2014年10月6日、ヨーロッパ連合反トラスト規制機関か らの許可を受けて、フェイスブック社は、オンライン メッセージ会社であるワッツアップ社の買収(従前公 表していたもの)を完了した。ワッツアップ社は、 フェイスブック社の完全子会社となったものの、独立 して事業を行い続ける。著しく高額な買収価格 (約190億ドル)は、ワッツアップ社の急速な成長に ついて、フェイスブック社が長期的な競争上の脅威と なると考えた可能性があることを示している。買収価 格には、ワッツアップ社の債権者に対するフェイス ブック社のクラスA普通株式1億7776万669株 と45億9000万ドルの現金支払いが含まれており、その 一部はワッツアップ社の補償責任を担保するためにエ スクローで保管されている。また、フェイスブック社 は、ワッツアップ社の従業員に対して、制限付き株 式4594万1775株を譲渡し、また、ジャン・コウム氏 (ワッツアップ社の共同創設者で現在のCEO)は、 フェイスブック社の取締役となった。

本件取引の条件は、最近のリーク、ハッキング、ス ナップチャット・クレジットカードデータ・その他 様々な個人情報の国家安全保障に関わる漏洩等に照ら して、プライバシーに関する様々な規制及び世間の目 に晒されることが予想された。電子プライバシー情報 センター(マイクロソフト社、グーグル社、フェイス ブック社等のインターネット大企業に対して過去に訴 訟を提起したこといのある、情報プライバシー研究グ ループ)は、3月、ワッツアップ社のユーザーは、元 の利用規約ではなくフェイスブック社による大規模な データ収集を受けることになるとして、本件取引に反 対し、公正取引委員会(FTC)に対して申立てを行っ た。FTCは、本件取引は認めたものの、フェイスブッ ク社及びワッツアップ社双方への書簡の中で、フェイ スブック社はワッツアップ社の既存データ規則に従っ たプライバシー義務を負う点に触れ、このような義務 はユーザーによる明確な同意がなければ変更できな い、と述べた。よって、被買収会社の知的財産、顧客 基盤、その他のデータの価値に基づく取引では、 デュー・ディリジェンスにおいて、(i)対象会社による プライバシー及びデータ共有、(ii)対象会社の顧客基盤 についての期待、(iii)(a)プライバシーポリシーの変更 に顧客の同意を求めること及び(b)取得したデータを分 離保存しておくことに要する費用、についても十分検 討しておく必要がある。

これらのプライバシーに関する懸念について精密な検 討が行われ、本件取引条件において、ワッツアップ社 は、(i)適切な通知を行い、個人データの処理に必要な データ対象から必要な同意を得ていること、(ii)個人 データに関連するデータ対象のプライバシー選択(オ プトアウト選択等)に従っていること、(iii)プライバ シー法、及び、会社データが偶発的又は不法に取り扱 われることを防ぐためのワッツアップ社のプライバ シー規約を遵守すべく、適切な技術的・物理的・機関 的手段を講じ、かつ、安全システム及び技術を採用し ていること、(iv)ワッツアップ社のデータに関連する データ安全ポリシーの違反等が発生しておらず、か つ、ワッツアップ社のデータの無権限又は違法プロセ スが行われていないこと、(v)プライバシー法及びワッ ツアップ社のプライバシー規約を遵守するデータプロ セッサーとの間で書面による契約を締結しているこ と、(vi)ヨーロッパを情報源とする個人データがヨー ロッパ外に持ち出されていない又は持ち出しが認めら れていないこと、について保証することが求められ た。通常のプライバシー会社の取引文書と異なり、本 件の取引契約は一般に公開されており、M&Aの分野に おける技術又は情報プライバシー問題を取り扱ってい る弁護士が検討するに値するものである。