[概要]

外国法人を親会社に持つ米国子会社は、親会社が米国雇用法による責任を負うことがないように注意すべきである。通常の場合、親会社と子会社間には共有資産があり、取締役の兼任が見られるが、親会社と子会社は、親会社を保護するための対策を講じ、責任を完全に回避できないような状況では、子会社だけに責任が生じるようにすべきである。Middlebrooks対Teva Pharmaceuticals USA, Inc.事件(2018 U.S. Dist. LEXIS 18185 (E.D. Pa. 2018))の判決は、教訓的判例と言えよう。

本Middlebrooks事件における争点は、Teva Pharmaceutical Industries Limited(「Teva Israel」)が、同社とTeva Pharmaceuticals USA, Inc.(「Teva USA」)の両社に対して提起された訴訟の当事者として留まるべきか否かという点であった。Stephen Middlebrooks(「Middlebrooks」)は、Teva USAの従業員であり、Teva USAから給与を受け取っていた。Middlebrooksは、解雇された後、連邦法およびペンシルバニア州人権関係法(Pennsylvania Human Rights Relations Act)に基づく年齢および出身国(すなわちアメリカ)による差別を理由にTeva USAとTeva Israelの両社を訴えた。Middlebrooksは、Teva USAに10年以上勤務する間に複数の地位に就いてきたが、解雇時点ではノース・アメリカン・ファシリティーズ・マネジメント担当のシニア・ディレクターの地位に就いていた。本職務地位におけるMiddlebrooksの上司は、ファシリティーズ・マネジメントのグローバル・シニア・ディレクターで、イスラエルを拠点地とするTeva Israelに雇用された管理職者であった。

法的論点: Teva Israelが本件訴訟の被告当事者とみなされるには、Teva USAとTeva Israelは「単一雇用主(single employer)」とみなされたのか、または「共同雇用主(joint employer)」とみなされたのか?

両社は、Eメールアドレスを共有し、前述のグローバル・シニア・ディレクターは、Teva USAの人事部門の助言を受けていた。しかし、各社は、個別の法人形態を持ち、各社で取締役会議を行い、議事録や決算書など企業関連書類を維持・保管し、別々の本部も設けていた。したがって、「Teva USAとTeva Israelは、親会社と子会社の事業面で運営上または財政上さほど関わり合っていなかったが、両社は、実質的に連結しており、本件の争点であった差別行為に対しては連帯責任を負っていたため」、裁判所は、各社を「単一雇用主(single employer)」とはみなさなかった。イスラエルのグローバル・シニア・ディレクターがMiddlebrooksを直接監督し、規律を守らせ、毎年中間期の人事考査を行い、業績改善プランを渡していた。さらに、Middlebrooksに降格を伝え、理由の説明と共に彼を解雇したのも同グローバル・シニア・ディレクターであった。したがって裁判所は、Teva IsraelがMiddlebrooksの雇用に対して重大な支配力を行使していたため、Teva IsraelとTeva USAは共同雇用主であるから、Teva Israelは本訴訟事件の被告当事者であると判示した。

本件から学べること: (外国の)親会社が責任を負わないようにリスクを回避するには、親会社の管理職者が子会社の従業員に対して重大な支配力を行使すべきではない。親会社と子会社は、各従業員とその直属の上司の職務上の地位を明確に示す権限体制と組織図を作成しておくべきである。会社は、管理職者であるか否かを問わず、各従業員の職務内容を記載する際に、必ずその上司が誰であるかも記載すべきである。各社でパーフォーマンス・マネジメント制度(The performance management system)を設け、上司が権限を行使したり、人事考課を行ったり、または規律を正したりする際に依拠する明確な体制を構築すべきである。親会社の管理職者が子会社の従業員の人事考課、制裁措置または解雇について意見を述べることも可能だが、その場合、子会社は、かかる決定事項について助言し、最終的判断をした者が誰であったかを記録し、子会社の管理職者は、かかる最終結果を書面にして署名した上で従業員に手渡すべきである。