1.事案の概要
(1)本件は、発明の名称を「情報処理装置及び方法、並びにプ ログラム」とし、「知的財産権の活用を希望する権利者等に対 して、当該知的財産権を有効活用してくれる候補者を数多く かつ容易に提示すること」を目的とする発明(本件発明)の特 許出願ついて、特許庁より、進歩性欠如を理由に拒絶査定が なされたところ、不服審判についても同様に不成立の審決 (本件審決)となったことから、出願人X(原告)より当該審決 の取消請求がなされた事案です(補正手続等の詳細は省略 しています。結論として、知財高裁も、進歩性欠如を認めて本 件審決を維持しています。)。本件発明はいわゆるサブコンビ ネーション発明と認定されたところ、その発明の要旨認定が 問題となったため、本稿ではその点を中心に取り上げます。
(2)前提として、サブコンビネーション発明とは、「二以上の装置 を組み合わせてなる全体装置の発明、二以上の工程を組み 合わせてなる製造方法の発明等(コンビネーション)に対し、 組み合わされる各装置の発明、各工程の発明等」(特許・実 用審査基準参照)を言います。
本件発明は、「知的財産権の活用を希望する権利者等に 対して、当該知的財産権を有効活用してくれる候補者を数多 くかつ容易に提示する」という目的を達成するために、概要 ①知的財産権の権利者(請求項1における「第1ユーザ」)の 情報処理装置(コンピューター)から当該知的財産権に関す る公報の情報(請求項1における「第1情報」)を通知(送信) し、②その通知を受けたサーバにおいて、㋐当該公報の情報 から特定の情報を抽出し、㋑その情報と別途サーバに登録さ れていた情報を基に通知対象者を決定し、㋒通知対象者の 端末に当該知的財産権の情報を通知し、㋓その後、通知対 象者の端末から、当該知的財産権に対してその者が興味を有する旨の情報を受信し、㋔それを基に知的財産権に興味 を有する者が存在することを少なくとも示す情報(興味を有 する通知対象者のリストなど。請求項1における「第7情報」) を生成し、㋕これを情報処理装置に対して送信し、③それを 情報処理装置で受信するという構成を有するものとして出願 されていました。
2.本件審決の判断と出願人X(原告)の主張
本件審決は、本件発明は、請求項の記載によれば「(第1ユー ザによって操作される)情報処理装置」に係る発明であるとこ ろ、請求項のうちサーバにおける処理に係る部分(上記概要の ②に係る部分(請求項(C)、(C1)乃至(C7)に対応。以下「サー バ処理部分」と言います。))は、「情報処理装置から(第1情報と して)公報の情報が通知され、また、情報処理装置が受付ける 第7情報を送信する、サーバを特定する構成要件であって、情 報処理装置を直接的に特定する構成要件ではない」と判断し たうえ、当該構成を除いた構成を前提とすると、引用発明との 相違点は容易想到であるとして、進歩性要件の充足を否定しま した。
これに対し、出願人であるXは、本訴訟の中で、本件発明の 情報処理装置は、課題との関係から、「知的財産権の活用候補 者提示」のための専用端末と捉えることができ、サーバの構成 と一組のものとして発明を構成しているので、サーバの存在を 除外して本件発明を認定するのは誤りであると主張しました。
3.知財高裁の判断
(1)まず知財高裁は、本件発明は、「二つ以上の装置を組み合 わせてなる全体装置の発明に対し、それに組み合わされる情 報処理装置の発明(以下「サブコンビネーション発明」とい う。)であると認められる」と判断しました。
(2)そのうえで、特許発明の要旨認定の一般論について、
- 特許出願に係る発明の要旨の認定は、特段の事情がない 限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に 基づいてされるべきであるが、特許請求の範囲の記載の 技術的意義が一義的に明確に理解することができないと か、あるいは、一見してその記載が誤記であることが発明 の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段 の事情がある場合は、明細書の発明の詳細な説明の記載 を参酌することが許される
とのリパーゼ最高裁判決1の規範を述べたうえ、サブコンビ ネーション発明の特定について以下のような規範を示しまし た。
- サブコンビネーション発明においては、特許請求の範囲の 請求項中に記載された「他の装置」に関する事項が、形 状、構造、構成要素、組成、作用、機能、性質、特性、行為又 は動作、用途等(以下「構造、機能等」という。)の観点から 当該請求項に係る発明の特定にどのような意味を有する かを把握して当該発明の要旨を認定する必要があるとこ ろ、「他の装置」に関する事項が当該「他の装置」のみを特 定する事項であって、当該請求項に係る発明の構造、機能 等を何ら特定してない場合は、「他の装置」に関する事項 は、当該請求項に係る発明を特定するために意味を有し ないことになるから、これを除外して当該請求項に係る発明の要旨を認定することが相当であるというべきである。 (下線は筆者)
そして上記規範を前提にすると、
- 請求項のうちサーバ処理部分は、情報処理装置から通知 された情報に対して、どのような処理を行い、どのような情 報を生成して情報処理装置に送信するかというサーバの 独自処理を特定したもので、情報処理装置が行う処理を 特定するものではないこと
- 情報処理装置は、第1情報をサーバに送信し、第7情報を サーバから受信するものであるところ、かかる情報処置装 置の機能は、サーバに所定の情報を送信してサーバから 所定の情報を受信するという機能に留まり、当該機能は、 サーバ処理部分によって影響を受けたり制約されるもので はないから、当該構成は、情報処理装置の機能、作用を何 ら特定するものではないこと
として、請求項のうちサーバ処理部分(請求項(C)、(C1)乃 至(C7))を発明特定事項としなかった本件審決に誤りはな く、本件発明は進歩性要件を満たさないとした判断に誤りは ないとしました。
4.本判決の意義
サブコンビネーション発明においては、特許請求の範囲のう ち他のサブコンビネーションに関する事項がどこまで当該発明 の発明特定事項になるのかが問題となります。この点、本判決 の規範は、特許・実用新案審査基準の判断枠組を確認したもの と言えます。裁判例において、「サブコンビネーション発明」と明 示されて判断が示された件数は少ないと思われる中、「サブコ ンビネーション発明」と明示し、発明の要旨認定の規範を示した うえ、具体的な検討を示した本判決は、「サブコンビネーション 発明」を検討するうえで参照価値があると考え、紹介した次第で す。
