世界知的所有権機関(WIPO)から毎年1回公表されている『世界知的財産指標』(WIPI)によると、2016年に世界各地のイノベーターから提出された特許出願は310万件で8.3%増加しており、7年連続で増加傾向が維持されていた。

新たに増加した240,600件近くの特許出願のうち、中国で受理されたものは約236,600件で、増加件数全体の98%を占めている。商標登録出願は16.4%大きく増加して約700万件に達し、全世界の工業意匠登録出願の件数は10.4%増加して100万件近くとなっているが、商標と意匠の増加も中国の主導によるものである。

「最新のデータから知的財産権に対するニーズの高まりが示されているが、これは10年間持続してきた傾向であり、中国の発展が日増しに全世界の総件数にも反映されてきている」とWIPO事務局長のフランシス・ガリ氏は語っている。「中国は、次第に全世界のイノベーションとブランドにおける牽引者となっているところである」。

WIPOでは、地理的表示に関するデータも初めて収集されている。地理的表示とは、製品に用いる標識の一つで、その製品が特定の地理的出所を有して、その出所によって与えられる品質又は評価を有するもので、例えば、チーズに用いられるグリュイエール、酒類に用いられるアガベがある。これらのデータに含まれている54ヵ国・地域の主務官庁では、計約42,500件の地理的表示が保護されていることが報告されている。

このほか、WIPOでは、各特許庁から審査官チームの規模、出願の審査期間、特許審査の結果などを含む業績に関係する新しいデータも収集されている。これらのデータからは、殆どの特許庁の審査能力が特許出願の受理件数増加に伴って向上していることが示されている。

特許分野

2016年、中国国家知識産権局ではまたも史上最高を更新して、特許出願の受理件数が計130万件となり、それに次ぐ米国特許商標庁(605,571件)、日本特許庁(318,381件)、韓国特許庁(208,830件)、欧州特許庁(159,358件)を遥かに引き離して先頭をリードしている。しかし、人口1人当たりでは、中国の特許出願件数は、ドイツ、日本、韓国、米国に次ぐものとなっている。

上位5位に位置する主務官庁で世界の総件数の84%を占めているが、そのうち、中国(+21.5%)と米国の(+2.7%)の出願件数にはいずれも増加が見られる一方で、欧州特許庁(-0.4%)、日本(-0.1%)及び韓国(-2.3%)で2016年に受理された出願件数は、いずれも2015年より少なくなっている。

ドイツ(67,899件)、インド(45,057件)、ロシア連邦(41,587件)、カナダ(34,745件)、オーストラリア(28,394件)も上位10位に入っている。

全世界の特許出願件数のうちアジアの占める割合は、2006年に49.7%であったのが2016年には64.6%まで増加しているが、これは、主に中国で出願件数が激増したことに影響されたものである。アジアにある主務官庁で受理された出願件数で200万件をやや上回っている。

外国への出願では、米国居住者が引き続きリードしており、米国居住者が外国で提出した特許出願(215,918件)は、中国居住者のそれ(51,522件)の4倍となっている。米国のすぐ後に続くのは、日本(191,819件)、ドイツ(75,378件)、韓国(69,945件)である。大型の中所得国の居住者によるものでは、ブラジル、インド、マレーシア、メキシコ、南アフリカで出願総件数のうち外国へ提出された出願の割合が高くなっているが、ブラジルの27.3%からインドの47.5%まであってまちまちである。これらの国から外国に提出される出願の殆どは、米国を対象国とするものである。

「外国出願は、知的財産保護の国際化を反映するものであるが、外国市場で技術を商業化しようとする意志を伝えるものでもある」とガリ事務局長は指摘しているが、特許出願に高額のコストがかかることを考慮すると、出願人が国際的な保護を求める特許も高い価値を有していると考えられる。

2016年、有効な特許は全世界で1,180万件あったが、そのうち、米国は280万件、日本は200万件、中国は180万件であった。

また、WIPIには、WIPOが開発した氏名識別技術を利用して、国・地域の主務官庁における居住者の特許出願のうちの女性の参与率のデータが加えられている。これらのデータでは、ロシア連邦における女性の参与率が比較的高くなっており(少なくとも1名の女性が含まれている居住者の特許出願が38.7%)、メキシコ(36.4%)、米国(27.5%)、スペイン(24.6%)、ブラジル(24.5%)とそれに続くことが示されている。これらの国では、生物等の生命科学分野における出願の割合が高いが、この分野における女性の参与率も他の科学技術分野より高くなっている。

商標分野

2016年に全世界で提出された商標登録出願は計約700万件、区分ごとで977万[1]となっていて、2015年の出願件数より16.4%増加しており、7年連続の増加を記録している。

「2001年以来、全世界の商標登録出願件数は3倍に増加しているが、このことは、昨今のビジネス環境におけるブランド資産の保護の重要性を反映している」とガリ事務局長は指摘している。

中国の主務官庁における出願件数は最も多く、区分ごとで約370万件であるが、それに次ぐのは米国(545,587)、日本(451,320)、欧州連合知的財産庁(369,970)、インド(313,623)である。上位5位に位置する主務官庁のうち中国(+30.8%)、日本(+30.8%)及びインド(+8.3%)では、高い年間増加率が維持されている。上位20位に位置する主務官庁のうち増加の著しいその他の官庁には、ロシア連邦(+14.8%)、英国(+19.1%)、ベトナム(+21.1%)がある。

スイス(77%)、米国(46%)、ドイツ(45%)、オランダ(44%)及びスウェーデン(42%)の出願人による出願行動では、自国外の法域で保護を求めるものの割合が比較的高い。これに比べて、中国の出願人によるすべての出願行動の約95%は中国でなされており、外国で保護を求めるものは5%しかない。

スイス(77%)、米国(46%)、ドイツ(45%)、オランダ(44%)及びスウェーデン(42%)の出願人による出願行動では、自国外の法域で保護を求めるものの割合が比較的高い。これに比べて、中国の出願人によるすべての出願行動の約95%は中国でなされており、外国で保護を求めるものは5%しかない。

広告及びビジネス管理に関する商標が2016年の全世界における商標登録出願総件数の10.5%を占めており、続いて、コンピュータ、ソフトウェア・機器(6.9%)、教育・娯楽(5.8%)、アパレル業(5.7%)となっている。

全世界で約3,910万件の有効な登録商標があるが、そのうち、中国だけでも1,240万件がある。それに次ぐのは210万件ある米国で、日本は190万件、インドは130万件、メキシコは110万件となっている。

工業意匠分野

2016年、全世界の工業意匠登録出願は10.4%増加して963,100件に達し、含まれる意匠は120万件に上った[2]。全世界の意匠件数で8.3%増加しているが、これは、主に中国で大きく増加していることに影響されたものである。

中国の主務官庁で2016年に受理された出願で、世界の総件数の52%にも相当する650,344件の意匠が含まれている。これに続くのは、欧州連合知的財産庁(104,522件)、韓国(69,120件)、ドイツ(56,188件)、トルコ(46,305件)である。上位20位に位置する主務官庁のうち、意匠件数の増加が最も速いのは、イラン・イスラム共和国(+34.8%)、次いでウクライナ(+17.4%)、中国(+14.3%)、米国(+12.1%)となっている。

スイス(84.2%)、スウェーデン(66.8%)及び米国(55.8%)の出願人によって提出された出願においては、外国で保護を求める意匠が大きな割合を占めているが、中国、インド、イラン・イスラム共和国の出願人は、それぞれの国内市場で保護を求めるのが殆どである。

家具に関する意匠が全出願の10.8%を占め、次いで被服(8.6%)、包装及び容器(7.3%)となっている。

有効な工業意匠の総件数は全世界で6%増加し、360万件に達している。そのうち、中国には約136万件があり、次いで韓国(338,234件)、米国(307,018件)、日本(250,819件)、欧州連合知的財産庁(194,781件)となっている。

[1]区分数とは、商標登録出願において指定された区分の総数である。一部の知的財産官庁では、一出願一区分制が採用されていて、商標登録出願において指定する商品又は役務の属する各々の区分ごとに個別に出願を提出することが出願人に求められている。また、他の一部の官庁では、一出願多区分制が採用されていて、1件の出願に複数の商品又は役務の区分を含めることが出願人に認められている。

[2]意匠件数とは、工業意匠登録出願に含まれる意匠の総数である。一部の知的財産官庁では、出願に複数の意匠を含めることが認められるが、他の一部の知的財産官庁では、出願1件ごとに1つの意匠しか認められない。