台湾の専利制度において、もともと査定を受けるべきでない出願の専利権を無効にする無効審判は、制度の健全性を守るのに欠かせない一環であるといえよう。主務官庁である知的財産局の公開資料によると、最近の三年間で、400件超もの無効審判が請求されていることがわかる。本ニュースレターでは、台湾での無効審判の現況を把握すべく、専利公報(特許・実用新案・意匠の公告公報を含む)に掲載された、2021年1月1日から2022年6月30日までの期間における無効審判案件の審決につき、以下に分析・考察する。

まず、案件数では、上述した一年半の期間において、計509件の審決結果が公告された。種別すると、以下の図1(円グラフ)に示されているように、特許、実用新案、意匠はそれぞれ、178件(35%)、271件(53%超)、60件(12%)であり、そのうち実用新案は過半数を超えて一番多く、意匠は一番少なかった。

<図1>

台湾の無効審判制度では、何人でも意見書・証拠文献をもって、無効審判を請求することができる。このため、実務上、実際の利害関係者の名義開示を回避し、ダミー(関係のない第三者)での名義のもと、無効審判を請求することが少なくない。ダミー名義で請求した場合、自然人名義を用いることが多く、これも判断のファクターの一つと考えられるため、自然人名義、会社・協会名義に分けて観察したところ、表1および図2(棒グラフ)に示されているように、自然人名義のものは全体の6割にも達していることが分かった。また、自然人名義の案件数の割合は、特許、実用新案、意匠において大差はないようである。

そして無効審判案件の専利権者を国別で観察すると、実用新案の無効審判案件では、台湾人権利者のものが大多数であり、外国人権利者のものは6件のみ(そのうち、中国人権利者のものは4件)となっている。また、特許の無効審判案件においては、台湾人権利者のものが2/3以上であり、外国人権利者のものは1/3弱となっている。(図3参照。)

<図3>

また、特許権者が外国人である無効審判案件の46件のうち、米国、日本がそれぞれ15件であり、それぞれ約1/3の割合を占めており、ドイツ、スイスなどその他の国は、合わせて約1/3となっている。(図4参照。)

<図4>

続いて、無効審判案件の審判期間、即ち、無効審判請求日から審決書の発行日までの期間について考察する。表2に示されているように、意匠の無効審判案件は、約8割が1年以内で審決されており、実用新案の無効審判案件も約半数、1年以内で審決されているのに対し、特許の無効審判案件は、審判期間が比較的長く、約半数が審決に至るのに1年半以上の時間が掛かっており、2.5年を超えたものも全体の約1割を占めている。

<表2>

分では、表3に示されているように、実用新案における無効審判の請求成立の割合が2/3であり、請求不成立の割合は約1/3であることがわかった。これは、台湾の専利制度において実用新案のみ、実体審査を経ずに、形式審査さえクリアすれば登録されることから、実用新案では、無効審判の段階において問題点が浮上し、無効とされやすいことを反映していると考えられる。これに対し、特許、意匠の無効審判案件では、請求成立・不成立の割合は半半となっている。

<表3>

また、特許および実用新案の無効審判は、無効請求の声明にて言及された請求項に対し、一項毎に審理を行うものである。上記表3の無効審判案件(成立・不成立のもの両方)の審決書の主文について分析したところ、知的財産局に公告済みの、無効審判請求不成立の案件には、(1)無効対象とされた全ての請求項が存在しないため不成立とされたもの(別の無効審判案件が成立した場合等)、(2)証拠不十分のため不成立とされたもの、が含まれ、無効審判が成立した案件には、(1)請求項の一部が無効とされ、一部が維持とされたもの、(2)全請求項成立(全請求項が無効)とされたもの、が含まれていることが分かった。その詳細は表4の通りである。

<表4>

無効請求却下とされた案件は、特許、実用新案を併せて計13件であった。また、特許、実用新案の無効審判請求案件は請求項毎に確定するものではあるが、審決書の主文から見れば、やはり全請求項成立か全請求項不成立が主流であり、一部の請求項のみ無効が成立した案件は比較的少なく、特許、実用新案のいずれも1割未満であった。