2019年1月2日、中国国家知識産権局は国知発保字〔2018〕39号『規定に合致しない専利標識の表記事件の処理ガイドライン(試行)』)(以下、『ガイドライン』という)を発表した。これにより専利(専利とは、特許、実用新案、意匠の総称である)模倣事件の取締りと、規定に合致しない専利標識の表記事件の処理とが厳密に区別されることになる。

『ガイドライン』の最大な目的は、事件処理の基準を統一することである。現在の中国の専利標識の表記に関する法的依拠は以下の通りである。

  • 『専利法』第17条第2項には、専利権者は、その専利製品又はその製品の包装に専利標識を明記する権利を有すると規定されている。
  • 専利法実施細則第83条第1項には、専利権者は、専利法第17条の規定に基づき、その専利製品又はその製品の包装に専利標識を明記する場合、国務院専利行政部門が規定する方式に従って明記しなければならないと規定されている。
  • 国家知識産権局を国務院専利行政部門とする『表記弁法』第2条には、専利標識を表記する場合、本弁法に従って表記しなければならないと規定されている。また、『表記弁法』第8条第1項には、専利標識の表記が本法第5条、第6条又は第7条の規定に合致しない場合は、専利業務を管理する部門が是正を命じると規定されている。

専利標識の表記に関する具体的規定:

  • 専利標識及び専利出願表示の表記は、以下に掲げる要求に合致しなければならない。
  • 専利標識を表記する場合、以下に掲げる内容を明記しなければならない。(1)専利権の種類を中国語で明記する。例えば、中国特許、中国実用新案、中国意匠である。(2)国家知識産権局から付与された専利権の専利番号。上記の明記しなければならない内容のほかに、その他の文字、図形記号を付加することができるが、付加された文字、図形記号及びその表記方法は公衆に誤認を生じさせるものであってはならない。
  • 専利方法により直接得た製品、当該製品の包装又は当該製品の説明書等の資料に専利標識を表記する場合、当該製品が専利方法により直接得た製品であることを中国語で明記しなければならない。
  • 専利出願表示を表記する場合、中国専利出願の種類、専利出願番号、更に「専利出願中、専利権未承認」の文字を中国語で明記しなければならない。
  • 専利出願人又は専利権者が特定の製品について、外国で専利出願し又は専利権が付与され、又はPCT専利出願をした場合、前記の要求に従って事実通りに専利又は専利出願の関連情報を明記しなければならない。

規定に合致しない表記行為の法的責任:

  • 規定に合致しない専利標識又は専利出願表示の表記行為(以下「規定に合致しない表記行為」)が、専利行政の管理秩序に違反する場合、『表記弁法』第8条第1項の規定により、専利業務を管理する部門が是正を命じる、すなわち規定に合致しない専利標識又は専利出願表示の表記を停止するよう命じる。
  • 外国専利又は外国専利出願、PCT専利出願表示の表記が専利の模倣行為に該当する場合、専利業務を管理する部門は、専利の模倣行為の認定基準及び法執行手続きに従って取り締らなければならない。表記行為が専利の模倣行為に該当しないものの、表記内容に公衆に誤認を生じさせる疑いが存在する場合、虚偽宣伝の疑いで、関連部門に移送し処理しなければならない。

実は、国家知識産権局は、2012年に既に専利標識の表記行為について詳細に規定した部門規則の『専利標識の表記弁法』を発表している。それには、専利標識が関連規定に合致しない場合、専利業務を管理する部門が是正を命じることが規定されている。

専利表記の基本概念は、付与された専利権の有効期間内において、専利権者が、その専利製品、専利方法により直接得た製品、その製品の包装又はその製品の説明書などの資料に、専利標識(専利権に関連する文字、数字又は図形など専利の対象であることを明記した標記)を表記することができる権利を有するというものである。専利権者の同意を得た他人も、この権利を享有することができる。

実務では、「専利標識の表記」は、複雑な問題である。専利標識の表記行為が、規定に合致するかどうかの認定は、行為の主体、行為の客体、行為の形態、時間的要件など、多くの観点から考慮しなければならず、専利権の種類の表記が規定に合致しない、専利番号の表記が規定に合致しない、付加された文字、図形記号、方法専利の表記が規定に合致しないなどは何れも、規定に合致しない専利標識の表記行為に該当する。

「規定に合致しない表記」は、市場の混乱をまねき、消費者に誤解を生じさせ、さらに、虚偽の広告宣伝となるおそれがある。従来の法執行実務では、一部の地域で、専利の模倣事件の取締りと、規定に合致しない専利標識の表記事件の処理とが混同されている状況があり、しかも関連事件を処理するときに、地域によっての法執行措置が統一されていなかった。

法執行が適切に行われるように、また、誤った判断で市場主体の経営活動に不必要な損失を生じさせないため、二つの異なる事件が明確に定義された。この『ガイドライン』が地方の法執行に対する指導的役割を果すことで、事件の処理プロセスが規範化され、法執行基準が統一され、法執行のレベルと質が向上し、それによって専利法執行の知的財産権保護における役割が発揮されて、良好なビジネス環境がつくられることが期待される。

『ガイドライン』の本文には、次のような事例が記載されている。

甲家電量販店のカウンターには某ブランドの給湯器のパンフレットが置かれている。そのパンフレットには「本製品は、国内専利を取得済み。専利番号20133XXXXXXX.X」との文字が記載されている。調べたところ、そのパンフレットは専利権者である給湯器メーカー乙社が印刷したもので、印刷時期は、専利権の有効期間内であり、専利技術内容とその宣伝の製品は一致している。

一見したところ、権利者の専利表記行為には、何の問題もないようであるが、『ガイドライン』に記載されている事例の分析及び評論を注意深く読めば、問題点が分かる。

X     乙社は、専利権者であり、専利権付与後の有効期間において、その専利製品のパンフレットに専利標識を表記する権利を有する。しかし、上記の表記内容は、専利権の種類と正しい専利番号が表記されていないため、『専利標識の表記弁法』第5条の規定に合致していない。したがって、乙社の行為は、規定に合致しない専利標識の表記行為に該当する。甲家電量販店については、専利標識の表記規定に合致しない製品パンフレットを配布したことが、同じく専利標識の表記規定に合致しない行為に該当するため、上記の文字が記載されているパンフレットの配布を停止するよう命じるべきである。

『ガイドライン』の本文中の規定に合致しない表記行為の認定に関する章節には、多数の指導的事例が挙げられている。また『ガイドライン』には、事件の立案から事実の調査審理、そして事件終結の意見などについての詳細な法執行文書及び様式も規定されている。

次の段階で、国家知識産権局は、『ガイドライン』の規定内容について宣伝及び研修を実施し、専利標識の表記行為の監督管理を更に強化し、専利の行政法執行の規定を整備して、当事者が正確に専利標識を表記するように指導及び規範化する予定である。