中国で会社や商品の名前を覚えてもらうためには、一般に、漢字の名前を使うことが勧められています。このため日本企業は中国で漢字商標を出願することが多く、カタカナや英語の商標をあまり出願していません。しかし商品またはその偽造品が中国で製造されて輸出されることが多々あります。このような場合は、輸出先で使用されているカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。

輸出用の商品は中国商標権を侵害しない?

中国の最高人民裁判所は2015年に、輸出のみのために作られたOEM製品(相手ブランド製品)に付された商標は中国で製品の出所表示機能を発揮しないと判断し、商標権侵害を否認しました(Pretul事件(※1))。しかし最高人民裁判所は慎重に、各侵害事件は、それぞれの事実に基づいて判断されると述べました(※2)。このためその後も高等裁判所は、事実関係によっては、輸出用OEM商品の商標権侵害を認めています。

Dong Feng事件 (江蘇省高等裁判所 2015年)

そうした事件の一つがDong Feng事件です(※3)。本件では中国のOEMメーカーが、インドネシアの商標権者へ輸出する製品を製造しました。しかし外国の商標は悪意を持って登録されたものであるから、OEM製品は国内の商標権を侵害すると判断されました。裁判所は根拠として以下の事実を引用しました。 1 インドネシアの商標は中国語で登録されており、インドネシアの現地語ではない。 2 中国の商標は中国で著名であり、インドネシアで商標登録される前からインドネシアでも販売されていた。 3 OEMメーカーは、インドネシアと中国の商標権者間で法廷闘争が進行中であることを知っていたか、知っていたはずだった。 裁判所は、中国の登録商標が適切にライセンスされていることを確かめる合理的な注意をOEMメーカーが怠ったと認定しました。さらに裁判所は、商標が中国で著名である場合には、OEMメーカーはより高度な注意義務を負うと判示しました(※4)。

Peak事件(上海高等知財裁判所 2017年)

米国のMorrisは、自分が所有する「PEAK SEASON」という商標を付した商品を中国メーカーに製造させ米国へ輸出させました。類似する商標「PEAK」の商標権者である中国のFujian Quanzhou Peak Sportsは商標権侵害で提訴しました(※5)。 裁判所は、以下の理由によりOEM製品が中国の商標権を侵害すると判断しました(※6)。 1 小さい「SEASON」と比較して「PEAK」が著しく目立っている。 2 商品には輸出専用というラベルが付いているが商品をAmazon.comで購入できる。 3「PEAK」は外国でも評判がよく、Morrisはそのマークを知っていたか知っていたはずだから「PEAK」が特に目立つ「PEAK SEAON」の使用には悪意が認められる。 これらの判決はPretul事件における最高裁判決、およびそれ以前の判決と矛盾せず、中国の裁判所が従来通り各事案の事実に従ってOEM事案を判断することを示しています(※7)。 税関 裁判所は、悪意で作られたOEM製品は国内商標を侵害し得ると判断しています。しかし悪意は商標権者が主張・立証しなくてはなりません。このため書類によってOEM契約による製造・輸出であることが示されると(※8)、中国の商標権者がOEM製造者の悪意を主張・立証しない限り税関は商品をリリースします。 使用証拠 付随する問題は、OEMが商標取消を逃れるための「商標の使用」とみなされるかどうかです。侵害事件では原則として「使用」とみなされません。この問題は最高裁判決後も解決されていませんが、下級裁判所は引き続き、取消に対する防御の目的ではOEMを商標の使用と解釈しています(※9)。

ご提案: 日本や米国で使う商標を中国へ出願する 他社による侵害を排除するため

偽造品が中国で作られて輸出される恐れがある場合は、輸出先で使用されるカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。 すると、第三者が悪意で貴社製品の偽造品を中国で製造して輸出した場合に商標権侵害に問うことができるからです。また相手が海外の純正な商標権者のためにOEM生産していない限り、税関でも差し止めが認められるからです。 但し貴社が中国で商標を使用しない場合は、将来的には商標権が取り消される恐れがあるので注意が必要です。

貴社による商標権侵害を防ぐため

更に貴社が、商品を中国で製造して輸出する場合にも、商品に付すカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。 なぜなら同一の商標を第三者が先に登録した場合には、貴社側の中国メーカーによる製造および販売が、悪意でないOEM生産であることを証明する必要があり、立証をできなければ商標権侵害に問われるからです。特に中国で作られた製品がネット上でも販売される場合は、中国でも入手可能であり商標権侵害に問われる恐れが高まるので注意が必要です。 ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 以上