明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

年明け早々、公私ともに忙しく過ごしている。クリスマス休暇前に 活発化していたいくつかのM&A案件は、その後、動きが止まって いたが、ありがたいことに新年には再び勢いを取り戻している。(ナイジェル・コリンズ/M&A専門弁護士)

私がこの記事を書いている最中に、英最高裁判所は欧州連合(EU)離脱の手続 き開始には議会の承認が必要との判断を下し、メイ首相に打撃を与えた。近代以 降で最も重要な憲法訴訟の1つとなるこの裁判で、同裁判所の判事11人は、首相 が君主大権を用いてEU条約第50条を発動し、2年にわたるEU離脱手続きを開 始することはできないとの判決を8対3で下した。同首相が3月末までにEU離脱プロセスを開始するためには、上下院に諮ることが必要となる。

最近、日本に出張した際、買収した資産の一部を売却する場合のプロセスについ てクライアントと話をした。その要点を以下に紹介する。

ステップ1:「何を売るのか」の特定

  • 売却する事業または投資資産の種類を見極める
  • その事業を売却する「理由」を確定する。これは、買い手や投資家に「物語」を 伝える上で必要となる。

ステップ2:資産売却の準備

  • 最初に投資した際の書類を見直し、未払い負債がないことを確認する。
  • 資産売却をめぐる制限や支障の有無を確認する。例えば、対象事業が資金難また

は多額の負債を抱えている、売却に向けて規制当局その他の同意が必要、労組が 従業員を支援している、訴訟を抱えているかその恐れがある、その国特有の制限 または考慮事項など。

  • 第三者による事業価値の評価を行うべきかどうか判断する。
  • 事業価値を最大化するために、売却前にその事業に投資する必要があるかどうか検討する。例えば、特定の国·地域でのライセンス取得、追加買収、新規顧客の

確保、入札や認定など。

ステップ3:出口シナリオ

  • 出口シナリオには、当該業界の既知の企業への売却、複数の候補企業への打診、多数の候補企業を対象とした競争入札の実施などがあるが、どのシナリオが最適 かは売却対象事業のタイプによって異なる。例えば、合弁事業から撤退する場合 は、合弁契約の中に出口シナリオに関する条項があるのが普通なので、事情が違 ってくる。

ステップ4:対象事業の売却に向けた準備

  • 対象事業に関する売り手側のデューデリジェンス(資産の適正評価)の手配と報 告書の作成、見直し、熟慮。
  • 上記各ステップの結果によっては、売却前に問題や懸念事項、障害への対処が必 要となる。
  • 対象事業内部で誰が売却の事実を知っておくべきか検討する。
  • 財務報告や納税手続きの準備について検討する。
  • 対象事業の売却資料を作成する。通常、準備するのは「投資家向けティーザー( 匿名の企業概要書)」と「インフォメーション·メモランダム(IM)」だが、これらが必要かどうかは、売却および出口シナリオによって決まる。

ステップ5:買い手候補へのアプローチ

  • 機密保持契約を結び、独占交渉期間で合意する。
  • 交渉と売却契約の締結(広範囲にわたる事項なので、ここでは取り上げない) 最近、気になった案件を以下に挙げる:
  • 英スポーツ用品販売大手スポーツダイレクト·インターナショナルが、「ダン ロップ」ブランドの諸権利を住友ゴム工業に売却する。これにより、住友ゴム は世界86カ国で「ダンロップ」商標権の実施権者(ライセンシー)から所有権 者(ライセンサー)へと立場が変わり、同ブランド商品を世界展開することが 可能となる。
  • 一方、住友商事はアイルランドの青果大手ファイフス(Fyffes)の全株式を取得 することで合意。欧州での食品事業拡大を狙う。
  • サントリーホールディングス傘下の米ビームサントリーは、高級ジンの製造を 手掛ける英国のシップスミス(Sipsmith)の経営権を取得した。同社製品の世 界販売を拡大する狙いだ。ジンの人気が世界的に高まるとの見方もあるだけに 興味深い取引だ。

最後に私生活面では、5月中旬にブダペストで開かれる欧州剣道選手権に出場す る英国代表チームの選抜を終えたところだ。残念ながら代表から漏れた選手達と 先週末に話をし、日本の「七転び八起き」ということわざを思い出すように伝え た。