(1)全体的な状況

1.全国における知的財産事件の既済状況

最高人民法院の統計によると、近年、各級人民法院における知的財産権関係第一審事件の既済件数は年々上昇していて、2016年には14万7000件、増加率9.55%に達しており、2017年には16万1000件、増加率9.32%に達する見込みであるという。下のグラフを参照されたい。

2013~2017年の全国における知的財産権関係第一審事件の既済件数統計

このほか、2016年には、北京、上海、広州の知的財産法院で懲罰的賠償の適用が模索され、侵害のコストが低く、権利行使のコストが高いことなどの問題の解決に力が入れられていた。南京、蘇州、武漢、成都では、知的財産裁判法廷が設置され、知的財産事件が地域を跨いで集中的に管轄されるようになっている。

2.北京知的財産法院における事件

北京知的財産法院の統計によれば、北京知的財産法院で2016年に受理された各種知的財産事件は計10,638件で、前年(2015年は9,191件)比で15.74%増加している。2017年には、8月までで各種知的財産事件11,108件が受理されている。

これらの事件には、第一審事件が多い、行政事件が多い、技術系事件が多い、渉外事件が多い、といった4つの大きな特徴がある。

また、ハイテク重大戦略産業と中核技術に関係する事件が増加している、双方当事者がいずれも外国人である事件が増加している、中国の権利者が外国の当事者による侵害を訴えた事件が増加している、新しいタイプの紛争事件が増加している、訴額が巨額である事件が増加している、といった5つの傾向が見られる。

このほか、北京知的財産法院では、知的財産権侵害の賠償額が引き上げられ続けており、特許権侵害事件の平均賠償額が141万元、商標権侵害事件の平均賠償額が165万元、著作権侵害事件の平均賠償額が45万8000元となっている。

例えば、「美孚」の商標権侵害事件では、原告の賠償請求額450万元の全額が認容され、「墻錮」の商標権侵害事件でも、原告の賠償請求額1000万元の全額が認容されている。U盾の特許権侵害事件では、原告の賠償請求額4900万元の全額が認容された上、原告の主張する弁護士費用100万元がタイムチャージ方式で初めて認容されている。「紫玉」の商標権侵害上訴事件では、第一審人民法院により認定された賠償額100万元が法定賠償額として最高の300万元まで引き上げられた。書生公司が関係した一連の著作権侵害上訴事件では、印税基準の上限300元/1000字で侵害の賠償額が認定され、第一審の賠償額と比べて大幅に引き上げられている。

(2)商標訴訟

1.全体的な傾向

工商行政管理局と商標局の統計によると、商標の権利主体が有する権利行使意識が高まり続けるにつれて、商標審判事件の請求件数も急速に増加し続けている。2016年の各種審判事件の請求件数は15万6000件、毎月平均1万3000件に達し、前年比で32.8%増加している。そのうち、拒絶査定不服審判請求は13万1000件で31.3%増加しており、当事者系の複雑な事件の請求件数は2万6000件で40.9%増加していた。2017年には、19万~20万件に達し、前年比で23%増加することが見込まれる。下のグラフを参照されたい。

2014~2017年の商標審判事件の請求件数統計

2.商標事件の特徴

近年、インターネットによる起業がブームとなっているものの商標意識は低いので、C2C、O2Oのビジネスモデルに関係する事件の件数は目立って増加しているが、B2C、B2Bのモデルに関係する商標権侵害事件は少ない。統計によると、ウェブサイト、検索エンジンのリスティング広告、電子商取引プラットフォームにおける商標権侵害事件がネットワーク関連の商標権侵害事件全体の81%を占めていて、ゲーム、Appソフトなどに関係する他のタイプの事件は件数が比較的少なくなっており、近年新たに出現したタイプの事件に属する。

(3)特許訴訟

1.全体的な傾向

特許行政取締事件の処理総件数は毎年急増しており、2016年の特許行政取締事件の処理総件数は48,916件で、前年比で36.5%増加していた。2017年には7万1000件に達し、前年比で44.6%増加していることが見込まれる。そのうち、特許紛争事件は2万件を初めて突破して20,859件(そのうち、特許権侵害紛争が20,351件)に達し、前年比で42.8%増加している。特許表示冒用事件は28,057件で、前年比で32.1%増加している。下のグラフを参照されたい。

2014~2017年の特許行政取締事件の処理件数統計

2.権利侵害と権利行使の特徴

1)特許権侵害に遭ったときの措置

侵害に遭った後、38%の特許権者は何ら措置を講じることをしていない。行動に出たグループのうち、科学研究団体、企業及び個人の特許権者は、侵害の停止を要求する警告状を送付する傾向にある。大学の特許権者は、行政機関に処理を申し立てて人民法院にも訴えを提起するか、行政に処理を申し立てる傾向にある。

2)侵害された権利の種別と損害

企業では、営業秘密が損害の最も著しい種別で、42%を占めている。大学では、上位2位を占めているのが特許権と著作権で、特に特許権の損害が最も著しく、5割を超えている。科学研究団体では、上位2位を占めているのは特許権と営業秘密で、特許権が侵害されたことによる損害の方が著しく、37%の割合となっている。

知的財産の運用

(1)全体的な状況

2015年に『国家知識産権局の知的財産金融サービス活動のさらなる推進に関する見解』が制定され、2020年までに全国の特許権質入融資総額で1000億元突破を目指すことが示されている。

(2)商標の運用

2016年の中国における商標の質権登録申請は1,410件で、前年比で20%増加しており、支援された企業融資は649億9000万元で、前年比で90%増加していた。割り引いて20%の増加率で試算しても、2017年の商標の質入登録件数は1600~1700件に達し、その総額は700~800億元に達することが見込まれている。

(3)特許の運用

2016年の全国における特許権質入総額は436億元で、前年と比較していくらか減少しているが、各種重点産業の知的財産運用ファンドで第1回で調達された資金は42億8000万元である。2017年の特許質入融資の総額は720億元で、前年比で65%増加している。質入件数は4,177件で、前年比で60%増加している。下のグラフを参照されたい。

2013~2017年の中国における特許権質入融資総額

データ出所:中国国家知識産権局、北京知的財産法院、中国版権協会、インターネットメディア