1. 事案の概要

本事案は、マンション(主に居住用)の販売事業を行うA社が、マンションの仕入れ(「本件各課税仕入れ」)について、その課税仕入れの区分を「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(消費税法30条2項1号、「課税対応課税仕入れ」)として申告したところ、税務調査において、当該仕入れは「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」(同号、「共通対応課税仕入れ」)であるとして否認され、更正処分(「本件各更正処分」)が行われたという事案です。

同様の争点について、先行事例として、さいたま地判平成25年6月26日(税務訴訟資料263号順号12241)、東京地判令和元年10月11日(判例秘書・判例番号L07430401)等があるところ、先行事例ではいずれも納税者敗訴となっていたものが、東京地判令和2年9月3日(公刊物未搭載、平成30年(行ウ)559号、「本判決」)では納税者勝訴の判決となっています。

本稿では、速報として、本判決の概要について紹介します。

2. 本判決の概要

本判決は、結論としては「当裁判所は、本件各課税仕入れは専ら将来における不動産の転売のためにされたものとして課税対応課税仕入れに区分すべきものであり、その消費税額の全額が控除対象仕入税額となるため、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分はいずれも違法であるから、これらの取消しを求める原告の請求は認容すべきものと判断する。」として原告の請求を認容しています。

その理由として、まず、課税仕入れの用途区分に係る判断基準として、「当該課税仕入れがいかなる取引のために行われたものであるのかをその経済実態に即して適切に行うべき」として経済実態に即した判断を行うべきとしつつ、具体的には「課税仕入れ等の用途区分に係る判断は、当該課税仕入れ等を行った日(仕入日)を基準に、事業者が将来におけるどのような取引のために当該課税仕入れ等を行ったのかを認定して行うべきである。そして、かかる認定に当たっては、税負担の判断が事業者の恣意に左右されることのないよう、①当該事業者の事業内容・業務実態、②当該事業者における過去の同種の課税仕入れ等及びこれに対応して行われた取引の内容・状況、③当該課税仕入れ等と過去の同種の課税仕入れ等の異同など、仕入日に存在した客観的な諸事情に基づき認定するのが相当である」としています。

さらに本事案のように、将来におけるマンションの売却(課税資産の譲渡等)のために行われる仕入れである場合であって、かつ、当該マンションの売却までの間に賃料収入(その他の資産の譲渡等)が見込まれる事案においては、「一般に、事業者が課税仕入れ等を行う場合に、当該活動が本来得ることを目的としている収入(課税資産の譲渡等)のほかに、当該活動の過程で生じる他の収入(その他の資産の譲渡等)が見込まれることにより、当該課税仕入れ等が共通対応課税仕入れに区分されることとなるのか否かについては、一義的に解するのではなく、①他の収入が当該事業者の経済活動におけるどのような過程で得られ、その活動全体の中でどのように位置付けられているのか、②他の収入が見込まれることが、課税仕入れ等やこれに対応する取引にどのような影響を及ぼしているのか、③全体の収入の見込額のうちに他の収入の見込額が占める割合など、当該事業者が行う経済活動に関する個別の事情を踏まえ、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らし、他の収入が見込まれることをもって当該課税仕入れ等につき『その他の資産の譲渡等』にも要するものと評価することが相当といえるか否かを考慮して判断すべき」としています。

そして、本事案についてのあてはめでは、「原告が本件事業において仕入れた収益不動産を賃貸して得られる賃料収入は、当該収益不動産の販売を行うための手段としての賃貸から不可避的に生じる副産物として位置づけられるものであって、このことは、原告の会計処理における取扱いや、収益不動産の仕入れ及び販売の際に原告がどれだけ賃料収入を得られるかが考慮に入れられていないことからも裏付けられるものである。そして、原告が実際に得ている賃料収入も、販売収入と賃料収入の総和に対して3課税期間の平均で5%未満(販売収入のうち建物部分を仮に3割として、建物の販売収入と賃料収入の総和に占める割合を見ても、おおむね1割程度)にとどまっている。また、これらに関しては、直近3課税期間と本件各課税期間とで有意な差が見られない。これらの事実関係に照らせば、本件各仕入日に上記のような賃料収入が見込まれることをもって、本件各課税仕入れにつき『その他の資産の譲渡等』にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは、本件事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らしても、相当性を欠く」として、上記の結論を導いています。

3. まとめ

本判決は先行事例と判断基準を異にしていますが、経済実態に即して個別の事情を踏まえて判断することとしているため、類似事例において仮に本判決の判断基準が用いられたとしても事実関係が異なれば違う結論となり得るように思われます。先行事例と判断基準が異なることや国の主張と相当程度異なる判断が行われていることから、国から控訴が行われることが予想される事案ですので、控訴審判決の内容にも注目する必要があります。

なお、本稿のうち意見にわたる部分は著者の個人的見解であり、著者の現在所属し、又は過去に所属した団体の見解ではないことを申し添えます。