税関による商標権益水際保護措置の執行は、簡単に言えば、台湾にて商標登録出願して商標権を取得した商標権者がまず税関に「税関登録による保護」(中国語「提示保護」)を申立て、その関係資料が税関のデータベースに登録されると、税関の職権による輸出入の模倣品への取締りを通じて商標権の保護を遂行する重要な一環として行われるものである。その法的根拠は「商標法」第78条第2項の規定に基づき制定される「税関による商標権益保護措置執行に関する実施規則」(中国語「海關執行商標權益保護措施實施弁法」、以下「本実施規則」という)である。

商標権者に対する保護の強化、電子政府(e-Government)の実行及び行政手続の簡素化を図るため、本実施規則は2016年12月30日に改正され、2017年1月1日より施行されることとなった。本実施規則には重要な改正が多く含まれているため、ここでは、改正の要点及びそれに関連する実務のやり方を次のとおり紹介する。

一、税関が許可する保護登録期間は、現行の1年から商標権の存続期間満了日までに延長される

今まで税関が許可する保護登録期間は1年のみであったことから、商標権者は毎年税関に保護登録期間の更新を申請することが必要となり、商標権者の申請に伴うコストと税関の業務負担が増えていた。このため、今回の改正は、税関保護登録の期間を商標権の存続期間満了日までに延長させる。例えば、商標権の存続期間満了日まであと5年が残されれば、税関は、5年の保護登録期間を許可する。よって、商標権者は毎年税関に資料を添付して、保護登録期間の更新を申請する必要がなくなる。

ただし、注意すべきは、本実施規則改正前に、税関が発行した許可書にすでに保護期間は2017年何月何日をもって満了する旨が記載されていたときは、商標権者は依然として期間満了日までに税関に保護登録期間の更新を申請しなければならない。すなわち、税関は本実施規則の改正で、登録による保護期間が商標権の存続期間満了日までに自動的に更新するものではない。ただし、商標権者が2017年某月某日の保護期間満了日までに保護登録期間の更新を申請して、許可を受けたとき、税関は新たに改正された本実施規則に従い、許可書の趣旨に、保護期間は商標権の存続期間満了日までである旨を明記する。

また、ここで注意すべきは、「税関登録による保護」を申立てる際に提供する「税関が真正品及び侵害疑義物品の特徴を識別できる画像電子ファイル(例えば、真正品、模倣品又は真贋対比の写真やカタログなど)」について、本実施規則第3条第1項第2号には「画像内容は商標登録を経てその商標の使用を指定した商品項目でなければならない」と規定されているため、現在、実務において、税関は、上述の規定に基づいて、「税関登録による保護」の申立てをする者がアップロードした「商標登録を経て使用を指定した商品項目ではない」画像電子ファイルを、拒否する。

二、商標権者は、台湾経済部智慧財産局へ商標権存続期間の更新登録済みの書類を提供すれば、税関へ保護登録期間の更新を申立てるすることができる

前述のとおり、税関による保護登録期間はすでに商標権の存続期間満了日までに延長されることとなる。手続に伴う負担の軽減を図るため、商標権そのものの存続期間更新登録が経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。)に認められた場合、商標権者は、更新済みの証明書類をもって、税関へ保護登録期間が更新後の商標権の存続期間満了日までに延長されるよう申立てることができ、別途「税関登録による保護」を申立てる必要はない。

三、税関は、商標権者への通知について、口頭、書面、電話、電子メール又はファクシミリにより行うことができる

税関が改正前の実施規則によると、商標権を侵害するおそれのある輸出入貨物を発見した場合に、「電話及びファクシミリにより」商標権者に通知しなければならない。ただし、今回の改正で、同実施規則の第7条第3項には、「税関による通知は、口頭、書面、電話、電子メール又はファクシミリで行うことができ、同時に記録を作成してファイリングする」と規定されている。実務上、確かに税関職員は、従来の書面のファクシミリによる通知の方法をとらず、電話による商標権者と連絡する方法のみをとった、ことがあり、これは、商標権者に税関に赴いて権利侵害の疑義のある輸出入貨物を鑑定する機会を失わせることになるおそれがあるため、商標権者は注意を払わなければならない。

四、税関は、商標権者が税関に赴いて貨物の真贋鑑定を行う必要性を予め判断する助けとなるよう、商標権者に権利侵害疑義物品の写真を提供することができる

本実施規則改正前、税関が商標権及び著作権を侵害するおそれのある事件を発見した場合、知的財産権保護の強化及び通関手続の簡素化・迅速化などを図るため、税関は、商標権者が税関に赴いて真贋鑑定を行うか否かを判断する際の参考となるため、2015年7月1日から、商標権者に侵害疑義物品の画像資料を提供している。ただし、これは単なる税関のプレスリリースを根拠とするにすぎない(http://web.customs.gov.tw/ct.asp?xItem=73518&ctNode=4298)。

今回の改正で、同実施規則の第7条第5項には、「商標権者は税関から通知を受けた後、税関に赴いて権利侵害有無の認定を行う必要性を判断する際の参考となるよう、税関に権利侵害疑義貨物の写真ファイルの提供を申請することができる」と明文で規定されている。

補足して説明する必要があるのは、税関から提供してもらった権利侵害疑義貨物の写真ファイルは、あくまでも権利者が税関に赴いて権利侵害有無の認定を行うかを判断する際の参考として用いられるものであり、かかる写真ファイルは、権利侵害有無の認定の根拠としてはならない。

「税関への権利侵害疑義貨物の写真ファイルの提供申請」について、実務上、商標権者は、まず先に税関担当者にサンプルのカラー写真を撮ってもらって、さらに電子メールにより商標権者又はその代理人に送付するよう請求することができる。写真を通じて真正品であると簡単に判定することができる場合、商標権者又はその代理人は時間や労力を費やして税関に赴いて鑑定を行う必要がなくなる。しかし、簡単に判定することができない場合、商標権者は自ら又は代理人に委任して税関に赴いて鑑定を行わなければならない。

五、税関は保護登録期間を繰り上げて終了することができる

税関が許可する保護登録期間はすでに商標権の存続期間満了日までに延長され、また、商標権の存続期間は10年にも及んでおり、かつ10年ごとに更新登録の申請もできるので、この長い保護期間内に様々な状況が起こる可能性がある。このほか、税関による商標権の保護措置の執行にあたって、商標権者又は代理人の協力の下で初めて遂行することができる。そのため、今回の改正で、本実施規則第5条には、「税関は保護登録期間を繰り上げて終了することができる事由」について、「税関が「税関保護の登録」申立てたときに明記される連絡先によって、商標権者又はその代理人と連絡がとれなかった場合。」、及び「中華民国国内に、住所又は営業所を有していない商標権者が代理人と契約を終了し、又はその他代理権の消滅事由があって、本実施規則第14条第1項但書で定められた代理人への委任の規定に合致しない場合」と規定されている。

税関事務に関する代理について、原則としては任意代理制度を採用しているが、商標権者は台湾国内に住所又は営業所を有していない場合、税関での権利侵害有無の認定に関する連絡、書類の送達など税関による商標保護手続の執行に利するよう、今回改正された第14条第1項の規定によると、例外的に、強制代理の制度を採用することとなり、かつ、代理人は国内に住所を有さなければならない。

最後に、今回の改正では、実務においてすでに認められる商標権者による「権利侵害被疑者(ブラックリスト)」のアップロードはまだ明文化されていないが、本実施規則の改正の前後を問わず、税関の「商標権案件の税関登録による保護申立書」のフォームにはかかる欄があるので、税関に被疑者の輸出入貨物に対して警戒心を高めさせ、特に商標権者が被疑者による模倣品の輸出入に関する具体的な事実や証拠をまだ把握できないことに苦しんでいる場合、この欄の記載は、商標権者が「税関登録による保護」を申立てる成果をさらに向上させることができるので、商標権者は、これを活用することができる。