【知財高裁平成20年2月7日判決(平成18年(行ケ)第10369号)】

【ポイント】

発明者の認定が争われ,発明の実質から,発明者を認定した事例

【キーワード】

発明者の認定,冒認,共同出願違反。

1 事案

P、Q、及びRは、車間距離保持不足違反の違反証拠作成システムとその車間距離の測定について、Pが当初のアイディアを提供し、Qが測定装置の選定、小型プリンタとPC接続の構成の考案等を行い、Rがこれらに関するソフトウェアの試作等を行った。 当該創作に関する特許出願は、発明者がP及びQのみとされ(Rは入っていなかった)、特許権が成立し、これに気づいたRが代表者を務めるXは、当該特許権に対し、共同出願違反等を理由に無効審判請求をしたところ、特許庁はソフトウェアが本件特許発明の必須の構成要素であるとはいえないとして、請求不成立審決とした。

本件は、これを不服としたXが知財高裁に控訴した事案である。

2 知財高裁の判断

知財高裁は、発明者の認定について、「『技術的思想の創作』をしたといい得るためには、当該発明が当業者にとって実施可能なものとなっていなければならないものであり、原則として、単なる着想にとどまらず、試作、テストを重ねて課題を解決し、技術として具体化されていなければならないと解される。ただし、例外的に、具体化が当業者にとって自明といえる場合、例えば、公知技術を組み合わせたような場合に(それが発明として進歩性を有する場合に限られることはいうまでもない。)、着想をもって「技術的思想の創作」に当たることもあり得ないことではない。」という判断規範を述べた上で、本件特許発明の特許請求の範囲には、「ソフトウェア」という言葉の記載はないものの、発明の実質をみると、「追走車(B)の位置データ、速度データ、時刻データを測定するとともに、入力した車両登録番号データと併せてプリンタから違反キップとして打ち出すという機能を果たさせているのは、ソフトウェアであ」ると認定し、当該機能の実現「のために試作、テストを積み重ねる必要があるのであって、具体化が当業者にとって自明なものとはいえない」として、共同開発の経緯に照らすと、ソフトウェアの試作に関与したRも発明者であると認定し、特許庁の審決を取り消した。

3 検討

オープンイノベーションが活発化している近時では、1社で開発が完結することは稀である。多くの場合、共同研究等に多くの企業により、開発が完成する。このような開発成果について特許出願をする場合、誰が発明者であるのかの認定は、以後の権利の有効性に影響するので、重要である。ビジネスが軌道に乗ってから、特許権が無効となることは企業活動にとって大きなリスクである。

本件では、知財高裁は、原則、発明に着想した者と具現化した者の両者が発明者であるとの判断規範を述べ、本件で、ソフトウェアの試作を担当した者は、たとえ、特許請求の範囲にソフトウェアという文言がなかったとしても、その発明の実質がソフトウェアにあるので、具現化を担当したものとして、発明者に該当すると判断した。

実務においても、共同開発等で多数の者が関与した発明については、本件のよう���その発明の実質から見て、着想を与えた者と具現化をした者については、発明者として扱うことに留意する必要があろう。