中国国家知識産権局(SIPO)は2014年3月31日、従業員発明者への賞与や報酬に関する「職務発明条例」の新たな草案を発表しました。この新条例は中国で発明を行う従業員発明者の使用者にとって重要な意味合いを持ちます。

最新の草案では以前の草案時よりも変更が少なかったため、今後も大きな変更なく条例が成立すると思われます。この新条例は2015年に施行される見通しです。それに従い、中国で研究開発を行っている事業は従業員の報酬制度の導入あるいは見直しを検討すべきでしょう。

ノウハウの作成は引き続き「発明」の定義に含まれるため、知財権で保護されないノウハウに関する報酬をどう行うかについて検討する必要があります。

使用者等には、従業員の権利に関して、新条例に応じた方針や手順を確立することが要求されます。これには、発明者に対する経過報告(特許出願の前段階から特許満期までの当該発明における特許権の保護内容の経過の報告)なども含まれます。特筆すべきは、特許出願されなかった発明あるいは放棄された特許出願についても発明者は報告を受ける権利があり、使用者が特許出願を行わない国においても従業員が特許出願を行うことが可能ということです。条例に従わない場合、従業員が使用者に対して民事裁判を起こすことも可能となります。

使用者側に有利な点としては、発明者の基本的権利を侵害しない範囲内であれば、条例とは異なる独自の社内方針・手順を制定できることがあげられます。条例が施行されると法定の規定が適用されてしまう可能性があるので、その前に各事業が職務発明についてそれぞれの方針や手順を制定することが強く推奨されます。一例として、法令支払い義務の増額(特許権を利用したことにより生じた営業利益の少なくとも5%が発明者に支払われる)が起案されています。これを回避するためにも、各々の事業がそれぞれの産業分野の研究開発の実情に合い、かつ研究員に対する社内報奨制度と見合う、職務発明についての報酬制度を独自に制定することが望ましいと思われます。

報酬制度を効果的に設計すれば、情報管理や支払いシステムを使用者側と従業員側の両者が納得できる程度に簡略化して事務負担を減らすことができます。このような方針は社内で協議する必要がありますが、報奨制度を制定してしまえば、その会社で生まれる発明の全てに適用することができます。発明者が簡略化に合意した場合、代償として別の形で手当てを提供するのも良いでしょう。

また、職務発明条例には日本やドイツ、韓国の法律に類似する部分もあるため、中国において発明者の報酬方針を制定するための手本として、これらの国で運用されている社内規程も参考になると思われます。

さらに、契約研究組織(CRO)との共同研究・研究委託を行う場合にも報酬に関する問題への対処が必要です。最新の草案においても、CROの研究者への報酬支払い義務が研究開発から生じたIPと共に研究委託元へ移行するとみなされるのかが明らかではありません。CROが従業員発明者への対応を行わない場合、研究委託先の発明者への報奨支払い義務が研究委託元に発生する可能性が高くなると思われます。よって、もし中国で共同研究・研究委託を行う場合、CROの職務発明に対する報酬制度が新条例の必要条件を満たしているかどうかを精査することが推奨されます。