北京知的財産裁判所は、フィラスポーツ有限公司(以下、フィラ社)と浙江中遠靴有限会社(以下、中遠靴社)、温州独特電子ビジネス有限会社(以下、独特社)、劉氏(独特社の法定代表者)との商標権侵害及び不当競争紛争事件の二審判決を下した。二審の裁判所は、一審判決を維持し、中遠靴社などの被告が、フィラ社の商標権侵害行為を直ちに停止し、フィラ社の経済的損失及び合理支出の合計832万元(約121万米ドル)を賠償すべき旨の判決を下した。

本事件において、裁判所は賠償額を決定する際、3倍の懲罰的賠償を適用した。この事件は懲罰的賠償が適用された代表的な商標事件であり、業界内の注目が集まっている。

【事件概要】

ブランド“FILA”を持つフィラ社は1911年にイタリアで設立された。2008年には、フィラ社は第163332号(Fおよび図)商標、第163333号(FILA)商標、第881462号(斐楽)商標、第G691003A号(FILAおよび図)商標の中国における唯一の合法的使用権を獲得し、生産、販売している衣類および靴類に使用していた。

2016年6月に、フィラ社は、中遠靴社、およびブランド“杰飛楽”の権利者である劉氏が生産販売していた製品に、フィラ社の“FILA”シリーズ商標に近いGFLAロゴを使っていることを発見した。フィラ社は中遠靴社、独特社の前身である中遠商務社、劉氏を被告として北京市西城区裁判所に提訴した。

一審の裁判所は、中遠靴社、中遠商務社、劉氏に対し、侵害行為を直ちに停止し、影響を排除するよう命令を下すとともに、中遠靴社、中遠商務社、劉氏は共同でフィラ会社の経済損失791万元と合理支出41万元を賠償する旨の判決を下した。

中遠靴社などの被告は一審の判決を不服として、北京知的財産裁判に控訴した。

二審の裁判所は商標法63条の規定に基づいて、侵害による利益の3倍に相当する損害賠償額を決定し、被告がフィラ社に対して、791万の経済損失と41万元の合理的な支出の総額832万元(約121万米ドル)を賠償すべき旨を決定した。

(商標法63条1項)

商標専用権権侵害の損害賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損失により決定する。実際の損失を確定することが困難なときは、侵害者が侵害により得た利益により決定することができる。権利者の損失又は侵害者が得た利益を確定することが困難なときは、当該商標の使用許諾料の倍数を参照して合理的に決定する。悪意により商標専用権を侵害し、情状が深刻なときは、上述の方法により決定した金額の1倍以上3倍以下(注1)で賠償額を決定することができる。

【主観的に「悪意」と「情状が深刻」の認定】

中遠靴社、独特社は同類製品の経営者として、フィラ社の登録商標の知名度を知りながら、イ号製品を生産し、ECサイト淘宝網、天猫Tmall、京東商城および自営の公式サイトで販売した商品に “FILA”商標に近いロゴを使用したとともに、その販売額が巨大であった。さらに、商標局は2010年7月19日に劉氏(独特社の法定代表者)の第7682295号“”がフィラ社の第G691003A号“”と類似している理由で、第7682295号“”商標には「衣類、帽子、靴」の登録出願を拒絶していた。つまり、中遠靴社、独特社及び劉氏はフィラ社が先行登録した“FILA”シリーズの商標を明らかに知っている。このような場合でも、中遠靴社、独特社及び劉氏は侵害品の製造販売を続けており、その 主観的悪意が明らかで、侵害の情状が深刻なので、裁判所は権利侵害による利益の 3 倍に 応じて賠償額を決定したことになる。

(注1)新商標法(2019 年 11 月 1 日から施行)により、商標法 63 条の懲罰的賠償額 の上限が 3 倍から 5 倍に引き上げられた。