2017年1月18日付けで総統により公布された専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当、以下「新専利法」という)におけるグレースピリオド(新規性喪失の例外期間)に関する規定の改正条文は、同年5月1日から施行され、5月1日以降の新規出願に適用された。グレースピリオド関連規定の改正に伴い、専利法施行規則の関連規定の改正条文も同年5月1日から施行された。

一、改正前の規定

改正前の専利法(以下「旧専利法」という)の規定により、特許出願、実用新案登録出願又は意匠登録出願に際しては、その他の法定の専利要件のほか、出願された発明又は実用新案はさらに専利法第22条(特許及び実用新案に適用)又は第122条(意匠に適用)に記載されている新規性及び進歩性の要件を満たさなければならない。上記の旧専利法の規定は以下のとおりである。

22条(旧専利法)

産業上利用することができる発明は、次の各号のいずれかにも該当しない場合、本法により出願し、特許を受けることができる。

一、出願前に既に刊行物に記載されたもの。

二、出願前に既に公然実施されたもの。

三、出願前に既に公然知られたもの。

発明が前項各号のいずれにも該当しないが、それが属する技術分野における通常の知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成できる場合、依然として特許を受けることができない。

出願人は次の各号のいずれかに該当し、かつその事実の発生後6ヶ月以内に出願した場合、当該事実は第1項各号又は前項にいう特許を受けることができない事情に該当しないものとする。

一、実験のために公開されたもの。

二、刊行物に発表されたもの。

三、政府が主催又は認可した展覧会で展示されたもの。

四、その意に反して漏洩したもの。

出願人が前項第1号ないし第3号の事由を主張する場合、出願時にその事実及び事実が生じた年月日を明記し、かつ専利主務官庁が指定した期間内に証明書類を提出しなければならない。

122条(旧専利法)

産業上利用することができる意匠は、次の各号のいずれにも該当しない場合、本法により出願し、意匠登録を受けることができる。

一、出願前に同一又は類似の意匠が既に刊行物に記載されたもの。

二、出願前に同一又は類似の意匠が既に公然実施されたもの。

三、出願前に既に公然知られたもの。

意匠が前項各号のいずれにも該当しないが、それが属する意匠分野における通常の知識を有する者が出願前の従来意匠に基づいて容易に思いつく場合、依然として意匠登録を受けることができない。

出願人が次の各号のいずれかに該当し、かつその事実の発生後6ヶ月以内に出願した場合、当該事実は第1項各号又は前項にいう意匠登録を受けることができない事情に該当しないものとする。

一、刊行物に発表されたため。

二、政府が主催又は認可した展覧会で展示されたもの。

三、その意に反して漏洩したもの。

出願人が前項第1号ないし第2号の事由を主張する場合、出願時にその事実及び事実が生じた年月日を明記し、かつ専利主務官庁が指定した期間内に証明書類を提出しなければならない。

二、改正後の規定及びその施行

2017年1月18日付けで公布された新専利法におけるグレースピリオドに関する規定の改正条文は、同年5月1日以降の新規出願に適用された。上記のグレースピリオド関連規定の改正ポイントは以下のとおりである。

1.発明及び実用新案のグレースピリオドが「出願日前6ヶ月以内」から「出願日前12ヶ月以内」に延長された。(新専利法第22条第3項)

旧専利法の規定により、実験のための公開(特許及び実用新案のみに適用)、刊行物発表、政府主催、政府認可の展覧会における展示又は出願人の意に反する漏洩のいずかに該当する場合、専利出願人は法により新規性及び進歩性のグレースピリオドを主張することができるが、専利出願は上記の事実の発生後6ヶ月以内に出願しなければならず、さもなければグレースピリオドを主張することはできない。

改正後の規定により、特許出願及び実用新案登録出願のグレースピリオドは「グレースピリオド主張の根拠となる事実の発生後12ヶ月以内に出願する」(旧法では6ヶ月以内に出願する)と改正された。なお、意匠登録出願のグレースピリオドは旧法のまま維持され、依然として「グレースピリオド主張の根拠となる事実の発生後6ヶ月以内に出願しなければならない」ものとする。

2.グレースピリオドが適用される公開態様が緩和され、それに関わる公開方法について何らの制限もせず、出願人の意に反して公開されたものか否かを問わず、いずれも適用される。しかしながら、専利出願によって台湾又は外国で法により公報で行った公開は出願人の意によるものであるので、グレースピリオドの規定は適用されない。(新専利法第22条第3項及び第122条第3項)

旧専利法の規定により、法によりグレースピリオドを主張できる公開態様には(1)実験のための公開(特許及び実用新案のみに適用)、(2)刊行物発表、(3)政府主催、政府認可の展覧会における展示又は(4)出願人の意に反する漏洩が含まれる。

企業や学術機関などが商業又は学術活動の必要に応じて専利出願より前にすでに多様な態様によってその発明を公開する可能性があるため、米国、日本及び韓国の関連法令を参考にして旧法のグレースピリオドに関する主張事由(上述のとおり)を緩和することにした。改正後の規定により、「出願人の意によって又は反して公開された事実」があった場合、出願人は法によりグレースピリオドを主張することができる。しかしながら、改正後の第22条第4項及び第122条第4項の規定により、専利出願によって台湾又は外国で法により公報で行った公開は出願人の意によるものである場合、グレースピリオドの規定は適用されない。今回の改正説明では以下のポイントが挙げられている。

(1)「出願人の意による公開」とは、その公開が出願人の意又は行為に起因したものであるが、出願人自らによる公開とは限らないことを指す。よって、出願人(実際の出願人又はその元権利者を含む)が自ら公開し又は他人による公開に同意する場合はいずれも含まれる。これに応じて、改正後の新専利法施行規則第15条及び第48条において、相続、譲受、雇用又は出資関係によって専利出願権を取得した者は、その被相続人、譲渡人、被雇用者又は被招聘者による出願前の公開の行為について、改正後の第22条第3及び4項又は第122条第3及び4項の規定を適用する、とそれぞれ明文で定められている。

(2)「意に反する公開」とは、出願人の意によればその専利出願に係る技術内容を公開する意向がないにもかかわらず、公開されたことを指す。専利出願に係る技術内容が他人に剽窃されて公開されたことは意に反する公開に該当する。また、誤認又は不注意で公開されたことも意に反する公開に該当する。例えば、出願人がその情報開示を受ける側が秘密保持義務を負うと誤認したが、この認知は事実に反する。また、例えば、出願人が公開する意向がないにもかかわらず、その雇用又は委任をした人の誤り又は不注意で公開されたことも意に反する公開に該当する。

(3)出願人が出願した専利技術の内容が台湾又は外国の別件の専利出願���見られる場合、当該別件の専利出願が専利公開公報又は専利公報での掲載によって公開されたことは、出願人が法により専利出願をしたことに起因するものである。上記した専利公報による公開の目的は、「他人が重複して研究開発費用を投入することを避け、又は公衆に専利権の範囲を明確に知悉させる」ためであり、グレースピリオドの主な旨(「出願人はその出願前にその発明を公開した場合、その発明の新規性及び進歩性が喪失しないものとして例外的に取り扱われ、専利権を受けることができなくなることを避けることができる」)と比べて、両者は規制行為及び制度の目的上のいずれにおいても異なるものであるため、グレースピリオドの適用対象外であることが分かる。ただし、公報による公開は不注意で、又は他人が出願人による創作内容を直接又は間接に知り得た後に、その同意を得ずに専利を出願したことによって公開された場合、当該公開公報を従来技術として引用することはできない。

3.手続要件が緩和され、出願人は出願と同時にグレースピリオドの適用を主張する旨の表明をする必要がなくなる。

旧専利法の規定により、グレースピリオドの適用を主張しようとする場合、出願人は出願時にこれを主張するとともに、その事実及び事実が生じた年月日を明記し、かつ専利主務官庁が指定した期間内に証明書類を提出しなければならないと定められている。出願人が主張を忘れたことでグレースピリオドの利益を喪失することのないよう、また技術革新の奨励と技術流通の早期実現という目的を果たすため、今回の改正では「出願人が出願と同時にグレースピリオドの適用を主張する旨の表明をしなければならない」との規定を削除することにより、出願人の利益を保障するものである。

4.専利権の制限–先使用権

旧専利法第59条第1項第3号(特許及び実用新案に適用)の規定により、専利権の効力は、以下の態様には及ばない。

「出願前、既に国内で実施されていたもの、又はその必要な準備を既に完了していたもの。ただし、専利出願人からその発明を知った後6ヶ月未満で、かつ専利出願人がその専利権を留保する旨の表明をした場合は、この限りでない。」

専利出願人が法によりグレースピリオドの利益を享有することを保障するため、専利法第59条第1項第3号の規定も併せて改正し、同号に規定する「6ヶ月」の期間を12ヶ月に改正することとする。なお、意匠登録出願に対しても、上記の期間を6ヶ月とすることを新設した(新専利法第142条)

上記した改正は、専利実務の国際調和活動をより一層推進すると同時に、専利出願人の利益保護をさらに強化することに寄与している。また、審査に資するため、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は2017年4月28日付けで関連する審査基準を公表した。