[概要]

カリフォルニア州控訴裁判所で下されたShine対Williams-Sonoma事件の判決により、従業員に支払われる労働賃金に関する全請求は、1回のクラスアクションで申し立てるべきであり、かかる訴訟の和解合意書で言及される「すべての請求(all claims)」は、通常、全請求を意味するものと解釈されることが再確認された。本判決により、従業員が特定の就労期間の労働賃金を請求するために提起するクラスアクションで、雇用主が従業員と1度和解を成立させていれば、同雇用主は、後に従業員が同就労期間に支払われた賃金を不服として再度訴訟を提起したとしても、かかる訴訟手続から免除されるべきである。

Shine対Williams-Sonoma, Inc.事件 (No. B277513 (Cal. App. May 29, 2018))で、クラスアクションの原告クラス(class:共通の法的地位を持つ一定範囲の人々、本件では従業員)は、以前に賃金請求を理由に別のクラスアクションで訴えたことのある雇用主を再訴した。前回の訴訟では当事者間の和解合意が成立していた。近時のクラスアクションでも、原告(従業員)は前訴訟と同じ時期に従業員に支払われるべきであった賃金を不服として、賃金を再度取り戻すために同雇用主に対してクラスアクションを提起したが、カリフォルニア州控訴裁判所は、同訴訟の棄却を支持した。

最初の訴訟事件(クラスアクション)で、クラスに属する従業員は、未払い時間外勤務手当、最低賃金、食事・休憩時間の未取得を理由に、雇用主に対して日割り計算による賠償金の支払を請求した。

さらに、可能な限り多額の損害賠償金を請求しようとした従業員側の弁護士は、実際、従業員に支給されるべきであった賃金の「正確な」金額を確認し、過去に従業員が受け取っていた給与明細書が正確ではなかったという事実により、同時にカリフォルニア州労働法(Private Attorneys General Act (PAGA) of 2004)に基づく罰金およびカリフォルニア州不正競争防止法(Unfair Competition Law)に基づく補償金も含めた、追加的罰金の支払も要求していた。雇用主(Williams-Sonoma)は、(原告/従業員が)本訴訟事件を再訴が不可能な状態で取り下げること(dismissal with prejudice)に合意し、従業員との間で和解を成立させていた。

前述のクラスアクションが取り下げられた後に、複数の弁護士が、同事件の被告であった雇用主に対して、別のクラスアクションを提起し、同事件の争点であった同時期の賃金請求を企てるために2回目のクラスアクションの代表として(同雇用主の下で勤務していた)従業員を探し出してきた。新たな訴訟(クラスアクション)の当事者となったこの従業員は、前述のクラスアクションですでに賠償金を受領していたが、本従業員(原告)の弁護士は、本請求はreporting-time pay[1]に関するものであるため、前回のクラスアクションの請求とはまったく別の異なる請求であると主張した。

控訴裁判所は、その主張を認めず、かかるreporting-time payの支払は、単に最初のクラスアクションで請求された賃金支払の別の側面にすぎず、同事件で示唆された「主要な権利(primary right)」と同じものであると即時に判断を下した。カリフォルニア州の既判力(res judicata)理論(すでに判決が下された前訴訟における同一の当事者および請求について再訴できないという理論)では、同一の原告がその「主要な権利(primary right)」に関して訴訟事件を2回提起していたとしても、かかる争点となる権利が、最初の場合と2回目の場合とで異なっていれば、2回目の訴訟でも、前訴訟に生じていた同一の出来事に関連した請求を申し立てることできる。しかし、本件の場合、従業員に対する労働賃金の支払カテゴリーの大部分(主要な権利)が、前訴訟で争っていた賃金支払に対する主要な権利と同様であることが確実であった。

控訴裁判所が、かかる既判力(res judicata)理論に基づき、2回目のクラスアクションの提起は禁じられるという判断を下したため、従業員の弁護士は、最初の訴訟では、当事者間の和解合意で、雇用主は新たな請求に関しては既判力(res judicata)理論による保護を放棄していると主張した。しかし、控訴裁判所は、原告の主張には同意せず、最初の訴訟の和解成立の際に交わされた和解合意書には賃金に関する「すべての請求(all claims)」について記載されているため、和解の効力を維持するためにもそのように解釈されるべきであると判示した。

対策・手段: カリフォルニア州の判例法により、訴訟事件で和解が成立し、同訴訟が取り下げられ、当事者間の和解合意書に、将来、特定の請求は申立てることができると記載されている場合は、雇用主は、既判力(res judicata)理論による保護を放棄できる。雇用主は、従業員がクラスアクションで請求し得るあらゆる種類の請求について、和解合意書に記載しておくことに留意すべきである。さもなければ、すでに争ったこのとある就労期間や労働賃金の支払などについて、再び新たな訴訟事件が提起され、莫大な経費を費やすリスクが生じることになりかねない。