発明者に雇用者に対して職務発明の相当対価請求権があるかどうかについて、専利法第7条第1項には、「従業者が職務上完成した発明、実用新案又は意匠について、その出願及び専利権(専利は特許、実用新案、意匠の総称)は雇用者に帰属し、雇用者は従業者に相当の対価を支払わなければならない。ただし、契約で別段の約定がある場合は、それに従う」とある。そのただし書きの規定に雇用者が従業員への支払い義務を契約で免除できることが含まれているかどうかについて、知的財産及び商業裁判所は以下の判決において立法資料により立法当時の経緯を明らかにし、判決の基礎とした。

  • 書誌事項

判決番号:知的財産及び商業裁判所108年度民專上字第36号民事判決

判決日:2022 年 02 月 24 日

事件の類型:職務発明報酬紛争事件

  • 当事者

控訴人(原審原告):楊光能

被控訴人(原審被告):晶元光電股份有限公司

  • 争点と裁判所の判断の要約

1.控訴人が国聯光電公司(2005年12月30日に被控訴人に買収された)に在職していたとき、その職務発明が出願を経て特許権を受けてから、被控訴人によって実施されて大きな利益をもたらした。控訴人は、被控訴人に職務発明の対価として、元本及び利息5000万台湾ドルを請求した。

2.しかし、被控訴人は、係争国聯光電職務発明報酬規程(以下「係争報酬規程」という)に従い、控訴人との間で報酬額について合意していると主張した。

3.専利法第7条第1項の規定について、条文を形式的に解釈すると、ただし書きに規定された範囲には、「専利出願権及び専利権の帰属」に加えて「従業者への相当の対価の支払い」が含まれる。

4.法改正の経緯から考えると、報酬について契約で合意していない場合に、法律により報酬額を定めるかどうかについて議論があったが、採用されなかった。そのため、そのただし書きの「契約で別段の約定」の範囲には「相当の対価」が含まれる。

5.また、控訴人は、2010年に専利法が改正されたとき、立法委員が改正草案で、「相当の対価とは、その発明、実用新案又は意匠が雇用者にもたらした利益、雇用者が負担と貢献をした部分、及び従業者の待遇を考慮すべきである」と提案したことに言及した。しかし、この草案は成立しなかったので、法律の解釈にあたって根拠とすることはできず、第7条第1項のただし書きが相当の対価について両当事者間で契約で別段の約定ができることを証明している。したがって、係争報酬規程は、法律にない制限の追加でも、強行規定に違反するものでもないため、民法第71条による法律行為を無効とする規定の適用はない。

6.そして、控訴人は、報酬額が低すぎて明らかに不公平であるため、民法第247条の1によって当事者間で合意された係争報酬規程が無効であることを主張した。係争報酬規程は雇用者が作成した定型約款であるが、被控訴人に対して報酬の支払い義務を免除するものではなく、係争報酬規程に規定された報酬が不合理とは言えない。発明者に支払われた報酬が商業的利益に変換できない可能性もあり、その後の製品の生産や管理や人件費等各種コストに投資しなければならず、雇用者と従業者の間の利益と負担を考慮すると、係争報酬規程には明らかな不公平の情況がない。

7.控訴人は他の国の関連する法律も引用したが、いずれも台湾とは異なり雇用主が相当の対価の支払い義務を契約で排除ができる規定ではない。控訴人は台湾の規定が弱い立場にある発明者の権利を適切に保護していないと主張したが、これは立法政策決定の考慮事項であり、司法機関は立法者の権限を超えて法創造をすることができない。法治国家における権力分立の制度を維持するため、立法機関が立法手続きを通じて法改正の必要を検討すべきである。

  • 判決主文

1.控訴及び追加の訴えをいずれも棄却する。

  • 結論

雇用者の従業者に対する相当の対価の支払い義務は原則として規定されており、専利法第7条第1項のただし書きを適用して報酬額を契約で約定することができる。しかし、そのただし書きは、雇用者に支払い義務を完全に免除する可能性を与えるものではなく、補足的な規定である。私的自治の原則に基づいて、当事者は報酬額について契約で約定することができるが、その報酬額が適切であるかどうかについては、市場メカニズム又は当事者間の合意のみならず、専利権を取得した雇用者が負担するリスクとコストも考慮しなければならない。この法律が弱い立場にある従業者又は発明者の権利を適切に保護しているかどうかについては、司法機関が恣意的に解釈することではなく、立法機関が検討すべきことである。