1 事案の概要

 

本件は、京都府茶協同組合が、「Ujicha」の文字を標準文字で表して構成される商標について第30類について団体商標登録出願として出願したところ、3条1項3号で拒絶され、拒絶査定不服審判でも3条1項3号該当、3条2項非該当で請求不成立審決を受けたため、審決の取消しが求められた事例である。

 

2 本願商標

 

「Ujicha」  

指定商品(補正後):  

第30類「京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶,京都府・奈良県・滋賀県・三重5県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した菓子・・・」

 

3 主な争点

 

商標法3条1項3号該当性  

商標法3条2項該当性

 

4 裁判所の判断

 

第4 当裁判所の判断  

1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について  

⑴ 本願商標の構成  

 本願商標は,「Ujicha」の文字を標準文字で表して構成されるものであり,我が国におけるローマ字の普及状況に鑑みれば,需要者において,「宇治茶」の語の表音を欧文字で表記したものと容易に認識できると解される。  

⑵ 本願商標の商標法3条1項3号該当性について  

 広辞苑第7版(乙3,2018年1月12日発行)によれば,「宇治茶」は,「京都府宇治地方から産出する茶。室町時代から茶道で賞美。」であるとされ,「新茶業全書」(乙4,昭和63年10月1日発行),「茶道辞典」(乙5,昭和54年9月20日発行),「新・食品事典11 水・飲料」(乙6,1992年10月20日発行5 )といった書籍においても,「宇治茶」が,京都府宇治地方から産出する茶である旨の記載がある。  

 また,多数のウェブサイトにおいて,本願の指定商品又は関連する商品に関して,「宇治茶」,「UJICHA」,「Ujicha」,「Uji cha」,「UJI-CHA」あるいは「宇治」,「Uji」,「“Uji”」,「UJI」といった文字を包装に表示したものが掲載されている(乙7ないし29)。  

 そうすると,本願商標は,その指定商品との関係において,「京都府宇治地方で製造又は販売する茶」であることを認識,理解させるにすぎず,単に商品の産地,販売地,品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものであって,商標法3条1項3号に該当するものというべきである。  

2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について  

⑴ 商標法3条2項の趣旨  

 商標法3条2項は,同法3条1項3号ないし5号に該当する商標でも,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至ったときは,商標登録を受けることができる旨定める。これは,このような商標でも,特定の者がその業務に係る商品又は役務について使用した結果,その商品又は役務と密接に結びついて,自他識別力を有することがあるからである。  

このような自他識別力を取得するには,商品又は役務の主体が特定の者であることが商品又は役務の需要者の間で全国的に認識され,また,出願商標と使用商標は少なくとも実質的に同一であることを要すると解される。  

⑵ 使用による識別力の獲得について  

ア 原告は,本願商標の使用の事実を立証するものとして,原告の組合員(甲4)である株式会社伊藤久右衛門(以下「伊藤久右衛門」という。)の使用に係る甲1,2と,矢野園の使用に係る甲5,6を提出する。  

イ まず伊藤久右衛門の使用について判断すると,同社は,かぶせ茶,煎茶,ほうじ茶についてそれぞれティーバッグを販売しているところ(甲1),甲2は,そのうちかぶせ茶の包装について,中央上部に大きく「かぶせ茶」の横書きの記載があり,その下に「急須用ティーバッグ」,さらにその下に「UJICHA TEA BAG」と横書きで記載されており,煎茶やほうじ茶についても中央上部にそれぞれ茶の種類が記載されているものと推認される。  

 そうすると,本願商標「Ujicha」と甲2の表示は,その文字数や記載ぶりが大きく異なるものというべきであるから,両者が実質的に同一であると認めることはできない。  

 よって,伊藤久右衛門による甲2の表示については,商標法3条2項にいう使用がされたものとは認められない。  

ウ 次に,矢野園の使用については,同社は,その商品の包装の中央部に,煎茶については「産地直送 宇治蔵出し煎茶」の,玉露については「産地直送 宇治蔵出し玉露」の大きな縦書きの記載をし,その下部に横書きで「UJICHA」の記載をしているが,同包装には,原告との関連性を示す記載はない(甲5,6)。  

 このような記載では,原告固有の商標として表示しているのか,単なる産地表示や品質表示として表5 示しているのかが明らかとはいえず,当該表示に接する需要者が,本願商標について,原告又はその構成員固有の出所識別標識であると直ちに認識,理解するとはいえない。  

エ 甲7,8によれば,矢野園が包装に「UJICHA」の記載をした煎茶について,平成20年に東京に1万本,平成21年に金沢に1万本売り上げたことが認められるが,販売期間,累計の販売数量,売上金額,販売地域を裏付ける証拠はなく,原告の他の組合員に関しては,本願商標を付した指定商品の売上に関する証拠は提出されていないし,原告又はその組合員による本願商標を付した指定商品の市場占有率を裏付ける証拠もない。他方で,本願の指定商品又は関連する商品に関して,原告の組合員以外のウェブサイトにおいて,「UJICHA」(乙7,8,12,13),「Ujicha」(乙14),「Uji cha」(乙9),「UJI-CHA」(乙10,11)といった「宇治茶」の欧文字表記を包装に表示した商品が掲載されている。  

オ 以上を前提に検討すると,本願商標に通じる「宇治茶」は,前記1⑵のとおり,「京都府宇治地方で産出する茶」を指称する語として広く受け入れられ,もともと特定の主体と結びつき難いものである一方,原告の組合員である伊藤久右衛門による甲2の表示については,そもそも商標法3条2項にいう使用がされたものとは認められないし,矢野園による本願商標の使用態様も,原告固有の商標として表示しているのか,単なる産地表示や品質表示として表示しているのかが明らかとはいえない態様のものである。また,原告の組合員による本願商標を付した指定商品の販売期間,販売数量,累計の売上金額,販売地域,市場占有率等については,矢野園による平成20年及び平成21年の散発的な販売実績を除き,これを裏付ける証拠はなく,結局,原告又はその構成員による本願商標の使用状況は明らかでない。さらに,原告の組合員以外の者が,「UJICHA」,「Ujicha」,「Ujicha」,「UJI-CHA」といった「宇治茶」の欧文字表記を包装に表示した商品を販売しているという実情がある。  

 これらを総合すると,本願商標が,原告又はその構成員により使用をされた結果,需要者が原告又はその構成員の業務に係る商品であると全国的に認識されているとはいえず,本願商標は商標法3条2項の要件を具備しないというべきことは明らかである。  

⑶ 原告の主張について  

 原告は,地域団体商標として登録されるには,「その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」(商標法7条の2第1項)ことを要するから,その要件を充足する商標は,当然に,同法3条2項の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる」との要件を充足することになると主張する。  

 しかし,地域団体商標制度が,同法3条2項よりも緩和された要件で地域の名称及び商品・役務の名称からなる商標の登録を認めるもので,例えば,要求される周知性の程度が,同項に基づき登録を受ける場合に求められるより緩やかで足りる(全国的な周知性までは求められない。)と解されることに照らせば,原告の主張が採用できないことは明らかである。  

⑷ 小括  

以上によれば,本願商標は商標法3条2項の要件を具備しないとした本件審決の判断に誤りはない。」

 

5 検討

 

 判決を見る限り、原告は、商標法3条2項の適用を受けるために必要な証拠である、本願商標を付した指定商品の販売期間,販売数量,累計の売上金額,販売地域,市場占有率等を裏付ける証拠を提出していないようである。  

 これは、原告が、「地域団体商標として登録されるには,「その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」(商標法7条の2第1項)ことを要するから,その要件を充足する商標は,当然に,同法3条2項の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる」との要件を充足することになるという主張に賭けたからではないかと推測される。  

しかしながら、当該主張は、「地域団体商標制度が,同法3条2項よりも緩和された要件で地域の名称及び商品・役務の名称からなる商標の登録を認めるもので,例えば,要求される周知性の程度が,同項に基づき登録を受ける場合に求められるより緩やかで足りる(全国的な周知性までは求められない。)と解されることに照らせば,原告の主張が採用できないことは明らかである」として認められなかった