ジェナー&ブロックレポート2015年2月版にも記載した ように、デラウェア州弁護士会の会社法評議会(「会 社法評議会」)は、デラウェア州会社法 (「DGCL」)改正案を提案した。特に注目すべき点 として、この改正案では、公開会社株主の株式買取請 求権に加えて、費用転換、裁判地選択付属定款につい て検討されている。この改正案が法として成立する と、デラウェア州会社が株主訴訟への関与を回避する 方法を提供するものとなる。
費用転換
改正案のうち最も異論が多いのが、弁護士費用の転換 に関するものである。これは、会社が、会社内紛争に 関する訴訟で敗訴した株主に対し、弁護士費用やその 他の費用を負担させることを禁止するものである。デ ラウェア州の株式会社は、そのような費用転換条項を 定款や付属定款に入れることができなくなる。
この案は、ATP Tour, Inc. v. Deutscher Tennis Bund, 91 A.3d 554, 555 (Del. 2014)におけるデラウェア州最高裁判所の 判断が及ぶ範囲を制限するためのものである。当該判 例では、費用転換条項は非株式会社についてのみ認め られることが明確にされたが、株式会社にも適用があ るかにつき非常に不明確なままであった。そのため、 少なくとも30社のデラウェア州株式会社が費用転換条 項を採用した。今回の改正案は、このような費用転換 条項を禁止するものである。
会社法評議会は、改正案についての説明の中で、費用 転換条項により、株主勝訴の可能性のある訴訟が抑制 され、取締役の行動を規制するデラウェア州法の主要 な執行メカニズムの機能不全をもたらすことになる、 との懸念を示した。会社法評議会は、この改正案が採 用された場合、軽率な訴訟についての懸念を有する会 社は、当該懸念に対処するためには別の方法を探す必 要があることになる、と指摘している。例えば、今回 の改正案においては、特定の株主が署名する契約で費 用転換条項を規定することは禁止されておらず、ま た、企業は、費用転換を行わない内容の訴訟関連付属 定款を作成することもできる。
裁判地選択条項
会社法評議会は、今回の改正案において、会社内紛争 に関する訴訟についてデラウェア州を排他的管轄とす る付属定款の採用を認めている。注目すべき点とし て、この改正案では、デラウェア州での訴訟の可能性 を排除するような、他の地を訴訟又は仲裁の排他的裁 判地とすることは禁止されている。
株式買取請求権
今回の改正案では、大規模株主が制定法上の株式買取 請求権を不正に行使することへの懸念についての対応 策が検討されている。現在のDGCLでは、株主は、自 身が保有する株式の買取額につき、当該買取額が買収 額より大きいか否かを問わず、制定法で規定された (かつ現時点では市場より高額の)利息を回収するこ とが可能となっている。これにより、高額の利息を求 めて株主が不必要な提訴を行うことにつながってい る、との批判がなされてきた。改正案によると、会社 が、提訴された後、株主に対して支払いを行うこと で、経済的インセンティブを最小化することが可能と なっている。そして、支払われた金額より買取額のほ うが最終的に高いような場合に限り、その相違部分に ついてのみ(法定利率に基づき)利息が認められる。 この点で、今回の改正案は、簡易合併の場合を除き、 株主が(1)同クラス発行済み株式の少なくとも合 計1%、又は、(2)1ミリオンドル額相当以上のいずれか について株主買取を求める場合にのみ株式買取請求権 を認める、と言う形に制限するものとなる。今回の改 正案が認められると、2015年8月1日に施行される。