「高通」商標をめぐって、上海高通半導体有限公司(以下、「上海高通」という)と米高通公司(以下、「米クアルコム」という)との間で権利侵害及び不正競争に係る訴訟が、3年以上続いている。米クアルコムは上海高通の複数の商標に対して商標登録の取消しを請求していたが、最近、登録第4305050号商標の復審決定取消訴訟で最新の判決が出た。【判決番号:(2018)京行終850号】

北京市高級人民法院は、2018年5月9日に第4305050号の「高通」商標(以下、係争商標という)の復審決定の取消を求める行政訴訟で終審判決を下した。判決では「上海高通が提出した証拠は、コンピュータソフトウェアの設計、コンピュータソフトウェアの保守などのサービスにおいて係争商標が実際に取引上使用されたことを証明するに足るものでない」とされ、上海高通の上訴が棄却された。これにより係争商標は登録取消となった。

▓第4305050号「高通」の商標紛争の経緯

上海高通は1992年7月21日、電子及び通信設備、計測機器、文化オフィス機器、コンピュータソフトウェア・ハードウェア及び外部設備等の製品の技術開発、技術移転、技術コンサルティング、技術サービス及び販売などを主な事業範囲として設立された。

中国商標網のデータによると、係争商標は上海高通が2004年10月12日に商標局に登録出願をし、2008年3月28日にコンピュータソフトウェアの設計、科学的事項に関する研究などの第42類の役務を指定役務とした登録が許可された(上表参照)。

2013年8月12日に、米クアルコムは、係争商標が2010年8月から2013年8月までの期間(以下、「要証期間」という)継続して3年間使用が停止されたことを理由に、商標局に係争商標の登録取消しを請求した。審査を経て、商標局は2014年4月に米クアルコムによる係争商標の取消請求を棄却する決定を下した。

審査期間において、上海高通は、「要証期間」に係争商標を確かに使用したことを証明するために、商標局に同社の関連商標の登録状況、宣伝資料、製品の写真などの証拠を提出した。

米クアルコムは、商標局が下した決定を不服として、2014年5月に、「上海高通が提出した証拠は、「要証期間」において係争商標が指定役務に有効に取引上使用されたことを証明するに足るものでないため、係争商標の登録は取消すべきである」と主張して、商標評審委員会(以下、商評委という)に復審請求を提出した。

2015年12月22日に、商評委は、商評字[2015]第101767号復審決定書にて、係争商標のコンピュータソフトウェアの設計、コンピュータソフトウェアの保守などの役務(以下、「復審役務」という)についての登録は維持し、包装デザイン、インテリアデザインの二つの役務についての登録は取消しとする決定を下した。

米クアルコムは、商評委が下した決定を不服として、前記決定の取消を求めて、北京知識産権法院に行政訴訟を提起した。

上海高通は、一審の立証期間内に新しい証拠を提出しなかったが、その後、法院の許可を得て、一審の法廷審問後15日以内に、同社の新しい営業許可証、オフィスの写真、事務所の賃貸契約書などの企業の基本情報に関する書類及び同社の表彰歴、「上海高通」の社名が入ったソリューションサービスの紹介などの証拠を提出した。

米クアルコムは、「上海高通は正当な理由なく期限を過ぎてから証拠を提出し、しかも前記証拠は係争商標が未表示だったり、要証期間内のものではなかったり、或いは復審役務に使用されていなかったりするため、上海高通が要証期間において係争商標を復審役務に有効に使用したことを証明することができない」と主張した。

▓北京知識産権法院の判決

北京知識産権法院は、「上海高通が提出した証拠は、何れも係争商標が要証期間において復審役務に有効に取引上使用されたことを証明できない」として、前記復審決定を取消し、商評委に改めて決定を下すよう命じる一審判決を下した。

上海高通は北京知識産権法院の(2016)京73行初1672号一審行政判決を不服として、北京市高級人民法院に上訴し、法院は2018年2月8日に事件を受理した。

北京市高級人民法院は、「上海高通が商標の行政段階で提出した企業法人の営業許可証、企業名称変更事前許可通知書、上海高通の商標統計、上海高通の車体広告写真などの証拠は係争商標の使用状況とは関係がないため、係争商標が要証期間において復審役務に有効に使用されたことを証明することができない。上海高通が提出した証拠書類に何度も言及された「ソリューション」というサービスは、係争商標が使用を認められた第42類役務に属さないため、係争商標が要証期間において復審役務に有効に取引上使用されたことを証明できない。

また、上海高通の新しい営業許可証、オフィス写真、事務所の賃貸契約書等の企業の基本情報、同社の表彰歴などの証拠は、係争商標が未表示だったり、要証期間内のものではなかったり、或いは復審役務に使用されていなかったり、係争商標の使用とは関係がなく、しかも関連証拠は何れも上海高通が要証期間に、復審役務を他人のために提供したことを証明することができない。」とした。

つまり、北京市高級人民法院は、「事件の証拠は、上海高通が要証期間において係争商標を復審役務に有効に取引上使用したことの証明するに足るものでない」として、上海高通の上訴を棄却して、一審判決を維持した。すなわち、上海高通の係争商標は継続して3年以上の不使用により商標登録の取消が確定した。