2017年末に、薬事法の一部改正案が台湾の立法院(日本の国会に相当)の三読で可決された。今回、改正及び追加された条文は合計26であった。改正後の薬事法では、新規適応症のデータ独占権保護及びパテントリンケージ制度導入が新たに規定された。この薬事法の改正は、政府がバイオ医薬品の研究開発を支援する際、医薬品の知的財産権を重視する国際的な趨勢に合わせるため、対応的に行われたものである。

今回、改正薬事法にパテントリンケージ制度が導入されたことで、新薬の発売後、薬品の特許権に係る発明が物質、組成物又は配合、医薬用途の場合、この制度が適用されるためには、特許権者は、その特許情報を申告する義務がある(第48条の3)。その後、ジェネリック医薬品メーカーはジェネリック医薬品販売許可証の申請時に、次のいずれかを声明しなければならない。

一、当該新薬は特許情報が何も登録されていない

二、当該新薬に対応する特許権は既に消滅している

三、ジェネリック医薬品は新薬の特許権が消滅した後に、はじめて販売許可証が発行される

四、当該新薬の特許権には無効事由があり、又はジェネリック医薬品は当該新薬に係る特許権を侵害していない(第48条の9)

ジェネリック医薬品メーカーは、当該新薬の特許権には無効事由があり、又はジェネリック医薬品は当該新薬の特許権を侵害していないことを声明して許可証を申請する場合、自発的に衛生福利部(日本の厚生労働省に相当)及び先発医薬品メーカー(即ち新薬の医薬品許可証所有者)に通知しなければならない(第48条の12)。先発医薬品メーカーは特許権侵害の虞があると判断した場合、通知書を受け取った日の翌日から45日以内に、ジェネリック医薬品販売許可証の申請者に対して特許権侵害の民事訴訟を提起することができる。また、衛生福利部はそれに応じてジェネリック医薬品販売許可証の発行を一時停止し又は審査を12ヶ月間停止して、特許紛争の解決を待つ(第48条の13)。実際の経済的インセンティブによって、ジェネリック医薬品メーカーの専利権に対する挑戦を奨励するために、民事訴訟で勝訴を勝ち取った最初のジェネリック医薬品メーカーに対しては、そのジェネリック医薬品の販売を承認するほか、12ヶ月間の市場独占販売期間を付与する(第48条の15)。このように、パテントリンケージ制度を通して、台湾の製薬会社が医薬品の研究開発及び迂回設計に専念することで、業界の研究開発能力が向上し、国際市場における台湾の医薬品の競争力が強化されるものと期待される。

また、現行の薬事法に規定されているデータ独占権保護では、新成分新薬に対して5年間のデータ独占権保護を付与しており、その他の製薬会社は先発医薬品メーカー(即ち新薬の医薬品販売許可証所有者)の同意を得なければ、先発医薬品メーカーが新薬販売のために医薬品販売許可証申請時に添付したデータを引用することができず、衛生福利部は当該新薬の発売後6年目になってから、ジェネリック医薬品の販売許可証を発給することができる(第40条の2)。世界各国のデータ独占権に対する保護範囲を参考にし且つ台湾の現行の薬品検査登記審査基準で既に新規適応症のデータ独占権保護を付与していることを考慮して、薬事法の改正を通して、新規適応症のデータに対して3年間の独占権保護を与えることとなった。また、更なるインセンティブによって台湾国内の医薬品臨床試験の発展を促すため、臨床試験が台湾国内で実施される場合は、5年間の独占権保護期間を付与することとした(第40条の3)。

衛生福利部食品薬物管理署(略称:食薬署)は、「今回の改正案の可決後、医薬品特許情報データベースの構築及び関連の法律規定の新設を優先することで、権利者を保護する専利法の立法趣旨が実現し、新薬医薬品販売許可証所有者の研究努力が認められることになる。またジェネリック医薬品メーカーも特許情報の透明化により、医薬品の特許の権利状況を把握することが可能となることで、研究開発及び迂回設計が促され、ジェネリック医薬品産業の研究開発能力が向上して、政策目的が達成される」としている。

しかしながら、パテントリンケージ制度の導入については、台湾国内で反対意見も多い。特に、台湾の製薬業界の大半はジェネリック医薬品メーカーであり、これまでの侵害訴訟での先発医薬品メーカーの勝訴率が17%に満たないとはいっても、大量の訴訟件数が既にジェネリック医薬品メーカーの大きな負担になっているのも事実で、新たな制度により、先発医薬品メーカーが訴訟提起を通してジェネリック医薬品の販売を遅延させることができるようになれば、健康保険の財政負担が更に重くなり、民衆の医薬品を選択する権利にも悪影響を及ぼすことになる。また、先発医薬品メーカーが権利侵害の民事訴訟を提起した場合、12ヶ月間の審査停止期間が発生することについて、製薬業界は、これはほぼ権利侵害の推定であるとの疑いをもっており、先発医薬品メーカーには12ヶ月間の審査停止を申請する必要も、何ら声明や説明をする必要もなく、金銭を担保として供託する必要さえないという制度設計はジェネリック医薬品メーカーに対して不公平であると反発している。

台湾製薬工業同業公会、中華民国製薬発展協会及び中華民国ジェネリック医薬品協会の三大製薬業界団体は「元々パテントリンケージ制度の導入は、台湾政府が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び台米間の貿易・投資枠組み協定(TIFA)の交渉において最大限の善意を示したものだったが、現在、TPP の参加国が変わり、名称も包括的かつ先進的環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)に変更となり、TIFAの締結も未定である。したがって、パテントリンケージの施行日は、上記協定の締結後とするのが妥当である」との意見である。

当事務所はこれらの動向に注目して今後も報告をしていく予定である。