1.昨年、中国本土商標ブランドが検索件数で53%を占め、外国ブランドを上回る

2.悪意による商標登録が規制された典型的事例——ナイキ社は自社のチェック状図形の著名商標をどのように保護したか

3.悪意による商標登録が規制された典型的事例——TIFFANYとDIFFANYは注意しないと見分けがつかない?

4.悪意による商標登録が規制された典型的事例——「埃索黄金眼」の商標権無効審判行政紛争事件

昨年、中国本土商標ブランドが検索件数で53%を占め、外国ブランドを上回る

国家工商行政管理総局副局長が明らかにしたところでは、2014年以降の国内外の売れ筋ブランドについてのネットユーザーの検索回数を分析したところ、2016年は、中国本土商標ブランドの検索件数が53%を占めて、外国ブランドの検索件数を初めて上回り、国産ブランドの認知度が常に向上していることが示されているとのことである。

中国における商標登録便利化改革も新たな成果を収めて、商標登録の全過程の電子化が順調に進展して、登録の手続と作業がさらに改善されており、今年3月末までに、商標の有効登録件数は全国で1293万7000件に達している。現在、工商行政管理部門は、各地に56箇所の商標受理窓口と30箇所の質権登録受理所を設置しており、北京以外で最初の商標審査協力センターを広州に設置している。

工商行政管理総局の統計によれば、全国の各級工商・市場監督管理部門では、2016年に権利侵害・冒用事件計4万9000件が立件、摘発されて、4万5000件が終結しており、それらの事件総額は5億6000万元に上る。2016年に全国の各級工商・市場監督管理部門から司法機関に移送された権利侵害・冒用犯罪事件は293件で、それらの事件総額は1億6000万元に上り、商標権を侵害し、商標を冒用する違法行為にとって大きな脅威となっている。

商標の監督管理についても、ビッグデータによる監督管理を検討して、商標について地域を跨いだ取締協力を推進しながら、商標行政取締情報共有プラットフォームを常に整備して構築し、商標登録情報、権利侵害・冒用情報を国家企業信用情報公示システムに記録して、「全国一ネット」の効果が十分に発揮されるようにすると国家工商行政管理総局副局長は述べている。

阿里巴巴集団の最高プラットフォーム・ガバナンス責任者は、同社の知的財産保護体制の全体のうち75%が商標権に関連しているので、商標関連の知的財産保護のニーズは極めて大きいと語っている。

悪意による商標登録が規制された典型的事例——ナイキ社は自社のチェック状図形の著名商標をどのように保護したか

典型的意義

本件は、商標法に規定する「他人が既に中国において登録を受けた著名商標を複製、模倣又は翻訳したもの」を適用して、悪意による登録行為が阻止された典型的事例である。本件では、ナイキ社の引用商標1「チェック状図形」が著名商標と認定され、2001年商標法第13条第2項に規定の適用範囲を拡大する認定がされて、北京市高級人民法院の先例における関連する認定が引用され、2001年商標法第13条第2項に規定する、他人が既に中国において登録を受けた著名商標を複製、模倣又は翻訳した場合が同一種又は類似の商品についても同様に適用されて、著名商標の権利者の法的な権利が最大限保護されている。商標登録出願の際に同一種又は類似の商品について、他人が既に中国において登録を受けた著名商標を複製、模倣又は翻訳したものがあれば、2001年商標法第13条第2項又は2014年商標法第13条第3項の規定に基づいてその登録商標を取り消すか、又は無効にすることができることになる。

事件の概要

泉州市洛江超盛鞋業有限公司(以下、「洛江超盛鞋業公司」という)は、2002年8月15日、中華人民共和国国家工商行政管理総局商標局(以下、「商標局」という)に第3275213号図形商標(以下、「本件商標」という)に係る商標登録出願をし、2005年7月14日に商標登録を認められた。第25類の商品「被服、靴、靴下、ネクタイ、ベルト」に使用が指定されて、更新登録がされ、その商標専用権の存続期限は2025年7月13日までとなっていた。ナイキ・イノヴェイト・リミテッド・パートナーシップ(以下、「ナイキ社」という)は、2014年5月23日、第991722号商標「チェック状図形」(引用商標1)が第25類の「被服」等の商品について使用されている著名商標である旨を認定するよう請求した上で、本件商標に係る商標登録出願がナイキ社の著名商標を悪意により複製、模倣したものであることを主な理由として商標審判委員会に無効審判を請求したが、2015年3月30日に商標審判委員会から下された本件審決では、本件商標が維持されていた。

ナイキ社は、本件審決を不服として人民法院に出訴し、次のように主張した。ナイキ社の提出する本件証拠から、引用商標1が著名商標の程度に達していると証明することができるので、これは著名商標と認定されるべきものである。洛江超盛鞋業公司がナイキ社及びその図形商標の存在を明らかに知りながら、なおナイキ社及びその商標の優れた名声と極めて高い知名度を利用して不正な利益を図ったことには、主観的な悪意があるといえ、2001年商標法第13条に規定する登録を認めず使用を禁止する事由に該当するので、本件商標は、法に基づき無効とされるべきものである。よって、本件審決を取り消すよう人民法院に求めるものである。

 

商標の図案

 

裁判の要旨

人民法院は、審理した結果、次のように判示した。現存する証拠を総合的に考慮したところ、引用商標1は、「被服、靴、帽子」の商品について極めて高い知名度を有しており、本件商標に係る商標登録出願の前に著名という程度に達している。本件商標の指定商品の関係公衆は、ナイキ社の商標「チェック状図形」の存在をよく知っていた筈であるので、かかる事情の下において、本件商標の登録、使用が認められると、商品の出所について関係消費者が誤認、混同を生じることは必定である上、引用商標1は、ナイキ社による使用、宣伝の結果、同社と一義的な対応関係を形成するに至っているので、第三者の使用行為によって引用商標1の市場における名声が利用されて、ナイキ社が努力と大量の投資をして得た利益の成果が侵奪されると、著名商標の登録者の権利利益が害されることになる。よって、本件商標は、無効にされるべきものである。

悪意による商標登録が規制された典型的事例——TIFFANYとDIFFANYは注意しないと見分けがつかない?

典型的意義

本件は、商標法第13条第2項を適用して、悪意による登録行為が阻止された典型的事例で���る。係争商標に係る商標登録出願が公衆を惑わして、著名商標の権利者の利益を害するおそれがあるか否かを判断するにあたっては、著名商標が公衆に熟知されている程度、両商標間の類似の程度、指定商品同士の関連の程度、係争商標の登録者の主観的意図などの要素を総合的に考慮して判断しなければならない。本件では、ティファニー社によって長期間かつ大量に使用されてきたことで、「TIFFANY」とその音訳された中国語表記「蒂芙尼」が装飾品等の商品について既に強い対応関係を形成していることが現存する証拠によって示されている。真蒂公司は、本件商標「蒂凡尼」について商標登録を受けているだけでなく、英文のみからなる商標「DIFFANY」と中国語と英文を組み合わせた商標「蒂凡尼壁紙DIFFANY」についても商標登録を受けていて、実際の使用過程においても「蒂凡尼」と「DIFFANY」を同時に使用しているが、「DIFFANY」は、疑いの余地がなく第三者の著名商標「TIFFANY」により近いものである。これらのことからすれば、ティファニー社の著名商標の名声に便乗しようという真蒂公司の主観的意図は明白である。本件では、これらの要素が総合的に考慮された結果、本件商標に係る商標登録出願が関係公衆に両商標間の関係について容易に連想を生じさせて、商品の出所について誤認を生じさせるので、ティファニー社の利益を害するものであることが認定された。

事件の概要

上海真蒂装飾材料有限公司(以下、「真蒂公司」という)は、2010年1月20日、中華人民共和国国家工商行政管理総局商標局(以下、「商標局」という)に第8009772号商標「蒂凡尼」(以下、「本件商標」という)に係る商標登録出願をし、2011年2月7日に商標登録を認められた。商標専用権の存続期限は2021年2月6日までで、国際分類第27類の壁紙、絨毯などの商品に使用が指定されていた。

2013年11月21日、ティファニー社は、本件商標がティファニー社の著名商標「TIFFANY」、「TIFFANY&CO」を複製、模倣したものであることなどを理由として本件商標について無効審判を請求した。2015年3月2日、商標審判委員会は、審査の結果、ティファニー社の主張する無効理由の成立を認め、本件商標を無効とした。

真蒂公司は、商標審判委員会の審決を不服として人民法院に訴えを提起した。その主な理由は次の通りである。①本件商標の指定商品である壁紙等は、引用商標の指定商品である装飾品、宝石と差異が非常に大きく、関連性がないということができるので、両者の並存によって関係公衆が誤認することはなく、著名商標の影響力を希釈化することもない。②本件商標は、指定商品である壁紙等について既に幅広く使用されていて、業界で一定の知名度を有しているので、引用商標に便乗しようとする意図はあり得ず、両者が混同を生じることもあり得ない。

商標の図案

裁判の要旨

現存する証拠から、ティファニー社が「装飾品、宝石」の商品について商標登録を受け、使用していた商標「TIFFANY」は、本件商標の出願日の前に既に関係公衆に熟知されていて、著名商標を構成していたことが証明される。本件商標「蒂凡尼」は、英文「TIFFANY」と称呼が近いだけでなく、ティファニー社の使用していた中国語表記「蒂芙尼」とも一字しか相違しないので、本件商標は、2つの引用商標を模倣したものであるといえる。結果、本件商標が壁紙等の商品に使用を指定されると、関係公衆が両商標間の関係について、使用許諾の関係や関連企業の関係又はその他の関係が存在するのではないかというような連想を容易に生じさせて、商品の出所について誤認を生じ、第三者の利益が害されることになる。よって、本件商標に係る商標登録出願は、2001年商標法第13条第2項の規定に違反するものであるので、原告の請求を棄却する。

悪意による商標登録が規制された典型的事例——「埃索黄金眼」の商標権無効審判行政紛争事件

典型的意義

本件は、人民法院によって商標法第30条、第13条及び第44条第1項が総合的に適用されて、悪意による商標登録行為が阻止された典型的事例である。

本件では、次の原則が明らかにされた。

1.係争商標の指定商品の一部が引用商標の指定商品と同一種又は類似の商品である場合、まず、商標法第30条を適用して規制がされる。

2.著名商標の認定には、必要に応じて認定するという原則が堅持される。商標登録を受けた係争商標が、他人の先の著名商標を構成する引用商標を複製、模倣したものである場合、両商標それぞれの指定商品の関連性、係争商標の出願人の主観的悪意などを総合的に考慮した上で商標法第13条が適用され、区分を越えた保護が引用商標に与えられる。

3.知名度か高いか又は独創性の強い他人の先の商標を複製、模倣して大量に商標登録出願をする行為は、商標法で禁止されている「その他の不正な手段により」商標登録を受けて、商標登録の管理秩序を乱し、公平な競争がされる市場秩序を損ない、公序良俗の原則に反する場合に該当するとされ、係争商標は、商標法第44条第1項の規定に基づき無効にされるべきものとされる。

事件の概要

原告・エクソンモービル社(以下、「モービル社」という)は、商標権無効審判行政紛争事件で、被告・中華人民共和国国家工商行政管理総局商標審判委員会(以下、「商標審判委員会」という)が2016日5月31日に下した第9945806号商標「埃索黄金眼」に関する商評字[2016]第49931号商標権無効審判請求審決書(以下、「本件審決」という)を不服として人民法院に行政訴訟を提起した。

本件審決は、桂林埃索公司が商標登録を受けた第9945806号商標「埃索黄金眼」(以下、「本件商標」という)についてモービル社が提出していた無効審判請求に対して商標審判委員会により下されたものであるが、当該審決では、次のように認定されていた。

本件商標と第177019号商標「ESSO及び図形」(以下、「引用商標1」という)、第76856号商標「ESSO及び図形」(以下、「引用商標2」という)の文字「ESSO」は、文字の組合せ及び全体としての視覚的効果などにおいて明らかに相違するので、両者は、類似の商標を構成しないものである。また、本件商標の指定商品と第8918254号商標「埃索」(以下、「引用商標3」という)の指定商品も、機能、用途などにおいて近くないので、両者は、同一種又は類似の商品に該当しない。よって、本件商標と引用商標1、2、3は、『中華人民共和国商標法』(以下、「商標法」という)第30条に規定する同一種又は類似の商品について使用される類似の商標を構成しない。

商標の図案

裁判の要旨

著名商標の認定は、必要に応じて認定され、個別事案で効力を有するという原則に従ってなされる。モービル社の商標「ESSO」及び「埃索」は、早くも1999年には既に商標局により全国重点商標とされてハイレベルな保護がされており、商標「ESSO」及び商標「埃索」などの一連の商標は、中国大陸地域で長期間使用されてきた結果、既に高い知名度を有していて、工業用グリース、石油、石油製品などの商品について使用される著名商標として商標局及び関連の効力を生じた判決書により複数回認定されたことがあるので、石油化学工業製品及びその関連製品の分野の関係公衆に熟知されているものである。従って、人民法院は、法に基づき引用商標7を工業用グリース、石油、石油製品について使用される著名商標として認定する。本件商標が著名商標と相当程度の関係があるものと関係公衆に思わせることで、著名商標の顕著性を弱め、著名商標の市場における名声を貶めるに足る場合や、又は著名商標の市場における名声を不正に利用する場合は、商標法第13条第3項に規定する「公衆を惑わし」、当該著名商標の登録者の利益が害されることになるおそれがある場合に該当する。

桂林埃索公司は、本件商標について商標登録出願をしているだけでなく、「埃索」の文字を含む数十件の商標についても複数の区分で商標登録出願をしているので、主観的な悪意があることは明白である。桂林埃索公司又はその一連の商標は、モービル社及びその一連の商標と関係があるものと関係公衆に容易に誤認させ、又はモービル社の著名商標の市場における名声を実際に不正に利用して、著名商標の顕著性を弱めているので、著名商標の権利者としてのモービル社の利益を害しているというべきである。