そのため、台湾はCPTPPへの参加にも積極的であったが、残念ながら、第2回交渉参加の機会を逃してしまった。

以下はCPTPPの簡単な紹介である。

一、発効要件

CPTPPは、6カ国又は半数以上の加盟国が署名を完了し、且つ国内の批准手続きを完了した後、60日で発効する。加盟国のGDP合計値は発効要件に入っていない。CPTPPは協定の発効後、あらゆる国又は独立の関税地域からの参加申請を受け付ける。

二、CPTPPで凍結された知的財産権の条項

1. 第十八・八条 内国民待遇

TPP協定の第十八条は知的財産権の保護に関する規定である。そのうちの十八・八条は「内国民待遇」を規定しており、締約国は、知的財産権の保護に関して、自国の国民に与える待遇よりも不利でない待遇を他の締約国の国民に与えることが定められていた。しかしながら、一部の条項(例えば「著作権に基づき関連する報酬を徴収する権利」)は、実現が困難であるため、CPTPPでは、この部分に対して、加盟国の政府に自国の国民と同じレベルの保護をその他の加盟国の国民に与えることを義務付けないとした。

2. 第十八・三十七条 特許を受けることができる対象事項

TPPでは、各締約国は、新規性、進歩性及び産業上の利用可能性のある全ての技術分野の発明(物であるか方法であるかを問わない)について特許を取得できるようにしなければならないと規定されていた。CPTPPでは、「既知の物の新たな用途、既知の物を使用する新たな方法又は製造方法、及び職務関連発明」を特許保護の対象にすることを要求しないこととした。

3. 第十八・四十六条 特許を与える当局の遅延についての特許期間の調整

TPPでは、各締約国に、特許出願の審査を効率的且つ適時に処理するために最善の努力を払うことを要求しており、出願人もその特許出願の審査を迅速に行うことを要請することができ、各締約国は、特許の付与において不合理な遅延がある場合、当該締約国は特許出願人の要請により、当該遅延について補償するために、当該特許権の特許期間を調整しなければならなかった。CPTPPでは、締約国の政府に補償として特許期間を延長することを要求しないこととした。

4. 第十八・四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整

TPPでは、特許出願を処理することに努力しなければならないことに加え、医薬品の販売承認の申請を効率的且つ適時に処理し、特許の保護対象となっている薬品については、各締約国は特許期間の調整を利用可能なものとしなければならないと規定されていた。

CPTPPでは、医薬品の主管官庁による販売承認の結果として特許期間に不合理な短縮が生じた場合について、締約国の政府に補償として特許期間を延長することを要求しないこととした。

5. 第十八・五十条 開示されてない試験データ又はその他のデータの保護

TPPでは、締約国は、新規の医薬品の販売承認を与える条件として、当該薬品の安全性及び有効性に関する開示されてない試験データ又はその他のデータの提出を要求する場合、当該新規の医薬品が当該締約国の領域で販売を承認された日から少なくとも五年間、そのデータを提供した者の承諾を得ずに、第三者が次の何れかの情報に基づき同一又は類似の医薬品を販売することを認めてはならない…と規定されていた。

CPTPPでは、開示されていない医薬品の試験データ又はその他のデータについて、統一の独占的な保護期間の付与を要求しないこととし、この規定を緩和した。

6. 第十八・五十一条 生物製剤の保護

新規の生物製剤の保護に関して、TPPでは、締約国は、生物製剤に属し又は生物製剤を含む新規の医薬品の当該締約国における最初の販売承認について、新規の医薬品の開発を促進し、類似の生物製剤の市場での即時販売を加速させ、適用範囲がこれらの新規の医薬品販売承認の国際発展と一致するようにするために、第十八・五十条の「開示されてない試験データ又はその他のデータの保護」の規定を準用すると規定されていた。

CPTPPでは、生物製剤のデータについて、統一の独占的な保護期間の付与を要求しないこととした。

7. 第十八・六十三条 著作権及び関連する権利の保護期間

TPPでは、締約国が付与する著作物、実演又はレコードの保護期間について、自然人の場合、著作者の生存期間及び著作者の死後少なくとも七十年とし、非自然人の場合は、著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも七十年とし、或いは創作から二十五年以内に権利者の許諾を得た公表が行われなかった場合、その保護期間は創作の年の終わりから少なくとも七十年とすると規定されていた。

CPTPPでは、著作物、実演又はレコードの保護期間は著作者生存期間及び著作者の死後七十年に延長することを要求しないこととした(すなわち死後50年を維持する)。

8. 第十八・六十八条 技術的保護手段

TPPでは、締約国は、著作者、実演家及びレコード製作者が自己の権利の行使に関連して用い、許諾されてない行為を抑制するために設けた効果的な技術的保護手段に、適当な法的保護及び効果的な法的救済を提供し…締約国は、故意に及び商業上の利益又は金銭上の利得のために前記に掲げる行為に従事した場合について、刑事上の手続き及び刑罰を定めると規定されていた。

CPTPPでは、著作権者が技術的な保護手段を講じた著作物、実演又はレコードを、許諾を得ずに無断で使用した場合について、民事、刑事責任を要求しないこととした。

9. 第十八・六十九条 権利管理情報

TPPでは、締約国は、著作者、実演家又はレコード製作者の著作権及び関連の権利の侵害を誘い、可能にし、助長し、又は隠す結果となることを知りながら又は知ることができる理由を有しながら、許諾を得ずに次の行為を行った場合、第十八・七十四条に規定する救済措置に関連する責任を負わなければならず…、締約国は、故意に及び商業上の利益又は金銭上の利得のために前記行為を行った場合について、刑事上の手続き及び刑罰を定めると規定されていた。

CPTPPでは、権利者が著作物に表示した権利管理情報を故意に除去又は改変した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととした。

10. 第十八・七十九条 衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号の保護

TPPでは、締約国は、係争の装置又はシステムの製造、組立て、変更、輸入、輸出、販売、賃貸又はその他の方法により頒布する行為について、刑事責任を科し、また、締約国は、衛星放送用の暗号化された番組伝送用の信号又は内容について利益を享受し、且つ前記行為により損害を受けた者のために民事救済措置を定めなければならず、故意に前記行為を行った場合について、刑事責任又は民事上の救済措置を定めると規定されていた。

CPTPPでは、衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号に係る装置又はシステムを、許諾を得ないで製造し、輸出入し又は頒布した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととした。

11. 第十八・八十二条 法的な救済措置及び免責

TPPでは、締約国は、前記の権利侵害行為について、権利者が法的な救済措置を利用することができることを確保し、及びインターネット・サービス・プロバイダが提供するオンライン・サービスに関する適当な免責を確立し、又は維持すると規定されていた。

CPTPPでは、特別な民事・刑事救済ルートの提供を義務づけず、各国の既存の司法救済を利用するようにし、また、ISPと権利者とが協力することによって免責されるメカニズムの構築を要求しないこととした。

三、台湾は、当初TPPに加盟することができなかったが、TPPに関する一回目の法律の検討後に、下記の内容に合わせて『専利法』、『著作権法』の一部の条文の改正案が立法院に送られた。

第十八・四十六条:特許審査による不合理な遅延に対し、特許期間の延長を要求しないこととする。

第十八・六十八条:著作権者が技術的な保護手段を講じて暗号化した著作物、実演及びレコードを、許諾を得ずに無断で使用した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

第十八・六十九条:権利者が著作物に表示した権利管理情報を故意に除去又は改変した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

第十八・七十九条:衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号に係る装置又はシステムを製造、輸出入、頒布した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

医薬品のパテントリンケージ制度について、台湾では2017年12月29日に『薬事法一部条文改正案』が可決されたほか、TPPの規定に合わせるため『化粧品衛生管理条例』、『商標法』、『植物品種及び種苗法』、『農薬管理法』、『デジタル通信伝播法草案』、『郵政法』などの改正案が、既に審議のため立法院に送られたが、CPTPPが若干の条項の適用を凍結したため、今後これらの法案は再検討する必要がある。

参考資料:2018年3月9日経済部の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定に関するウェブページ、2018年2月21日経済部の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定に関する公開文書

 

中国 国務院弁公庁、5年以内に商標 登録の審査時間を4ヶ月以内に短縮することを通知

【出典:中国政府網】

中国国務院は2018年8月5日に「国発弁[2018]79号」『全国的な放管服改革の深化による政府職能の転換についてのテレビ電話会議における重点任務の業務分担に関する方案』(以下『放管服深化の業務分担方案』という)を発表した。その主な目的は「放管服」(行政簡素化と権限委譲、管理監督の強化、サービスの最適化)改革を深化させ、中国政府の職能転換を加速化させ、発展環境を最適化することである。この方案は、内容が複雑で関連する機関も多いため、知的財産権、不正競争などの関連項目についてのみ以下にまとめた。

一、任務の分担

(一)行政簡素化と権限委譲

1.既存の審査及び許可事項について、一つ一つ徹底的に見直して、国家の安全保障や重大な公共利益などに係る項目以外のものは、廃止できるものは廃止し、権限を委譲できるものは速やかに委譲する。市場メカニズムで効果的に調整できる経済活動は、審査及び許可を保留しない。届出、登録、行政確認、意見募集などの名のつく実質的な審査及び許可事項については速やかに改善する必要がある。

2.会社の設立所要日数をさらに短縮するために、工商、税務、公印、社会保険などに関する手続きを併合して簡素化し、銀行口座の開設を許可制から届出制にして、来年上半期には会社設立所要日数を8.5営業日以内に短縮し、5年以内には5営業日以内に短縮する。

3.2018年に全国で「証照分離(営業許可証と各種許認可証の分離)」改革を推進する。ポイントは、「照後減証(営業許可書の取得後は許認可が簡略化、審査不要など)」であり、廃止できる審査は廃止し、一部は届出、告知承諾に変更することができる。当面、廃止要件を満たさないものについては、「多証合一(複数の登記証・コード証の統一化)」などの方法によりサービスの最適化を図る。

4.市場主体の簡易抹消登記に関する改革の推進。

5.工業製品の生産許可証制度の改革を深化させ、全面的に各種許可を整理して、製品認証への転換を加速化させる。国際的に認められている方法に沿うよう、現行の製品認証制度を規範化し改善する。

6.商標登録、専利出願などの利便化改革を深化させ、5年以内に商標登録の審査期間を4ヶ月以内に短縮し、発明専利(特許)の審査期間を3分の1削減する。そのうち、高付加価値専利の審査期間を半減にする。(知識産権局担当)

主な措置は以下の通りである。

(1) 商標登録の所要期間を大幅に短縮する。2018年末までに、一般に向けて商標データベースを公開し、商標登録の審査期間を6ヶ月に短縮する。2019年末までに、更に5ヶ月に短縮し、5年以内には、4ヶ月以内に短縮する。(知識産権局担当)

(2) 2018年末までに、高付加価値専利の審査期間を10%以上短縮する。2019年末までに、発明専利(特許)の審査待ち案件を10万件削減する。高付加価値専利の審査期間を30%以上短縮する。5年以内に、発明専利(特許)の審査期間を3分の1削減し、そのうち高付加価値専利の審査期間を半減にする。(知識産権局担当)

7.投資項目の審査改革の推進(以下省略)。

8.プロジェクトの審査承認プロセスの最適化(以下省略)。

9.市場の統一及び公平な競争を妨げる各種規定及び慣行を徹底的に見直し廃止して、資格許可、政府調達、科学技術プロジェクト、基準制定などの面において、異なる所有制の主体に対する公平な待遇を保障し、地方の保護を廃止する。独占性を有する業種については、異なる業種の特性に応じて、競争性のあるビジネスの自由化を図る。今後、政策を制定する際には、全て公平競争の審査を行って評価しなければならず、優遇政策を実施する際も普遍性を持った政策を中心とする必要がある。

主な措置は以下の通りである。

(1) 2018年に各地域、各関連部門を組織し、市場の統一と公平な競争を妨げる政策の見直しと廃止を完了させ、公平競争審査制度の執行状況を調査する。2019年に『公平競争審査制度実施細則(暫定)』を改訂して、関連制度を改善する。

(2) 2018年に既存の政策措置における地方保護、指定取引、市場障壁などに関わる内容を見直し廃止する。行政独占事件を継続的に取締り且つ発表し、行政権利の濫用を是正して、競争制限行為を排除する。(市場監管総局担当)

(3) 政府調達分野の政策制定において、公平競争審査の評価に関連する規定を厳格に実施して、公平な競争の市場環境を維持する。(財政部担当)

10.全国統一の市場参入ネガティブリスト制度を実施し、リストに記載された制限事項を削減し、「非禁即入(禁止されていなければ、参入できる)」の全面的な実施を促進する。

11.クロスボーダー貿易の利便化の水準を高め、5年以内に輸出入の全体通関時間を半分に短縮する。(税関総署担当)

(二)監督管理の革新により公平と秩序を管理(以下省略)。

(三)サービスの最適化により利便性と品質を生み出す。

31.水・電気・ガス・暖房、銀行、公証などのサービス分野の改革を加速化させる。(以下省略)

主な措置は以下の通りである。

(1) 公証サービスにおいては、2018年末までに、「最多跑一次(1回出向けば済む)」改革を全面的に推進し、公証機関と政府の関連部門の情報システムを連結させて、サービス効率の向上を実現させる。(司法部担当)(以下省略)

32.全国的に一体化した行政事務サービスのプラットフォームを構築する。「ネットワーク化が原則、ネットワークからの分離は例外」を堅持し、地方のプラットフォーム、部門の専用ネットワーク、独立した情報システムの統合的な連結業務を遂行して、審査事項、手続きプロセス、データ交換などの方面において標準化を促進する。5年以内に行政事務サービスの「一網通弁(一つのネットワークで一括処理)」を全面的に実現させる。

33.地域、部門、階層間の情報資料の共有を積極的に推進する。3年以内に国務院の部門資料の共有を実現し、地方の一般的な行政事務ニーズを満させる。

34.プラットフォームの構築と情報共有の安全性を確立する。行政事務ネットワークと資料情報の安全性を確保し、営業秘密と個人情報を保護する。

35.電子証明書、電子印鑑、電子署名、電子ファイルの認定・使用が困難であることや、地域を跨いだ手続きが困難であることといった問題について、関連する法律法規の改善を加速化させる。

二、業務要求(以下省略)

 

 

TPPに代わる CPTPPの知的財産権に関する条項

【出典:台湾経済部国貿局ウェブサイト、台湾外交部ウェブサイト】

台湾は、「環太平洋パートナーシップ協定」(Trans-Pacific Partnership,略称:TPP)への加盟に積極的に取組んできたが、2017年1月にトランプが大統領に就任した後、アメリカがTPPからの離脱を決めたため、2017年11月に開催されたAPEC首脳会議で、日本主導のもとベトナムと共同で、アメリカを除くTPPの原加盟国11カ国による「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership,略称:CPTPP)」の合意を発表した。

この原加盟国の11カ国とは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレイシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムである。CPTPPは、TPPの高い基準を維持しつつ、申請条件が緩和、開放され、各国間の経済貿易統合の柔軟性が向上した。このほか、TPPの段階で困難だった条項、例えば、知的財産権保護などは、一部が凍結されることになった。

TPPの原加盟国は、ほとんどが台湾の主な貿易パートナーであり、台湾の対外貿易額の3割以上を占めている。CPTPPに変更になっても台湾にとっては非常に重要である。しかも将来的に米国が再度加盟する可能性もある。また、この11の加盟国のGDPは10.2兆ドルで、世界のGDPの13.6%を占め、台湾との貿易額は、台湾の対外貿易総額の25%以上を占めており、台湾が地域統合に参加することは不可欠である。そのため、台湾はCPTPPへの参加にも積極的であったが、残念ながら、第2回交渉参加の機会を逃してしまった。

以下はCPTPPの簡単な紹介である。

一、発効要件

CPTPPは、6カ国又は半数以上の加盟国が署名を完了し、且つ国内の批准手続きを完了した後、60日で発効する。加盟国のGDP合計値は発効要件に入っていない。CPTPPは協定の発効後、あらゆる国又は独立の関税地域からの参加申請を受け付ける。

二、CPTPPで凍結された知的財産権の条項

1. 第十八・八条 内国民待遇

TPP協定の第十八条は知的財産権の保護に関する規定である。そのうちの十八・八条は「内国民待遇」を規定しており、締約国は、知的財産権の保護に関して、自国の国民に与える待遇よりも不利でない待遇を他の締約国の国民に与えることが定められていた。しかしながら、一部の条項(例えば「著作権に基づき関連する報酬を徴収する権利」)は、実現が困難であるため、CPTPPでは、この部分に対して、加盟国の政府に自国の国民と同じレベルの保護をその他の加盟国の国民に与えることを義務付けないとした。

2. 第十八・三十七条 特許を受けることができる対象事項

TPPでは、各締約国は、新規性、進歩性及び産業上の利用可能性のある全ての技術分野の発明(物であるか方法であるかを問わない)について特許を取得できるようにしなければならないと規定されていた。CPTPPでは、「既知の物の新たな用途、既知の物を使用する新たな方法又は製造方法、及び職務関連発明」を特許保護の対象にすることを要求しないこととした。

3. 第十八・四十六条 特許を与える当局の遅延についての特許期間の調整

TPPでは、各締約国に、特許出願の審査を効率的且つ適時に処理するために最善の努力を払うことを要求しており、出願人もその特許出願の審査を迅速に行うことを要請することができ、各締約国は、特許の付与において不合理な遅延がある場合、当該締約国は特許出願人の要請により、当該遅延について補償するために、当該特許権の特許期間を調整しなければならなかった。CPTPPでは、締約国の政府に補償として特許期間を延長することを要求しないこととした。

4. 第十八・四十八条 不合理な短縮についての特許期間の調整

TPPでは、特許出願を処理することに努力しなければならないことに加え、医薬品の販売承認の申請を効率的且つ適時に処理し、特許の保護対象となっている薬品については、各締約国は特許期間の調整を利用可能なものとしなければならないと規定されていた。

CPTPPでは、医薬品の主管官庁による販売承認の結果として特許期間に不合理な短縮が生じた場合について、締約国の政府に補償として特許期間を延長することを要求しないこととした。

5. 第十八・五十条 開示されてない試験データ又はその他のデータの保護

TPPでは、締約国は、新規の医薬品の販売承認を与える条件として、当該薬品の安全性及び有効性に関する開示されてない試験データ又はその他のデータの提出を要求する場合、当該新規の医薬品が当該締約国の領域で販売を承認された日から少なくとも五年間、そのデータを提供した者の承諾を得ずに、第三者が次の何れかの情報に基づき同一又は類似の医薬品を販売することを認めてはならない…と規定されていた。

CPTPPでは、開示されていない医薬品の試験データ又はその他のデータについて、統一の独占的な保護期間の付与を要求しないこととし、この規定を緩和した。

6. 第十八・五十一条 生物製剤の保護

新規の生物製剤の保護に関して、TPPでは、締約国は、生物製剤に属し又は生物製剤を含む新規の医薬品の当該締約国における最初の販売承認について、新規の医薬品の開発を促進し、類似の生物製剤の市場での即時販売を加速させ、適用範囲がこれらの新規の医薬品販売承認の国際発展と一致するようにするために、第十八・五十条の「開示されてない試験データ又はその他のデータの保護」の規定を準用すると規定されていた。

CPTPPでは、生物製剤のデータについて、統一の独占的な保護期間の付与を要求しないこととした。

7. 第十八・六十三条 著作権及び関連する権利の保護期間

TPPでは、締約国が付与する著作物、実演又はレコードの保護期間について、自然人の場合、著作者の生存期間及び著作者の死後少なくとも七十年とし、非自然人の場合は、著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも七十年とし、或いは創作から二十五年以内に権利者の許諾を得た公表が行われなかった場合、その保護期間は創作の年の終わりから少なくとも七十年とすると規定されていた。

CPTPPでは、著作物、実演又はレコードの保護期間は著作者生存期間及び著作者の死後七十年に延長することを要求しないこととした(すなわち死後50年を維持する)。

8. 第十八・六十八条 技術的保護手段

TPPでは、締約国は、著作者、実演家及びレコード製作者が自己の権利の行使に関連して用い、許諾されてない行為を抑制するために設けた効果的な技術的保護手段に、適当な法的保護及び効果的な法的救済を提供し…締約国は、故意に及び商業上の利益又は金銭上の利得のために前記に掲げる行為に従事した場合について、刑事上の手続き及び刑罰を定めると規定されていた。

CPTPPでは、著作権者が技術的な保護手段を講じた著作物、実演又はレコードを、許諾を得ずに無断で使用した場合について、民事、刑事責任を要求しないこととした。

9. 第十八・六十九条 権利管理情報

TPPでは、締約国は、著作者、実演家又はレコード製作者の著作権及び関連の権利の侵害を誘い、可能にし、助長し、又は隠す結果となることを知りながら又は知ることができる理由を有しながら、許諾を得ずに次の行為を行った場合、第十八・七十四条に規定する救済措置に関連する責任を負わなければならず…、締約国は、故意に及び商業上の利益又は金銭上の利得のために前記行為を行った場合について、刑事上の手続き及び刑罰を定めると規定されていた。

CPTPPでは、権利者が著作物に表示した権利管理情報を故意に除去又は改変した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととした。

10. 第十八・七十九条 衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号の保護

TPPでは、締約国は、係争の装置又はシステムの製造、組立て、変更、輸入、輸出、販売、賃貸又はその他の方法により頒布する行為について、刑事責任を科し、また、締約国は、衛星放送用の暗号化された番組伝送用の信号又は内容について利益を享受し、且つ前記行為により損害を受けた者のために民事救済措置を定めなければならず、故意に前記行為を行った場合について、刑事責任又は民事上の救済措置を定めると規定されていた。

CPTPPでは、衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号に係る装置又はシステムを、許諾を得ないで製造し、輸出入し又は頒布した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととした。

11. 第十八・八十二条 法的な救済措置及び免責

TPPでは、締約国は、前記の権利侵害行為について、権利者が法的な救済措置を利用することができることを確保し、及びインターネット・サービス・プロバイダが提供するオンライン・サービスに関する適当な免責を確立し、又は維持すると規定されていた。

CPTPPでは、特別な民事・刑事救済ルートの提供を義務づけず、各国の既存の司法救済を利用するようにし、また、ISPと権利者とが協力することによって免責されるメカニズムの構築を要求しないこととした。

三、台湾は、当初TPPに加盟することができなかったが、TPPに関する一回目の法律の検討後に、下記の内容に合わせて『専利法』、『著作権法』の一部の条文の改正案が立法院に送られた。

第十八・四十六条:特許審査による不合理な遅延に対し、特許期間の延長を要求しないこととする。

第十八・六十八条:著作権者が技術的な保護手段を講じて暗号化した著作物、実演及びレコードを、許諾を得ずに無断で使用した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

第十八・六十九条:権利者が著作物に表示した権利管理情報を故意に除去又は改変した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

第十八・七十九条:衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送用信号に係る装置又はシステムを製造、輸出入、頒布した場合について、民事、刑事責任を科することを要求しないこととする。

医薬品のパテントリンケージ制度について、台湾では2017年12月29日に『薬事法一部条文改正案』が可決されたほか、TPPの規定に合わせるため『化粧品衛生管理条例』、『商標法』、『植物品種及び種苗法』、『農薬管理法』、『デジタル通信伝播法草案』、『郵政法』などの改正案が、既に審議のため立法院に送られたが、CPTPPが若干の条項の適用を凍結したため、今後これらの法案は再検討する必要がある。

参考資料:2018年3月9日経済部の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定に関するウェブページ、2018年2月21日経済部の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定に関する公開文書