【令和2年(行ケ)第10107号(知財高裁R3・4・14)】

【判旨】

本件商標に係る特許庁の取消2018-890005号事件について商標法第4条第1項第15号に係る判断は正当であるとして,請求を棄却した事案である。

 

【キーワード】  

商標の類否判断,ざんまい,すしざんまい,商標法第4条第1項第15号

 

【事案の概要】

 

以下,証拠等は適宜省略する。  

⑴ 原告は,以下のとおりの登録第5556223号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1の1ないし3)。

 

 商標の構成  

登録出願日 平成24年9月13日  

登録査定日 平成24年12月26日  

設定登録日 平成25年2月8日  

指定商品 第30類「すし」  

⑵ 被告は,平成30年1月31日,本件商標について商標登録無効審判を請求した。  

特許庁は,上記請求を無効2018-890005号事件として審理を行い,令和2年8月13日,「登録第5556223号商標の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月21日,原告に送達された。  

⑶ 原告は,令和2年9月10日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

 

【本件商標】

 

事案の概要を参照。

 

【引用商標】

 

引用商標1

 

引用商標2

 

後記判旨抜粋参照

 

【争点】

 

本件商標が,商標法第4条第1項第15に該当するか否か。

 

【判旨抜粋】

 

1 認定事実  

(中略)  

⑴ 被告によるすしチェーンの店舗展開等  

ア(ア) 被告は,昭和60年10月22日に設立された,飲食店の経営等を目的とする株式会社である。  

被告は,平成13年4月,東京都中央区築地に「すしざんまい本店」の名称のすし店を開店した。  

(中略)  

⑷ 原告について  

原告は,寿司の製造,販売等を目的とする株式会社である。  

原告は,九州地区等において,電話又はウェブサイトで注文を受けて,寿司を配達する形態の宅配寿司店として,「寿司ざんまい博多店」,「寿司ざんまい古賀」,「寿司ざんまい宇部店」等を出店し,宅配寿司チェーンの店舗展開を行っている。  

原告は,自己の運営するウェブサイトにおいて,上記宅配寿司チェーンの名称として,「寿司ざんまい」の表示をしている。  

2 引用商標1及び2に係る周知著名性について  

⑴ 需要者について  

ア 引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すしざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標である。  

また,引用商標2は,「すしざんまい」の標準文字を表してなる商標である。  

そして,「すし」は,一般的な食品であることに照らすと,引用商標1及び2の指定商品である第30類「すし」と指定役務である第43類「すしを主とする飲食物の提供」における需要者は,いずれも一般消費者であり,共通するものと認められる。  

(中略)  

(2) 周知著名性について  

ア 前記1の認定事実を総合すれば,①被告は,平成13年4月,「すしざんまい本店」の名称のすし店を開店した後,東京都,北海道,栃木県,福岡県,神奈川県,大阪府において,すしチェーンである「すしざんまい」チェーン店を店舗展開し,平成24年12月までに,店舗数が39店舗に及んでおり,同年の売上高見込み及びシェアは,全国のすし店において,いずれも第1位であり,また,「日経MJ(流通新聞)」が調査した「第39回飲食業12年度ランキング」の売上高経常利益率ランキングにおいて,被告は,店舗売上高伸び率ランキングで前年の21位から6位に躍進し,経常利益率でも5位に入ったこと,②被告は,「すしざんまい」チェーン店の各店舗において,引用商標1を表示した看板や「すしざんまい」の文字を縦書きして表示した行灯を使用し,自己の運営するウェブサイトにおいて,引用商標1を表示した上で,「すしざんまい」チェーン店の各店舗の店舗紹介を掲載していたこと,③テレビ,新聞及び雑誌において,被告が,平成24年1月の東京・築地市場の初競りでクロマグロを過去最高値の1匹5649万円で競り落としたこと,「すしざんまい」チェーン店が24時間営業のすし店であること,マグロの解体ショーを行っていることなどの話題について,全国的規模で,多数回にわたり紹介され,その紹介の際には,「すしざんまい」の文字が表示され,また,引用商標1を付した看板の映像や写真も掲載されたことが認められる。  

上記認定事実によれば,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時(同年9月13日)及び登録査定時(同年12月26日)において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る上記役務を表示するものとして,著名であったものと認められる。  

3 本件商標の商標法4条1項15号該当性について  

(1) 混同を生ずるおそれの有無について  

ア(ア) 本件商標は,別紙1記載のとおり,「ざんまい」の文字を横書きに書してなる商標である。本件商標から「ザンマイ」の称呼が生じる。「ざんまい」の語は,「一心不乱に事をするさま。」(広辞苑第七版)の意味を有するから,本件商標から,このような意味合いの観念を生じる。  

また,前記2⑵ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったこと,「すし」に関連する登録商標の使用においては,「すし」又は「寿司」の表示を登録商標の前後に付加して使用することが普通に行われており,現に,原告においても,本件商標の「ざんまい」の前に「寿司」の文字を付加した「寿司ざんまい」の商標を使用していること(前記1(4))に鑑みると,本件商標が指定商品「すし」に使用されたときは,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるものと認めるのが相当である。  

(イ) 引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すしざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標であり,このうち,「すしざんまい」の文字は,引用商標1の中央に他の文字よりも大きく,かつ,太く記載されており,「すし」の部分は,「し」が「す」の左下に位置し,縦書きのように記載されている。  

そうすると,引用商標1を構成する「つきじ喜代村」の文字部分,「すしざんまい」の文字部分及び「SUSHIZANMAI」の文字部分は,外観上,それぞれが分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。  

そして,「すしざんまい」の文字部分の上記構成態様に照らすと,引用商標1の構成中の「すしざんまい」の文字部分は,取引者,需要者に対し,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,要部として抽出できるものと認めるのが相当である。  

しかるところ,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び「すしざんまい」の標準文字からなる引用商標2から,いずれも「スシザンマイ」の称呼が生じる。  

また,前記2⑵ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったことに鑑みると, 引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じるものと認めるのが相当である。  

(ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,本件商標と引用商標1及び2は,外観及び称呼が異なるが,観念においては,本件商標が指定商品「すし」に使用されたときは,本件商標から被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるのに対し,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2からも,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通するものと認められる。  

イ 以上のとおり,①「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったこと(前記2(2)ア),②本件商標と引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,いずれも被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通すること(前記ア(ウ)),③本件商標の指定商品である「すし」と被告の業務に係る役務である「すしを主とする飲食物の提供」は,需要者が一般消費者である点で共通し(前記2⑴ア),販売の対象となる商品又は提供の対象となる商品がいずれも「すし」である点で共通することを総合考慮すると,本件商標をその指定商品の「すし」に使用するときは,その取引者,需要者において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として著名な「すしざんまい」の表示を想起し,当該商品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。したがって,本件商標は,引用商標1及び2との関係において,商標法4条1項15号に該当するものと認められる。  

これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

 

【解説】

 

 本件は,商標権に係る審決取消訴訟である。特許庁は,本件商標について,商標法第4条第1項第15号[1]について該当するとの判断を行い,裁判所は当該判断を追認した。  

 裁判所は,まず原告について詳細に認定した上で(上記の判旨抜粋では省略した。)「『すしざんまい』の表示は,本件商標の登録出願時(同年9月13日)及び登録査定時(同年12月26日)において,被告が店舗展開する『すしざんまい』チェーン店の名称として,『すしを主とする飲食物の提供』の役務の需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る上記役務を表示するものとして,著名であったものと認められる」と判断し,その上で,本件商標の「ざんまい」について「原告においても,本件商標の『ざんまい』の前に『寿司』の文字を付加した『寿司ざんまい』の商標を使用している」とし,当該使用があった場合においては,本件商標と引用商標1及び2とは「すしざんまい」の観念を生じる点で共通するとし,「本件商標をその指定商品の『すし』に使用するときは,その取引者,需要者において,被告が店舗展開する『すしざんまい』チェーン店の名称として著名な『すしざんまい』の表示を想起し,当該商品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがある」と判断したものである。同判決においては,「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」とされており,本判決においても,これに従った判断がなされている。  

 本件では,本件商標が上記の「すしざんまい」の一部である「ざんまい」という部分であって,引用商標と概観,称呼が異なるものの,実際の使用方法,指定商品との関係から観念としては共通と認めているが,上記最高裁の考え方からも当該判断は妥当であろう。  

以上,商標法第4条第1項第15号にかかる判断の参考になる事案であるため,ここに取り上げる