在豪スタッフのいる日系企業のみなさまへ

  • オーストラリアの職場関連法に違反したとして(不利益行為、虚偽契約、違法な差別、賃金過少支払、記録保存義務の不履行、賃金違法差引など)雇用主、その取締役や管理職者を訴追するにあたり、従犯としての責任を問う傾向がここのところ強まっています。豪職場関連法の執行に責任を負う取締当局、フェアワークオンブズマンが2016報告年度内に雇用主を提訴した裁判のうち、従犯の訴追が行われたものは全体の92%にのぼります。
  • オーストラリアで勤務する日本人の方で、企業の業務や機能に関与する役割についておられる方や、従業員の扱いや労働条件について指示を出す方は、個人として訴追されるリスクがあります。
  • 取締役が違反に「積極的に」関与していない場合でも、それが生じていることと、それが違法であることを知っている場合には、認識しながら関与していたとしてその取締役個人が訴追される可能性があります。
  • 「関与していた」取締役や管理職者は次のような措置を受ける可能性があります。

o 取締役個人に罰金が科せられる o 個人に未払賃金の支払が命じられる o 取締役に一定行為を禁じる差止命令が出される o トレーニングを受け、今後の監査結果を提出するよう命じられる o 未払金額の支払に必要な資金を確保するために資産を凍結される

  • どんな対策がとれるでしょうか

o オーストラリアでは従業員に関するどんな行為が違法になるのかを把握しておく o 苦情を受けたり、違反行為の可能性がある事態に気づいたら、詳しく調べて対処する o 豪職場関連法を遵守するための適切なトレーニングを従業員に必ず受けさせる o 確信がもてない場合には弁護士に相談する

2009年フェアワーク法(連邦法Fair Work Act)の「従犯者責任」規定は広義で、違反に責任を負うと判断されえる範囲は思いのほか広範に及びます。このため、管理職者や人事担当者をはじめとする人員が個人として民事罰を受けることになる可能性があります。

どのような場合に責任があると判断されますか

個人がフェアワーク法違反に「関与した」とみなされる場合があり、この場合には、個人的に違反に関係したと判断され、このため個人が罰金を受けることになる可能性があります。この罰金は雇用主に科されるものとは別に科されるものです。

フェアワーク法違反に「関与した」とみなされるためには、その違反の主要な構成事実を認識している必要があり、それを認識しながら同違反に関係していなければならず、自分の実際の認識に基づいてその違反に故意に参加していなければなりません。

重要なことは、問題になっている行為が違反になると知らなくても、法的にはその違反に「関与していた」とみなされるという点です。

雇用主の日常業務に関わっており、自分がコントロールできる程度が高い方は違反に「関与している」とみなされる可能性が高くなります。ただし、必ずしも特別な職位や高いレベルの役職についている必要はなく、誰でも責任を問われる可能性があります。

何を理由に責任があると判断される可能性がありますか

従犯として個人責任がよく問われるのは、虚偽契約、賃金の過少支払、不利益行為、差別や、労働条件の最低基準を定めた全国雇用基準(NES: National Employment Standards)違反に関連する場合です。

比較的マイナーな行為でも、フェアワーク法違反として個人が従犯と判断される場合があります。例えば、従業員を解雇する場合に事前に書面による解雇予告を出さなかった場合には同法違反となりますが、この場合、雇用主だけでなく、この違反に関与したいかなる個人も提訴される可能性があります。

最近の例として、ある雇用主がNESに基づいた正しい解雇予告もしくは解雇予告期間相当の給与の支払を行わなかったという事例がありました。義務づけられている5週間ではなく、1カ月の解雇予告期間を与えたことで、この雇用主はフェアワーク法に違反しました。この件で裁判所は違反に関与したとして従業員能力開発マネージャー(Employee Development Manager)を従犯と判断しました。同マネージャーは従業員に解雇を予告する文書を作成し、これを手渡していましたが、同人はそれほど高い職位にあったとは言えず、生じた出来事に大きな影響力があったとも言えません。

責任を問われることがないようにするにはどうすればいいでしょうか

リスクを最低限に抑えるために先を見越して事前対策をとっておくことが賢明です。なぜなら何か問題があるのなら、組織が早期に把握しておいた方が、告発者や組合、規制当局によって明らかにされて組織の財務や評判に大きな影響が生じる事態を招くよりいいからです。

自分の責務を把握:従犯としての責任を問われる可能性があるため、フェアワーク法や現代化された労使裁定、労使協定が義務づけている責務を把握しておくことが非常に大切です。法知識の欠如や故意に目をつぶることで、この責任を避けることはできません。

行動する前に検討:契約書のタイプや文書の下書き作成といった、些細な作業と思われることでも、その契約や文書がフェアワーク法に違反する場合には、個人責任があると判断される可能性があります。上司の指示に従ってとる行動でも、注意深く検討すべきです。例えば、マネージャーが法的影響を考慮せずに取締役の指示に従ってある行為を行った場合、このマネージャーは後日その責任を上司に転嫁することはできません。

労務監査を定期的に実施 (健康診断に相当):定期的に労務監査を実施して、法律や労使裁定、労使協定が義務づけている最低基準が満たされていることを確認しましょう。契約社員や請負業者との契約にも、これが満たされているという趣旨の適切な条項を入れておくようにしましょう。

定期的トレーニングの実施:該当するスタッフ(購買部/調達チームも含む)に、フェアワーク法に基づく責務についての適切なトレーニングを受けさせるようにしましょう。

必要なら弁護士に相談:確信がもてない場合には必ず弁護士に相談しましょう。

何か問題が起きた場合にはどうすればいいでしょうか

ご自分の職場でフェアワーク法違反があったと思われる場合には、次のような対処を検討すべきです。

  • 違反の可能性がある懸念事項と、その解決案を書いた報告文書を作成する
  • この報告文書について自分の上司や取締役に伝える
  • 自分の懸念が無視され、その行動をとるように指示された場合には、可能であればその不適切な行為を実施することを拒否し、その理由を書面で説明する
  • 上記のようなステップを踏む前に、弁護士に相談すべきかどうか検討する