米国が、国家安全保障を危うくする可能性のある外国投資に対する保護を強化する唯一の国であるわけではない。確かに、米国は最近、米国の国家安全保障に悪影響を及ぼすと対米外国投資委員会(CFIUS)が認めた場合に、大統領に対し、CFIUSを通じて外国投資を審査し、場合によっては阻止する権限を認める法律を強化した。他の政府もこれに倣い、センシティブ又は重要な産業、技術、インフラを含むと思われるビジネスに対する海外直接投資(FDI)を審査するためのCFIUSに類似した制度を採用又は強化しているのである。

 

EUにおいては、2019年3月5日に、EU加盟国に対しFDIの枠組みを規定する規則が採択された。この規制は、透明性、期限、機密情報の保護、司法上の救済に関して、FDIシステムを持つ加盟国が従う必要のある基本的な手続上の要件を定めている。欧州委員会は、EUの利害に関わるプロジェクトに影響を与える可能性のあるFDIについて、加盟国に対し意見を表明することもできるようになる。この新しい枠組みは、加盟国の制度と共存することになる。

ドイツは、既に2017年に、エネルギー、電気通信などの重要なインフラストラクチャーを審査の範囲に加えることで、制度を強化したが、2018年12月に、特定の産業に適用される基準を引き下げるために、FDI制度を改正した。

2018年末、フランスは、審査手続き対象範囲をサイバーセキュリティの研究開発、人工知能、ロボティクスなどの新しいセンシティブな分野にまで拡大するという政令を採択した。

2018年に英国政府は、ヒンクリー・ポイント原子力プロジェクトへの中国の投資に反応して、先進技術、軍民両用技術、国家インフラなどの国家安全保障上のリスクをもたらす分野におけるFDIを審査するためのホワイトペーパーを発表した。

FDI規制の要件は、アジア太平洋地域と中東で大きく異なる。

オーストラリアは、保護主義的なアプローチを取り、オーストラリアの不動産、農地、及びアグリビジネスの買収、並びにメディア、電気通信、輸送、防衛などのセンシティブ産業への投資に審査の焦点を当てている。

中国では、外国投資法が産業を「奨励」、「制限」又は「禁止」と指定している。例えば、メディア、天然資源、軍事分野においては、FDIは禁止されている。

日本では、政府は、軍事、航空宇宙、原子力などのセンシティブ産業や、電気、ガス、通信、放送などの重要インフラにおけるFDIを審査するであろう。

イスラエルは、2019年初頭に、特にテクノロジー企業への中国の投資に対抗するために、FDI審査制度を採用すると発表した。

多くの国々でFDIの規制が厳しくなるというグローバルな傾向は、国際的な取引を行う企業にとって新たな規制上の障害を生み出す。そのため、外国投資家は、そのような取引に先立ち、届出を慎重に考慮し、審査要件と手続きをチェックする必要がある。FDIの届出が必要又は推奨される場合、FDIの審査手続は国際的な取引の時期やその他の戦略的要素に影響を与える可能性があるため、外国投資家はできる限り早くに当局と接触を取るべきである。