Ⅰ.    はじめに

いわゆる電動キックボードのシェアサービスは、路上に停めてある電動キックボードをスマートフォンアプリにより解錠し、目的地まで乗車後、路上に乗り捨てることができる手軽さから、世界的に人気が高まっています。

日本では、電動キックボード(定格出力 0.60 キロワット以下のもの)は、道路交通法

(以下「道交法」といいます。)上、「原動機付自転車」1に該当するため、歩道又は路側帯を通行できず、車道を通行しなければならない2、歩道に駐車できない、運転免許の取得が必要3、ヘルメットの着用が必要4といった制約があり、普及が進んでいません5

しかし、昨今、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「三密」や接触を避ける交通手段として注目を浴びています。

そのような中、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」6の活用により、いわゆる電動キックボードによる普通自転車専用通行帯の通行を可能とする特例措置(以下

「本特例措置」といいます。)を講じる旨等の回答がなされました(経済産業省による

2020 年 8 月 4 日付ニュースリリース7)。

警察庁は、2020 年 8 月 3 日に、本特例措置のための命令・告示に関するパブリック

コメント手続を開始しており8、同年 9 月 1 日にパブリックコメントを締め切り、同月下旬に公布・施行する予定です9。本号では、本特例措置の概要について取り上げます。

Ⅱ.    本特例措置の概要

本特例措置は、上記の電動キックボードが車道を通行しなければならないという規制を「新事業特例制度」に基づき、一部緩和するものです。すなわち、道交法上の「原動機付自転車」に該当する電動キックボードを貸し渡すことを内容とする新事業活動10に係る新事業活動計画としての認定11を受けたものに記載された当該新事業活動を実施する区域においては、当該計画に従って貸し渡されている電動キックボードが、普通自転車専用通行帯を通行することが可能となるよう、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の適用に関する新たな規制の特例措置を講ずることとされています。

つまり、本特例措置の適用を受けるためには、電動キックボードの貸渡しを行う事業者が、産業競争力強化法に基づき新事業活動計画を作成して主務大臣の認定を受ける必要があります12

また、本特例措置は、①当該新事業活動計画が次の(1)及び(2)に該当し、かつ、②当該電動キックボードが次の一定の基準に該当する場合に限り適用されることとなる予定です。

  1. 貸し渡される電動キックボードの走行速度その他の運転の状況に関する記録の作成を適切に行う旨が記載されていること。

  2. 貸し渡される電動キックボードに係る交通事故があった場合その他当該新事業活動の安全な実施に支障が生じた場合における国家公安委員会への報告その他の必要な措置が行われる旨が記載されていること。

電動キックボードに係る一定の基準の概要)

ア 車体の大きさは、次に掲げる長さ、幅及び高さを超えないこと。

(ア) 長さ 140 センチメートル

(イ) 幅 80 センチメートル

(ウ) 高さ 140 センチメートル

イ 車体の重量は、40 キログラムを超えないこと。ウ 車体の構造は、次に掲げるものであること。

(ア) 原動機として、電動機を用いること。

(イ) 20 キロメートル毎時以上の速度を出すことができないこと。

(ウ) 運転者席は、立席であること。

なお、本特例措置のための命令・告示が制定された後であっても、電動キックボードによる普通自転車専用通行帯の通行が可能となるのは、あくまで新事業活動計画の認定を受けて本特例措置が適用される場合に限られます。

また、電動キックボードは道交法上、依然として「原動機付自転車」と取り扱われるので、普通自転車専用通行帯を通行できること以外の規制(歩道又は路側帯を通行できない、歩道に駐車できない、運転免許の取得が必要、ヘルメットの着用が必要等)は、引き続き遵守しなければならないことには留意が必要です。

Ⅲ.    おわりに

本特例措置により、電動キックボードの普及に向けて一歩近づいたといえます。新型コロナウイルス感染拡大による「三密」回避の要請が高まる中、今後も電動キックボード等のマイクロモビリティに係る規制緩和が継続的になされる可能性があり、規制当局の動向が注目されます。

セミナー情報

  • セミナー    「MONET の挑戦と MaaS 推進のための法制度整備」

MaaS 推進のため、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等が改正されました。国土交通省自動車局に出向中に MaaS への取組みにも関与した佐藤弁護士が、本セミナーの後半で、これらの法改正等を含めた、MaaS 推進のための法制度整備の最新動向につき、分かりやすく解説します。

本セミナーの前半では、MONET Technologies( 株) 上村氏がMONET による自動運転社会を見据えたモビリティサービスの提供等について講演されます。

開催日時    2020 年 8 月 28 日(金) 午後 2 時~午後 4 時 30 分講師      佐藤 典仁 ほか

会場        紀尾井フォーラム(ライブ配信、アーカイブ配信もございます) 会場住所     東京都千代田区紀尾井町 4-1 ニューオータニガーデンコート 1F 主催     株式会社新社会システム総合研究所

参考 URL        http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_20291.html

文献情報

  • 本          『自動運転・MaaS ビジネスの法務』出版社  株式会社中央経済社

著者        【編著】戸嶋 浩二、佐藤 典仁

【著】林 浩美 岡田 淳 園田 観希央 北 和尚 清水池 徹 秋田 顕精 毛阪 大佑 齋藤 悠輝 岡 朋弘 岡田 宏樹 片野 泰世 澤 和樹中山 優 牧野 則子 真下 敬太 芳川 雄磨

  • 論文        「~「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の改正等からみる~ MaaS 実現に向けた法制度整備の最新動向」

掲載誌      ビジネス法務 2020 年 9 月号著者      佐藤 典仁

 

  • 論文        「自動車という法律のフロンティア」

掲載誌      日本組織内弁護士協会(JILA)オンラインジャーナル著者    戸嶋 浩二

 

  • 論文        「<Robotics 法律相談室第 59 回>5G・ドローンの普及のためにどのような制度が準備されているか」

掲載誌      日経 Robotics 2020 年 7 月号著者      蔦 大輔

 

  • 論文        「<Robotics 法律相談室第 55 回>自動運転車の安全性を確保するための道路運送車両法の改正について」

掲載誌      日経 Robotics 2020 年 3 月号著者      佐藤 典仁