日台双方は2014年11月20日に「台日専利程序上生物材料寄存相互合作備忘錄」(「日台における特許手続き上の生物材料寄託における相互協力に関する覚書」)を交わし、両者の協力を通じて、日台双方の特許出願人が日本と台湾で重複寄託する必要がないよう定めた。日台の生物材料寄託協力の枠組みを実施するため、智慧財産局(※台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当)は既に2015年5月14日に「台日専利程序上生物材料寄存相互合作作業要点」(「日台における特許手続き上の生物材料寄託における相互協力に関する作業要点」)草案(以下、「作業要点草案」という)を公布している。

我が国はブダペスト条約の締結国ではなく、外国の寄託機関との間に相互承認がない。「専利法」(※日本の特許法、実用新案法 意匠法に相当)第27条には、生物材料に係る発明特許に関して、当該生物材料が、それが属する技術分野の通常知識を有する者によって容易に入手できる場合を除き、出願人は我が国(台湾)において当該生物材料を遅くとも出願日までに財団法人食品工業発展研究所の生物資源保存及び研究センターに寄託しなければならない、と規定されている。同条には、これとは別に、「特許出願前に既に特許主務官庁が認可した外国の寄託機関に寄託している場合、『遅くとも出願日までに国内(台湾内)で寄託しなければならない』とする制限を受けない」と規定されている。したがって、たとえ生物材料が出願前に既にブダペスト条約の国際寄託機関に寄託されている場合でも、我が国の寄託機関に寄託して、はじめて、専利法の規定に合致する。

「生物材料を国内で寄託しなければならない」とする規定について、専利法第27条第5項には除外規定が設けられており、「出願人が中華民国(台湾)と寄託の効力を相互に承認する外国が指定するその国内の寄託機関に寄託し、且つ規定する期間内に当該寄託機関が発行する証明書類を提出する場合には、『国内(台湾内)で寄託しなければならない』とする制限を受けない」と規定されている。我が国が日本と2014年11月20日に覚書を交わして、日台における重複寄託の免除を定めた後、智慧財産局は既に2015年5月14に「作業要点草案」を公布しており、当該草案の重点となる規定には以下のものが含まれる。(1)日台が協力を通じて、寄託効力を互いに承認する範囲及び双方が現在指定している寄託機関の名称を明確に規定、(2)指定寄託機関が分譲を提供することができないため、新たに提供するための手続き、新たに提供する対象、原寄託日を寄託日とすることのできる要件、及び、例外的に新たに提供することのできない状況、(3)生物材料為輸出入之限制之要件、(4)指定寄託機関の資格、(5)指定寄託機関が任務執行を停止するとき、関連する主務官庁が確実に生物材料の移管を実施し並びに関連措置を講じなければならない、(6)指定寄託機関が寄託を受理すべき種類の生物材料について受理を拒んだときの、関連する主務官庁の処理、(7)生物材料の寄託申請、再提供手続き及び寄託した生物材料は取り下げることができない、(8)寄託機関が生物材料寄託につき拒絶及び受理する事由、(9)指定寄託機関の生物材料寄託に係る保存期間及び機密保持に対する規定、及び、(10)生物材料分譲の資格及び異なる資格で分譲を申請する者の分讓手続き。

前述の作業要点実施後、日台双方の生物材料に関する発明の特許出願人は当該要点の規定によって日本と台湾で重複して寄託する必要がなくなる。