事件の概要

四川金象賽瑞化工股フン有限公司と北京燁晶科技有限公司は、本件に係るメラミン生産システムおよび生産プロセスに関する特許の権利者である。権利者の代理人として、北京市金杜法律事務所は、2016年12月13日に、華魯恒昇社、寧波遠東社、寧波設計院社、および尹明大がその特許権を侵害していることとして、広州知識産権法院に対して訴訟を提起し、4被告に権利侵害行為を停止し、1億2000万元および合理的な権利行使のための費用を連帯して賠償するよう求めた。2020年6月10日、広東省高級人民法院は、4被告が権利侵害行為を停止し、華魯恒昇社が原告に8000万元を賠償し、寧波遠東社と寧波設計院社がそのうちの4000万元について連帯して賠償責任を負うという一審判決を下した。

本件の争点

1.被疑技術案を確定するための証拠の認定

本件では、原告は、被告である華魯恒昇社が地域の安全監督部門に提出した「安全評価報告書」および「安全設備設計(Safety facilities design)」の入手を法院に申請した。被告の華魯恒昇社が法院の立入検査を何度も明確に拒否したという事実を考慮して、原告は、上記の登録資料に基づいて被疑技術案を確定するよう主張した。華魯恒昇社は、当社が実際に実施する技術案は登録資料と異なっていると主張したが、それを裏付ける証拠を提出しなかった。法院は、関連する法的規定に従い、華魯恒昇社が実際に実施する技術案は前述の登録資料の記録と一致するはずであると判断している。上記の登録資料は、信頼性が高く、証明力が強く、互いに裏付けることができる。華魯恒昇社が証拠の保全を拒否し、法院の文書提出命令に従って技術案を反映する証拠を提出しなかったこと、および、被疑権利侵害プロジェクトが大規模な化学プロジェクトであるため、立入検査には客観的に困難性があることを鑑みて、法院は原告の主張を支持した。

2.複数の当事者が関与する被疑権利侵害プロジェクトにおける権利侵害責任の認定

本件特許には、メラミン技術に関する製品特許および方法特許が含まれている。法院は、本件製品特許について、被疑権利侵害プロジェクトは複数の当事者が関与する大規模な生産システムであり、華魯恒昇社、寧波遠東社および寧波設計院社の3社が被疑権利侵害プロジェクトの技術移転と工事設計契約に署名し、華魯恒昇社がそのための対価を支払い、寧波遠東社および寧波設計院社が利益を得ているため、被告の3社が被疑権利侵害プロジェクトにおける生産システムを協力して製造し、共同で製造行為を実施したと判定した。また、寧波遠東社および寧波設計院社が被疑生産システムを使用する行為について、寧波遠東社および寧波設計院社は生産および経営の性質を持っておらず、当該行為自体は製造行為に依存するものであるため、法院は、華魯恒昇社が被疑侵害製品の使用行為を実施したと判定した。本件方法特許について、寧波遠東社および寧波設計院社は、華魯恒昇社による被疑権利侵害生産プロセスの使用およびそれにより得た商品の販売に影響を与え制御することができず、それから利益を得ていないため、法院は、華魯恒昇社が被疑権利侵害生産プロセスの使用、およびこの生産プロセスに従って直接得た製品の販売行為を実施したと判定した。

3.賠償額を確定するための根拠および考慮された要因

原告は、権利侵害者の獲得した利益に基づいて賠償額を計算することを主張し、被告の年次報告書などの予備的な証拠を提出した。法院は、華魯恒昇社に特許侵害に関連する帳簿と資料の提出を命じたが、華魯恒昇社は拒否した。

法院は、以下のように認定した:侵害行為により得た利益に関連する事実をさらに解明するために、いかなる企業および個人も訴訟において法院の証拠提出命令に従って、真実かつ完全な証拠を提供しなければならない。それは、一方では誠実に訴訟を追行するという法的義務の履行に寄与することができ、他方では権利者が主張する賠償額や計算方法に適時に異議を唱える権利を行使することができる。権利侵害者は、その侵害行為により得た利益について最もよく知っている。権利者によって提供された証拠が真実でない場合、または請求さ​​れた賠償金額が不合理である場合、権利侵害者はそれを論駁するための反証を提供する能力および必要性が十分にある。営業秘密にかかわることは、証拠の提出を拒否する正当な理由ではなく、訴訟を妨害するための盾にもなり得ない。

したがって、法院は、原告の主張および提供した証拠に基づいて華魯恒昇社の得た利益を確定した。

賠償金額を計算するにあたり、法院は以下の要素を考慮して、これまで特許権侵害訴訟で最高の賠償額である8000万元を判定した。

1.本件特許は改良特許であり、本件方法特許を使用して得た直接製品は新製品ではないため、華魯恒昇社の直接製品の販売による利益はすべて本件特許によりもたらされたわけではなく、特許の価値は、その技術的改善の部分にある。

2.本件特許の技術案には、被疑権利侵害プロジェクトの主要なコア技術が含まれているため、華魯恒昇社の製品の生産と販売の収益性に重要な役割を果たしている。

3.原告は、被告の4社に対して被疑権利侵害プロジェクトに関する3件の訴訟を提起している。原告がその他の2件の関連訴訟で請求した賠償額は、華魯恒昇社が製品を製造、販売することにより得た利益に関連している。

4.原告の合理的な権利行使のための費用。

金杜チームの積極的な役割

本件において、被告は、その実際に実施している技術案が登録資料と異なっていることを主張し続けていながら、何度も自分の営業秘密を保護するという理由で立入検査を明確に拒否している。被告が実施する技術案が登録資料と同じであることを裁判官に納得させるために、金杜チームは、登録資料の作成プロセスを詳細に説明し、これにより、登録資料の内容が真実で信頼できると裁判官に確信させた。また、金杜チームは、「中華人民共和国安全生産法」および「国家危険化学品安全管理条例」などの法的法規の関連規定を引用し、化学会社の登録資料はその実施する技術案を真に反映し、実施する技術案に変更があった場合には安全監督部門に報告し登録しなければならず、さもなければ、関係当事者が刑事責任を問われる可能性があることを説明した。それに基づいて、金杜チームは、安全監督部門で技術案の変更登録資料がない状況において、取得された登録資料が被告の実際に実施している技術案を真に客観的に反映していると認定すべきであると明確に指摘した。裁判官の心証をさらに強化するために、金杜チームは、登録資料を根拠として権利侵害の技術案を認定する2件の判例を引用した。金杜チームの努力により、裁判官は、取得された登録資料が被告の実際に実施している技術案を真に反映していると確信し、上記登録資料に基づいて被疑権利侵害技術案を確定するという原告の主張を支持した。

賠償額の確定において、金杜チームは、被告の華魯恒昇社自身が公表したビジネスデータに止まらず、同業界の同一規模の企業が公開したビジネスデータも収集した。それを踏まえて、金杜チームは、被告の華魯恒昇社が発表した営業利益、営業利益率およびメラミン製品関連化学品の粗利益率、並びに同業界の同一規模の企業が発表したメラミン製品の粗利益率に基づき、3つの角度から被告華魯恒昇社の侵害行為により得た利益を計算して、被告の華魯恒昇社の侵害行為により得た利益が2億5700万から4億3600万元の間であると裁判官に確信させた。それは、原告の請求金額よりもはるかに高い。これにより、今まで特許権侵害訴訟で最高の賠償額である8000万元の判定に資した。