専利侵害の有無の判断は、現行の専利権侵害判断要点及び裁判所の実務によると、被疑侵害品の特徴と逐一対比するよう、原則的にまずは請求の範囲(請求項)の特徴を分ける。分ける原則は、独立して特定の機能を実現でき、特定の結果を得ることができる特徴を対比ユニットとすることで、第一段階の「文言侵害」を判断した後、文言侵害に該当しないと判定した技術的特徴について、第二段階の「均等論の適用」の判断に進める。均等論の適用を判断する段階において、原則的にいわゆる「三者同一性テスト(triple identity test)」を採用している。つまり、請求項において文言侵害に該当しない各技術的特徴の「技術手段、機能、結果」を分析し、それと被疑侵害品の対応する技術手段及びこれにより生じる機能と結果を逐一対比し、三者が「実質的に同一」である時に初めて均等論の適用が成立すると認定することができるものである。また、もう一つの採用可能な判断手法は「非実質的相違テスト(insubstantial difference test)」であり、即ち、係争専利の請求項の技術的特徴と被疑侵害品の対応する技術的特徴との間の相違が非実質的変更(insubstantial change)である場合、又は対応する技術的特徴の置換が当業者が権利侵害行為の発生時にすでに知っているもので、かつ置換後に果たした機能が実質的に同一である場合である。この2つの手法の目的はいずれも他人がある専利技術を事実上採用したが、技術手段において非実質的変更をするだけで文言上で非侵害となり、容易に権利侵害の責任を免れることのないようにすることにある。

一般的に、機械又は電機分野は、その請求項の特徴から、独立して特定の機能を実現でき、特定の結果を得ることができる特徴を抽出してそれらを対比ユニットとすることがよりふさわしいため、通常三者同一性テストを均等論の適用の有無の判断に採用している。しかし、最近の最高裁判所の判決の一つに、一般的な三者同一性テストによる判断だけではやはり不足しており、被疑侵害者が提出した数々の証拠及び主張を十分取り調べて、請求項と被疑侵害品に実質的相違がないことが確実か否かを判断して初めて権利侵害を認定することができる、としている。当該事件の概要は以下のとおりである。

知的財産裁判所による2015年9月付けの103年(西暦2014年)度民専上字第29号「自転車のハブ」の特許侵害に関する判決では、「三者同一性テスト」を採用しただけでなく、「非実質的相違テスト」についても論及しており、いずれも均等論を適用して被疑侵害品が当該専利権を侵害しているとの結論を出した。その後、本件が上告され、最高裁判所は2017年4月24日付けの106年(西暦2017年)度台上字第585号判決で、知的財産裁判所の判決を破棄しており、その主な理由は以下のとおりである。

1.係争専利の独立請求項1における4つの技術的特徴は文言侵害に該当しないことから、両者の構造には確かに違いが見られる。

2.両者は構造上若干の相違により、作動形式の違いが生じたものである。特に、係争専利に基づき実施した製品は、「消費者が自転車に作用する時、作用する前に脚又は手でペダルを後方へ引いて回転させる必要があり、そうすることでペダルを回転させず、消費者により多くの不便と面倒を明らかにもたらす」。

3.被疑侵害者の主張:その製品は自身の実用新案M440895号を実施したもので、経済部訴願審議委員会が係争専利とM440895号の実用新案は異なるものであると指摘済みである。(註:被疑侵害者の実用新案権M440895号を調べたところ、本件専利権者が係争専利を先行技術として無効審判を請求したことがあったが、経済部訴願審議委員会と知的財産裁判所はいずれも実用新案M440895号と係争特許は異なり、進歩性を有すると判断していた。)

最高裁判所は、以上の3点は両者が対応する技術的特徴の技術手段、機能及び結果において確実に同じで実質的相違がないかに関しており、十分な取調べをすべきであると判断した。しかし原裁判所では両者はいずれも凸輪又は類似する原理の運用であることだけを理由にして、両者は実質的に同じ方法を採用し、実質的に同じ機能を発揮し、実質的に同じ結果を生じるものであると認定したが、当業者が確かに両者の相違点を容易に想到することができ、かつ容易に技術的特徴を置き換えることができるか否かについては、まだ明確にはされていない。

上記の3.については、理論上、被疑侵害者が自身の専利を実施しても権利侵害に該当する可能性があり(つまり、その専利は他人の専利技術を利用した「再発明」である)、専利権侵害の対比は依然として係争専利の請求項の特徴と被疑侵害者が製造した「製品」について行うべきで、被疑侵害品が別の専利を実施したか否かについては別問題である。しかしながら、最高裁判所は、被疑侵害品が本当に「別の専利」を実施しており、当該「別の専利」はすでに同裁判所により当業者の立場に基づき係争専利の技術と異なると認定されている場合、実用新案第M440895号の無効審判請求不成立(維持審決)と本件専利権侵害事件は、形式上関連のない事件であるが、やはり事実面においても矛盾が生じるかもしれないことを懸念している可能性がある。技術面については、消費者が最終的に使用する際の自転車の操作方法が異なることは、「三者同一性テスト」に基づいて判断した結論に影響するとは限らない。なぜなら、係争専利商品と侵害被疑侵害物とのエンドユーザーの操作方法の相違は、請求項に記載された技術的特徴と被疑侵害品の対応する技術的特徴により直接もたらされたものとは限らないからである。

本件において、最高裁判所は原判決を破棄し知財裁判所に差し戻し、知財裁判所へ被疑侵害者が提出した主張と証拠について「全面」調査した上で、当業者の角度から容易に置き換えることができるか否かを判断して、実質的相違の有無を決めるよう命じた。知財産裁判所が差し戻し審で上述した見解にどう対応し、適切な調査と判断を行うか否かについては、観察が待たれるところである。