【判旨】  

本件商標に係る特許庁の取消2018-670040号事件について商標法第50条第1項に係る判断は誤りであるとして,請求を認容した事案である。

 

事案の概要

 

1 特許庁における手続の経緯等  

⑴ 原告は,以下の商標(以下「本件商標」という。)に係る国際登録第1217328号の商標権者である。  

⑵ 被告は,平成30年10月5日,特許庁に対し,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件商標の指定商品中,第21類「Utensils and containers for household or kitchen use; brushes(except paintbrushes); bottles; glasses (receptacles)」について本件商標の使用をした事実が存在しないとして,商標法50条第1項に基づき商標登録の取消しを求めて審判請求(以下「本件請求」という。)をした。本件請求の登録日は平成30年10月19日である。  

⑶ 特許庁は,平成31年2月4日,「国際登録第1217328号商標の指定商品及び指定役務中,第21類「Utensils and containers for household or kitchen use; brushes (except paintbrushes); bottles; glasses(receptacles)」についての商標登録を取り消す。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決をし,その謄本は,平成31年2月7日に原告宛てに発送して送達された。原告(被請求人)のため出訴期間として90日が附加された。  

⑷ 原告は,令和元年6月5日,審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。

 

【本件商標】

 

 

争点

 

本件商標が,第50条第1項に該当するか否か(特に使用に係る商標権者の主観について。)。

 

判旨抜粋

 

証拠番号等は,適宜省略する。  

1 証拠によれば,以下の事実を認定することができる。  

⑴ ランジュビオは,フランスに在住する日本人Aが運営するオンラインショップであり,日本語で運営され,日本向けに商品販売を行っている。  

⑵ Aは,氏名のアルファベット表記としてAを用いている。  

⑶ 原告は,Aに対し,2013年(平成25年)から,本件商標を付した瓶やスパチュラ(化粧品や料理に用いる「へら」)を含むさまざまな製品を販売してきた。この販売に当たり,原告は,A がランジュビオを運営していること及びランジュビオが上記製品を日本で消費者向けに販売していることを認識していた。  

⑷ 本件要証期間中の2016年(平成28年)3月1日,原告はプラスチック製の瓶及びガラス製の容器をAに販売した。  

⑸ 本件要証期間中の同年2月から2018年(平成30年)8月までの間のランジュビオのウェブページには,原告製品である瓶やガラス製容器が販売商品として掲載され,日本円で価格が表示されている。  

⑸ 本件要証期間中の同年2月から2018年(平成30年)8月までの間のランジュビオのウェブページには,原告製品である瓶やガラス製容器が販売商品として掲載され,日本円で価格が表示されている。  

⑹ 本件要証期間中の2016年3月のランジュビオのウェブページには,原告製品であるスパチュラが販売商品として掲載され,用途の一つとして「お料理に」と記載され,日本円で価格が表示されている。  

⑺ 原告が販売する製品の本体又は包装には,本件商標が直接表示されるか,本件商標を表示したタグ又はラベルが付されるかしている。  

2 上記1の各事実を総合すると,原告は,ランジュビオに対し,日本において消費者に販売されることを認識しつつ本件商標を付して使用立証対象商品1を譲渡し,ランジュビオは,本件要証期間中に,本件商標を付した状態で日本の消費者に対して本件使用対象商品を譲渡した事実を推認することができるし,少なくとも,ランジュビオが譲渡のための展示をしたことは明らかである。  

かかる事実によれば,本件商標は,本件要証期間内に,商標権者である原告によって,日本国内で,使用立証対象商品に,使用されたものと評価することができる。  

3 被告の主張について  

⑴ 被告は,商標権者が商標の使用をしたというためには,商標権者が,登録商標を付した商品の譲受人が日本国内でこれを販売することを単に事実として認識していただけでは足りず,少なくとも商標権者が,第三者と締結する販売代理店契約等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売することを契約上認識していることが必要である旨主張する。  

しかしながら,商標権者が,日本国内で販売されることを認識しつつ商標を付した商品を譲渡し,実際に,その商標が付されたまま当該商品が日本国内で販売されたのであれば,日本国内における上記商標の使用(商標を付した商品の譲渡)は,商標権者の意思に基づく「使用」といえるから,それ以上に,被告のいう「契約上」の「認識」なるものを要求する根拠はないというべきである。したがって,被告の主張は失当である。  

⑵ 被告は,原告による上記1の各事実の証明は不十分である旨主張するが,かかる主張を受けて原告が補充的に行った立証の内容を加味すれば,証明が十分になされたといえる。  

⑶ したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。

 

解説

 

 本件は,商標権に係る審決取消訴訟である。特許庁は,本件商標について,商標法50条1項2にもとづいて取消審決をおこなったものであるが,裁判所は当該判断を否定した。なお,審判において原告(本件商標権者)は,何ら主張を行わなかったようである。  

 裁判所は,本件商標が付された商品がAに販売され,当該Aの運営するファンジュビオが日本向けに当該商品を販売していること及びこのことを原告が認識していることを認定した上で,「原告は,ランジュビオに対し,日本において消費者に販売されることを認識しつつ本件商標を付して使用立証対象商品を譲渡し,ランジュビオは,本件要証期間中に,本件商標を付した状態で日本の消費者に対して本件使用対象商品を譲渡した事実を推認することができるし,少なくとも,ランジュビオが譲渡のための展示をしたことは明らか」であるとして,商標法第50条第1項にいう使用があったと認定した。  

 これに対して,被告は,同法第50条第1項の使用には,「第三者が商標権者を代理して日本国内で販売することを契約上認識していることが必要」であると主張したが,裁判所は,「商標権者が,日本国内で販売されることを認識しつつ商標を付した商品を譲渡し,実際に,その商標が付されたまま当該商品が日本国内で販売されたのであれば,日本国内における上記商標の使用(商標を付した商品の譲渡)は,商標権者の意思に基づく『使用』といえる」と判断して,被告の主張を排斥した。  

本件において裁判所は,商標法第50条第1項の使用の主観的要件を判断してものであり,実務上参考になると思われる