中国では、商標、専利の多部門管理及び法執行の重複問題を解決するために、中国国家知識産権局の職責、国家工商行政管理総局の商標管理の職責及び国家品質監督検査検疫総局の原産地地理的表示の管理職責を統合し、国家知識産権局を再編して、国家市場監督管理総局に管理を移すことが発表された。

▓行政管理の分散化問題を改善

今回、中国で国家知識産権局の再編が決定された主な要因は、「多部門管理を効果的に回避する」ことである。実際、知的財産権の行政管理の分散化問題について、中国では統合的な調整メカニズムを構築するために、一連の政策を公布してきた。

  • 1998年、原「中国専利局」を「国家知識産権局」へ改名し、原国務院知識産権弁公会議弁公室の機能を統合。
  • 2004年、国務院が「知的財産権保護業務チーム」を設立。
  • 2009年、「国家知識産権戦略部会間合同会議制度」を設立。

上記の措置は、部門間の統合にある程度役立つが、多部門管理による効率低下や、規定が一致しないなどの問題の根本的な解決には至っていない。今回の知的財産権組織の部門・業務を統合する改革は、内部から実質的な改革を行うもので、その改革の程度は今までにないものである。

国家知識産権局の再編は、知的財産権の統一した行政管理についての世界各国の有益な経験を参考にしたもので、再編後の国家知識産権局は、知的財産権の行政管理体系が最適化され、監督管理が一元化される。縦の観点から見ると、知的財産権の創造、運用、保護、管理とサービスの一貫化と、知的財産権の管理体系と管理能力の近代化の促進に役立ち、横の観点から見ると、専利、商標、原産地地理的表示の統合効果を発揮するのに役に立ち、イノベーション主導型発展と対外開放の拡大を推進するうえでも役に立つ。再編後の国家知識産権局は、対外交渉するときに、政府が管理する資源をまとめて、渉外知的財産権の業務を統括して調整することができる。役割分担に応じて外国との知的財産権交渉を行うことも、再編後の国家知識産権局の重要な業務の一つである。

▓知的財産権の法執行を統合し、保護力を強化

これまで、知的財産権の法執行は、複数の部門により行われていたため、既存の職責が重複して、部門間の責任転嫁も起きやすく、イノベーションの主体の権利維持コストが無駄に増える一方で、「主軸を形成する」ことはもっと難しかった。例えば、ここ20年、世界各地で景徳鎮の名前を無断で使用して陶磁器を販売する不法行為が絶えず発生し、景徳鎮陶磁器の知的財産権が深刻な侵害を受けているが、1件の模倣陶磁器は、専利、商標、地理的表示など様々な権利侵害行為に関わっていることが多いため、権利者は複数の法執行部門に救済を求めるうえで、多くの手続きを経なければならず、時間とコストが大幅に増大していたことが例として挙げられる。再編後の国家知識産権局は、既存の法執行を変え、イノベーションの主体に「ワンストップ式権利保護サービス」を提供し、イノベーションの成果の保護力を強化する。

したがって、今回の国家知識産権局の改革は、専利と商標の統合的な法執行を積極的に指導し、力を合わせることで、あらゆる権利侵害行為をより有効的に取り締まることができるようになる一つの契機となる。中央政府の改革決定によれば、再編後の国家知識産権局の主な業務は下記の通りである。

  • 国家知的財産権戦略を実施する。特に知的財産権の創造、保護、運用を強化する。
  • 知的財産権保護業務を担当し、知的財産権保護体系の構築を促進し、商標、専利の行政法執行を指導する。
  • 商標、専利、原産地地理的表示の登録登記及び行政裁決を担当する。

国家知識産権局の再編は、資源を統合し、法執行効率を高め、知的財産権の市場競争力の促進と秩序ある競争環境が構築される可能性を引き出すことができ、産業の転換とアップグレードの促進に役立つ。

▓役割分担に基づいた知的財産権の対外交渉の展開

「商標、専利の行政法執行の指導」を如何に実施するかは、市場監管総局のシステム、特に市場監督管理総合法執行チームとの役割分担と協力に関わっており、「役割分担に基づいた知的財産権の対外交渉の展開」を如何に実施するかは、国務院のその他の部門との分担協力に関わっている。これらは国家知識産権局の再編後の業務の重点となる。

専利と商標の出願、登録件数の急速な増加の問題、行政法執行措置と司法保護とのバランスの問題、また、国際貿易摩擦に関わる知的財産権の問題は何れも、再編後の国家知識産権局に新たな課題をもたらすだろう。これについては、一方では、審査協力センターの設立や審査官の増員を行ったうえで、技術的手段を用いて商標標識の対比を行ったり、専利出願の審査効率を高めたりし、もう一方では、様々な手段により情報を収集し、国際貿易で発生しうる知的財産権の重大問題を事前に予測し、特定の課題を設定して適任の専門家を招集して事前に研究を行うことが必要となる。こうすることによって、権利付与及び権利確定、行政法執行、司法保護、仲裁調停、業界の自主規制などの、それぞれの側面を包含する知的財産権保護体系の形成と、専門的な能力の向上を加速化させることができる。

現在、国家知識産権局は既に、組織改革作業チームを設立し、組織改革実施方案を制定して、国家知識産権局の再編に関する作業に着手しており、2018年4月20日には、組織統合、編成及び人員の移転が既に予定通りに完了している。