2018年12月5日に、中国国家発展改革委員会は、38部門と連名で通知―発改財金〔2018〕1702号『知的財産権(専利)分野における深刻な信用喪失主体に対する共同懲戒の実施に関する協力覚書』―を発表した。その内容は、知的財産権に対し深刻な侵害行為を行った個人及び機関に対し、一種類又は複数の広い範囲の懲戒措置を講じるというものである。

 実は、内容が膨大で58頁もあるこの通知は、既に2018年11月21日に発表されていたが、国家発展改革委員会のウェブサイトで発表されたのは12月5日だった。これは、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が2018年12月1日にアルゼンチンで米中貿易戦争の交渉ための会談を行ったことと関係している。今回の米中貿易戦争の主な対立点は、知的財産権問題であり、双方が90日以内にこの問題について合意に至らなかった場合、米国は2千億米ドル分の中国からの輸入製品に対し関税率を10%から25%へ引き上げるとしていた。そのため、中国政府は緊急に知的財産権の監督管理措置を強化し、罰金の引き上げを行った。

 双方は、知的財産権保護の強化、技術移転の強要、非関税障壁などに関連した「構造改革」などについて、協議を行うことに合意した。

この通知には、次の内容が含まれている。

  • 中国国家知識産権局は、全国信用情報共有プラットフォームを通じて、法律・規定に基づき、定期的にこの覚書を締結したその他の部門及び機関に知的財産権(専利)分野における深刻な信用喪失(権利侵害)主体のリストを提供するとともに、監督管理を強化し、「法律に基づいて厳重に」違法行為を処罰する。
  • 部門を跨いだ共同懲戒措置には、政府の資金による支援の制限、政府の資金の申請に対する審査の厳格化又は支援の削減、補助金と社会保障資金による支援の制限や、信用喪失状況を金融信用情報基礎データベース及びインターネット信用調査システムに組み入れて、金融機関の融資・与信の際の参考とすることが含まれる。
  • 知的財産権信用喪失主体の非金融債務融資ツールの発行について管理を強化し、規定により関連情報の公開を強化する。同時に、この種の情報を、株式、転換社債の発行審査及び中国の全中小企業の株式の公開譲渡審査の参考とする。
  • 知的財産権の信用喪失主体は、法律により金融機関の実質的支配者、取締役、監査役及び上級管理者に就くことが制限される。金融機関の従業資格を申請する場合は厳しく審査され、既に金融機関の従業者になっている場合は重点的な注意が払われる。

 各部門及び機関は、知的財産権(専利)分野における深刻な信用喪失主体に対する共同懲戒作業の実施に関し、以下について合意に達した。

 一、共同懲戒の対象

 共同懲戒の対象は、知的財産権(専利)分野における深刻的な信用喪失行為の主体的実施者である。当該主体的実施者が法人の場合、共同懲戒の対象は当該法人及びその法定代表者、主な責任者、直接の責任者及び実質的支配者である。当該主体的実施者が非法人組織の場合、共同懲戒の対象は非法人組織及びその責任者である。当該主体的実施者が自然人の場合、共同懲戒の対象は本人である。

 知的財産権(専利)分野における深刻的な信用喪失行為は、以下のものである。

  1. 繰り返しの専利侵害行為。各地域の知識産権局が調解又は行政決定により、専利侵害行為が存在すると認定した後も、侵害者が再度同じ専利権を侵害した場合、侵害側に繰り返しの専利侵害行為があるとみなす。
  2. 法律に基づく執行を拒否する行為。既に発効した専利権侵害・模倣行為に対する行政処理決定又は行政処罰決定の執行を拒否する行為、及び地方の知識産権局の法律に基づく調査の実施、証拠収集を妨害する行為は、法律に基づく執行を拒否する行為とみなされる。
  3. 専利代理の深刻な違法行為。専利代理機構が国家知識産権局の確定した経営異常名簿に記載された後、名簿に記載された日から3年を経過しても関連規定を満たさない場合、専利代理に深刻な違法行為が存在するとみなす。
  4. 専利代理人資格証書の名義貸し行為。専利代理人資格証書を変造し、転売し、貸与(有償、無償)したり、又は資格証書、登録証、職印をその他の方法で譲渡するなど。
  5. 正常でない専利出願行為。国家知識産権局に『専利出願行為の規範化に関する若干規定』(国家知識産権局令2017年第75号)にいう正常���ない専利出願に属すると認定された行為。
  6. 虚偽文書を提供する行為。権利者が専利出願又は関連事務手続きを行う過程において虚偽の資料又は虚偽の証明書を提供した場合、虚偽文書を提供する行為とみなす。

 上記の深刻な信用喪失行為の認定は、『国家知識産権局による知的財産権システムの社会信用制度構築作業の実施に関する若干事項の通知』(国知発管字〔2016〕3号)及びその他の関連文書に基づいて確定する。

 二、情報共有及び共同懲戒の実施方法

 国家知識産権局は、全国信用情報共有プラットフォームを通じて、法律及び規定により定期的に、本覚書を締結したその他の部門及び機関に知的財産権(専利)分野の深刻な信用喪失主体のリストを提供するとともに、「信用中国」ウェブサイト、国家企業信用情報公示システム、国家知識産権局政府ウェブサイトなどで社会に公開する。その他の部門及び機関は、本覚書の規定に従って共同懲戒措置を実施し、各機関及び部門は、実際の状況に基づいて定期的に実施状況を、全国信用情報共有プラットフォームを通じて、国家発展改革委員会と国家知識産権局にフィードバックする。知的財産権(専利)分野の深刻な信用喪失主体のリストから削除された機関又は個人に対して、関連部門は即時に共同懲戒措置の実施を停止しなければならない。

 三、共同懲戒措置

 各部門は、関連する法律、法規、規則及び規範的文書の規定により、共同懲戒対象に対し一種類又は多種類の懲戒措置を実施する(関連の根拠と実施部門は[添付文書]参照)

 (一)国家知識産権局がとる共同懲戒措置

  1. 監督管理を強化し、法律により違法行為を厳しく処罰する。
  2. 各知的財産権保護センター及び迅速権利保護センターの専利の迅速な権利付与と権利確定及び迅速な権利保護ルートの適用資格を取り消す。
  3. 国家知識産権の模範企業及び優勢企業の申請資格を取り消す。
  4. 国家専利運営試行企業の申請資格を取り消す。
  5. 専利出願時に、専利費用の割引、優先審査などの優遇措置を与えない。

 (二)部門を跨いだ共同懲戒措置

  1. 政府の資金の支援を制限する。政府の資金の申請に対する審査を厳格化し又は支援度を引き下げる。(実施部門:財政部、国家発展改革委員会、各級人民政府)
  2. 補助的資金及び社会保障資金の支援を制限する。(実施部門:国家発展改革委員会、財政部、人力資源社会保障部、国有資産監督管理委員会)
  3. 法律によりサプライヤーとして政府調達活動に参加することを制限する。(実施部門:財政部)
  4. 信用喪失状況を金融信用情報データベース及びインターネット信用調査システムに組み入れる。(実施部門:人民銀行などの関連部門)
  5. 金融機関の融資与信時の重要な参考とする。(実施部門:人民銀行、銀行保険監督管理委員会)
  6. 法律により企業債券発行の申請を受理しない。(実施部門:国家発展改革委員会)
  7. 信用喪失主体の非金融債務融資ツールの発行について管理を強化し、更に登録発行に関する作業要求に従って、情報公開と投資家保護メカニズムを強化し、関連リスクを防ぐ。(実施部門:人民銀行)
  8. 信用喪失情報をその他の会社の信用類債券公開発行の許可又は登録の参考とする。その深刻な信用喪失情報を、株式、転換社債の発行審査及び全国中小企業株式譲渡システムでの上場・公開・譲渡の審理時の参考とする。
  9. 金融機関の設立を制限し、法律により金融機関の実質的支配者、取締役、監査役及び上級管理者に就くことを制限する。金融機関の従業資格申請に対して審査を厳格化し、既に金融機関の従業者になっている関連主体については重点的に注意する。銀行カード清算機関、非銀行決済機関の設立を制限する。銀行カード清算機関、非銀行決済機関の持株比率が5%を超えないよう制限する。銀行カード清算機関、非銀行決済機関の実質的支配者、取締役、監査役及び上級管理者に就くことを制限する。(実施部門:国家発展改革委員会、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、人民銀行、市場監督管理総局など金融機関の任職資格に対し承認権限を有する部門)
  10. リスクプライシング原則に基づき、財産保険料を引き上げたり、保険などのサービスの提供を制限したりするよう金融機関に指導する。(実施部門:人民銀行、銀行保険監督管理委員会)
  11. 上場会社又は非上場公開企業の買収の事中・事後の監督管理について重点的に注意する。(実施部門:証券監督管理委員会)
  12. 外貨限度額の承認及び管理時の重要な参考とする。(実施部門:外国為替局)
  13. 国内の国有持株上場会社の株式インセンティブプランを停止し又は株式インセンティブ対象の権利行使資格を終了する。(実施部門:国有資産監督管理委員会、財政部)
  14. 信用喪失情報を国内の上場会社の株式インセンティブプランの実行又は関係者が株式インセンティブの対象になる事中・事後の監督管理の参考とする。(実施部門:証券監督管理委員会)
  15. 信用喪失情報を非上場公開会社の重大資産再編審査の参考とする。(実施部門:証券監督管理委員会)
  16. 信用喪失情報をファンド販売資格審査の参考とする。(実施部門:証券監督管理委員会)
  17. 法律により国有企業の法定代表者、取締役、監査役に就くことを制限する。(実施部門:中央組織部、国有資産監督管理委員会、財政部、市場監督管理総局などの関連部門)
  18. 同一期間内の最低生活保障、医療扶助、臨時扶助などの社会扶助対象、保障性住宅などの保障対象の認定、及びその扶助保障資格の審査の際の重要な参考とする。(実施部門:民政部、住宅都市農村建設部、医療保障局)
  19. 深刻な信用喪失主体に対し、認証機関の資格取得を制限し、認証証書の取得も制限する。(実施部門:市場監督管理総局)
  20. 重点監督管理対象として、日々の監督管理を強化し、抽出検査の割合と頻度を高める。(実施部門:農業農村部、市場監督管理総局、食品薬品監督管理総局、税務総局、応急管理部、林業草原局、中央宣伝部などの関連部門)
  21. 深刻な信用喪失主体の貨物輸出入に対する監督管理を強化し、一定期間内において深刻な信用喪失主体による輸出入関連の貨物の生産、販売を禁止する。(実施部門:市場監督管理総局)
  22. 税関による認証企業の認定を制限し、税関による認証企業の管理適用を申請した場合、認証を許可しない。既に認証企業になっている場合は、規定により企業信用等級を引き下げる。(実施部門:税関総署)
  23. 税関関連業務を行う時に、その輸出入貨物に対し厳格な監督管理を実施し、抜取検査を強化し、監督検査又は後続検査した貨物の内容及び件数の統計をとる。(実施部門:税関総署)
  24. 政府の供給する土地の取得を制限する。国有林地の使用を制限する。重点林業建設プロジェクトの申請を制限する。国有草原の占有承認を制限する。重点草原保護建設プロジェクトの申請を制限する。(実施部門:国家発展改革委員会、自然資源部、林業草原局、農業農村部)
  25. 科学技術プロジェクトの申請を制限し、その深刻な信用喪失行為を科学技術信用記録に記入する。(実施部門:科学技術部)
  26. 専利に関わる違法行為で、生産・販売が停止された商品の広告宣伝を制限する。既に広告がされている場合は、直ちに一時停止しなければならない。(実施部門:国家新聞出版広電総局)
  27. 信用喪失当事者の付加価値電気通信業務経営許可申請及び非営利目的のインターネット情報サービス届出を厳しく審査する。(実施部門:工業・情報化部)
  28. 公務員又は公的機関の職員としての採用を制限する。(実施部門:中央組織部、人力資源社会保障部などの関連部門)
  29. 人民法院により関連規定に基づく消費制限措置がとられた場合、又は信用喪失被執行者リストに入れられた場合は、飛行機の搭乗、列車のソフトスリーパー、G列車の全ての座席、その他の列車の一等以上の座席などの高消費及びその他の生活及び仕事に必要でない消費行為を制限する。(実施部門:最高法院、交通運輸部、民用空港局、鉄路総公司など関連部門)
  30. 不動産の購入及び国有財産権の取引を制限し、旅行、休暇など生活及び仕事に必要でない消費行為を、一定の範囲内に制限する。(実施部門:文化観光部、自然資源部、国有資産監督管理委員会などの関連部門)
  31. 表彰、奨励の取得を制限する。既に取得した表彰、奨励は取り消す。(実施部門:中央宣伝部、中央精神文明建設指導委員会弁公室、国務院貧困者支援開発指導チーム弁公室、全国総工会、共産党青年団中央委員会、全国婦女連合会、中国科学技術協会及びその他の関連部門)
  32. 深刻な信用喪失主体が個人の場合、法律により公的機関の法定代表者として登記することを制限する。深刻な信用喪失主体が機関の場合、当該機関の法定代表者に対し公的機関の法定代表者として登記することを制限する。(実施部門:中央機構編制委員会弁公室)
  33. 信用喪失主体の信用喪失情報をインターネット新聞情報サービス機関を通じて、社会に公開する。(実施部門:中央ネットワーク安全・情報化委員会弁公室)

 四、その他の事項

 各部門は、本覚書を積極的に実施するために密接に協力し、実施細則と業務手順を制定して、2018年12月末までに、知的財産権(専利)分野の深刻な信用喪失主体に対する共同懲戒を実現する。

 本覚書を締結した後、各部門、各分野の関連法律、法規、規定及び規範的文書の改正又は調整が、本覚書と一致しない場合、改正後の法律、法規、規則及び規範的文書を基準とする。実施過程における具体的な運用上の問題については、各部門が別途協議を行って解決する。

[添付]部門共同懲戒措置及び法律政策の根拠