仮想通貨取引に長年携わっている投資家達にとっては、特に、米国政府の代表者が仮想通貨に関する包括的な規則について見解を公表したときなど、価格が激しく変動することは通例のこととなってきました。米国の各種政府機関は、課税手続やマネー・ロンダリングなど仮想通貨の発行や取引に関連する一定の行為については規制を設けていますが、現時点において仮想通貨の規制に関する包括的な枠組みは存在しません。先月生じたいくつかの出来事に鑑みても、仮想通貨の包括的な規制に関する米国政府の方向性がまったく明確になっていないことが示されたように思えます。また、米国政府の規制当局と政策当局の間にコンセンサスが不足していることを考慮しても、仮想通貨に関する規制の枠組みを整え、実施できる可能性が高いとは言い難いように思われます。

米国で今後仮想通貨の規制を担う可能性が最も高い機関としては、民間銀行を規制する連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)、証券の発行と取引を規制する証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)(以下「SEC」といいます)およびデリバティブや商品現物の規制を担う商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission)(以下「CFTC」といいます)が挙げられます。連邦準備制度理事会の議長は、近年、仮想通貨が経済の安定性にもたらすリスクについて公にコメントしていたにもかかわらず、2021年9月30日に連邦議会で行われた公聴会では、連邦準備銀行には、仮想通貨を禁止または制限する意図はないと述べています。同様に、SECのゲリー・ジェンスラー委員長も、仮想通貨市場で投資家に「完全かつ公正な開示」を確保するために規制を設ける必要があるとの見解を繰り返し示してきましたが、最近では、SECには仮想通貨を禁止する法的権限がないことを連邦議会の委員会に対して述べています。

近時の顕著な規制措置の増加に基づいて、CFTCは自らを仮想通貨市場の主要な規制当局と明確にみなしており、CFTCの現会長は、ビットコインもイーサもCFTCの規制を受けるべき商品現物であると明確に意見を述べています。しかし、CFTCは、商品現物とデリバティブを規制する権限しか有していないため、より広範な規制措置を講じることはできません。仮想通貨に関する包括的な規制を定める権限を有するのは米国議会のみであると述べる議員は多数いるものの、そのような法律がまだ導入されていないことを踏まえると、米国政府機関内で必要となる包括的な措置のためのコンセンサスが得られるまでには、まだほど遠いように見受けられます。