【出典:中国知識産権情報網】

1996年6月28日に、中国国家工商行政管理部門は、MARKLINE社の化粧品などの商品を指定して使用する「MATIS」商標の登録を許可した。2012年3月にMARKLINE社は、ネットショッピングサイトの淘宝網(タオバオ)に「MATIS」ブランドのシリーズ化粧品の模倣品を販売するショップが多数あることを発見し、弁護士を通じて淘宝に警告を出し、淘宝網上の全ての「MATIS」の商標権侵害に係る化粧品のリンクの削除と権利侵害に関わるショップの閉鎖を求めた。その後、MARKLINE社は、淘宝網上の「魅力匙正品(MATIS正規品)」及びその他のショップ内の侵害商品のリンクを全て削除し且つ侵害に関わるショップを閉鎖することを求める書簡を5回にわたって送った。

淘宝は、MARKLINE社の警告書で指摘された「淘宝を通じて購入し、模倣品と鑑定された商品」のリンク情報に対してチェックを行い、削除処理をしたが、その他のリンクについては、警告を受けた商品が侵害に該当すると判断できるような基礎的な証明資料をMARKLINE社が提供しなかったことから、商品が商標権侵害に該当するかどうかを判断できなかったため、暫く未処理とした。2015年1月に淘宝は「魅力匙正品」ショップを一時的に閉鎖し、2015年2月以降は、MARKLINE社から淘宝へ「魅力匙正品」ショップに関する警告はなかった。

ところが、MARKLINE社は、淘宝が監督管理義務を怠ってMARKLINE社に経済損失を与えたため、「魅力匙正品」ショップとともに侵害責任を負うべきであると主張し、「魅力匙正品」ショップの代表者と淘宝に対し経済損失と合理的な支出の計100万人民元の賠償金の支払いを求めて、法院に訴訟を提起した。

裁判で、淘宝は、既に侵害に係るリンクを削除したので責任を負う必要はなく、しかも、淘宝は単なるインターネット取引プラットフォームであって、現在の法律では、インターネット取引プラットフォームに対して販売商品について実質審査の実施義務は課されておらず、たとえ「魅力匙正品」ショップの代表者に侵害行為があったとしても、原告の警告を受けとってから、淘宝は既に積極的に侵害に係るショップを閉鎖しており、故意・過失はないため、関連する責任はないと主張した。

北京市海澱区人民法院(以下、海澱法院という)は一審で、MARKLINE社が提起した「魅力匙正品」ショップの代表者及び淘宝を被告とした商標権侵害紛争事件に対して、淘宝はネットワークサービスの提供者として既に合理的な審査義務を果たしており、主観的過失はないため、侵害責任を負うものでないとして、MARKLINE社の請求を棄却する判決を下した。

海澱法院は審理の結果、「淘宝は警告書に基づいて警告を受けた商品のリンクを既に削除し、MARKLINE社に「魅力匙正品」ショップの代表者の身分などの資料を提供した。それから2015年2月まで、MARKLINE社が淘宝に「魅力匙正品」ショップの代表者が運営するショップに関する警告を出していないことは、淘宝の処理が一定の効果を奏しており、淘宝の審査義務の履行方法及び監督管理措置の実施方法や程度が、MARKLINE社の権利保護方法や程度に相応するものであることを表している。さらに、現有の証拠からは、「魅力匙正品」ショップの代表者による侵害に係る商品の販売行為に、明らかに知りまたは知り得たはずという主観的状態が存在していたと証明することができないため、淘宝には「魅力匙正品」ショップの代表者が侵害に係る商品を販売する行為に対して主観的故意または過失はなく、共同不法行為の民事責任を負うものでない」と判断した。海澱法院はこの見解に基づき一審判決を下した。

裁判官は、「ネットワークサービス提供者は、ネットワークユーザーの侵害行為に対して、一般的に予見し回避する能力がないため、ネットワークユーザーの侵害行為で賠償責任を当然負わなければならないのではない。ネットワークサービス提供者が、ネットワークユーザーの侵害行為を明らかに知りまたは知り得たにもかかわらず、依然としてネットワークユーザーのためにネットワークサービスを提供し又は侵害行為の発生を回避するための適切な措置を講じなかった場合にのみ、ネットワークユーザーと共同不法行為の責任を負わなければならない。

この事件において、淘宝は既に「魅力匙正品」ショップの代表者に対して身分認証を行い、さらに淘宝規則に、取引情報発信者は違法な情報を発信してはならないとの規定を盛り込んだ。同時に、侵害に係る商品は専門美容用品に属し、関連公衆にとっては模倣品であるかどうか自明ではなく、淘宝はMARKLINE社の警告を受け取った後、侵害商品のリンクを積極的に削除するといった措置をすぐに講じており、主観的過失はなく、合理的な審査義務を既に果たしているため、権利侵害の責任を負うものではない」との見解を示した。

現在、この事件は上訴中であり、引き続き動向が注目される。