2016年11月末、中国共産党中央委員会(中国共産党の最高指導機関で、以下はCCCPCとする)と国務院(日本の内閣に相当する)の共同で、財産権の保護に関する新たな指導方針を発表した(http://www.gov.cn/zhengce/2016-11/27/content_5138533.htm)。そのうち、知的財産権の保護に関する内容も含まれている。

その後、前記指導方針に基づいて、最高人民法院(以下はSPCとする)と国家知識産権局(以下はSIPOとする)は司法領域、及び、専利出願審査、無効審判、行政処理の領域において、中央政府の方針に従って、関連する措置を取るという声明をそれぞれ発表た。

全体的な情報 前記指導方針は、CCCPCと国務院が意見を広く募集した上でまとめたものであり、私有財産にも国有財産と同様な保護を与えることで、多くの富裕層が資産を海外に移転することに歯止めをかけることを目的としている。 前記指導方針及び声明には、中国政府が知的財産権の保護により力を入れ、具体的な措置を取ろうとする明確なメッセージが含まれている。例えば、商標権侵害に既に適用された賞罰的損害賠償が専利法と著作権法にも取り入れる問題について、当局は既に意見が統一しているように見える。近いうちに、SPCとSIPOの措置が具体化され、実務に十分な影響を与えるだろう。

新たな政策又は措置 以下は、既に実施され、又は、間もなく実施される幾つかの新たな政策又は措置である。これらなの政策又は措置の実施によって、権利者及び関係者に影響を与えるだろう。

(1)専利権及び著作権の故意侵害に対する懲罰的損害賠償 懲罰的損害賠償が既に商標法に取り入れられ、同じ目的で、専利法の改正案にも反映された。前記指導方針の文言によると、懲罰的損害賠償が専利法及び著作権法にも取り入れられるべきであることを示しているように見える。 注意すべき点としては、特に専利領域において、中国の権利者が益々自信を持って外国企業に挑戦しているので、外国企業にとって、懲罰的損害賠償が諸刃の剣である。

(2)知的財産巡回法廷 SPCの声明において、北京市、上海市、広州市に設立された専門的な知的財産法院をベースにし、知的財産巡回法廷の設立の可能性を探ろうとしていると示している。広東省全域(深セン市を除く)を管轄する広州知的財産法院にとって、これは特に重要である。 また、SPCの声明には、一つ又は複数の知的財産高級人民法院の設立も模索することを繰り返して強調した。

(3)口頭審理無しの行政処理プロセス 現行のSIPOの規定によると、全ての行政処理プロセスについて、口頭審理が必要である。対象専利が実用新案又は意匠であり、且つ、権利者が肯定的な専利権評価レポートを提出する場合、地方の知的財産局が口頭審理なく、決定を下すことが可能になるかもしれない。これは、よりスピーディになることを示している。 SIPOは、地方に設立された6つの知的財産権保護ハイスピード処理センターが1ヶ月以内に行政処理の決定を下すことができると宣言した(これらのセンターが処理したケースは殆ど意匠に関わるのもである)

(4)信用度のブラックリスト これは、行政処理プロセスにおいて、地方の知的財産局の証拠収集の権力に関わる。SIPOの措置としては、地方の知的財産局による証拠収集を抵抗する場合、その被疑侵害者を政府の信用度のブラックリストに入れてもよいと考えている。被疑侵害者にプレッシャーを与える措置であることが期待できる。

(5)エキスパートバンク これは、SIPOが行政処理の能力を高めようと努力していることを示している。 地方の知的財産局のスタッフには、侵害分析に関する専門知識が欠けていることは行政処理の一つの弱点である。SIPOが既に外部専門家の募集をスタートさせ、現地の実務者をエキスパートバンクに取り入れることをはじめた。実際の案件を処理する際、エキスパートバンクからメンバーとして登用し、決定を下す前にエキスパートの意見を伺うことができる。これから、SIPOはこれらの努力を更に強化することになる。

(6)行政処理から専利審査へのフィードバック SIPOは、専利権者が以前の権利侵害紛争及び無効審判の高い勝率に関する情報を審査部門に提供することで、審査部門が当該専利権者による出願又は無効審判の審理を加速させることができるという措置を提案している。 SIPOは、当該措置によって、行政処理と、出願審査/無効審判とのうまい連携を狙っている。 当該措置をどのように実現するか更に詳しく理解する必要がある。

(7)専利審査/無効審判から行政処理へのフィードバック これも、行政処理と、出願審査/無効審判とをうまく連携するSIPOの目標に関わる。 これは、行政処理の際、専利の請求項をどのようにより正確に解釈するかについて、当該専利を審理した審査官と審判官に意見を伺うことを意味している。