サッカーのワールドカップ(W杯)で、イングランドと日本が共に見事な活躍を見せ、熱い感動を与えてくれた後、ロンドンで夏のきらめきを楽しんでいる。「もしあのとき…」という思いが胸を過ぎる。日本が後半戦の最後の10秒に、ベルギーを振り切っていたら。イングランドが前半で、クロアチアから奪った得点を守っていたら。日本の会社に例えるならば、千載一遇のチャンスを逃さないことが、ビジネスを成功に導くのだと思う。

仕事の世界に話を戻そう。テクノロジー関連分野の投資に関し、クライアントと、株式の希薄化(ダイリューション)と投資家の保護について話し合う機会があった。株式の希薄化は、企業が新株発行増資をするときに発生する。投資家は、持ち株の価値が変わらないならば、希薄化を受け入れるだろう。

しかし、新規の投資家が支払う株価が、既存投資家が支払ったそれを下回る場合、既存投資家の持ち株の価値は、株式保有率とともに下がる。そこで必要なのが、「希薄化の防止」だ。これは投資家を保護する対策で、企業が既存投資家の支払った価格よりも低価格で株式を発行すること(ダウンラウンド)により、株式の希薄化が生じた結果、投資家が被る不利益を回避させようとするものだ。

希薄化の防止は、投資家がダウンラウンドの影響を受けることを防ぎ、経済的に有利な立場が保てるようにする。一方、保護を受けていない株主(従業員や経営陣)は、持ち株の価値が下がる。ダウンラウンドの影響は、すべての株主が公平に共有するものではなく、非投資家層に集中する。

議決権や優先権などが付与された株式を保有する投資家は、株式取得において彼らの利益を保護するため発行会社との交渉を行う。典型的なものは、ダウンラウンドに関する次の2つだ。

*希薄化の防止のため、投資家は優先的に株式を追加購入し、株保有率を保つ。

*新規公開株が発行される場合などは、優先株から普通株への換算率を増加させる。

希薄化の防止には、次の方式がある。

□フル・ラチェット

株数算定の基礎となる基準価格を、低額で行われる新規投資の発行価格と同額になるよう下方修正する方法。投資家に最も有利となる。

□加重平均ラチェット

基準価格を、既発行株式の価値と、新規発行される株式の価値の平均値をとる考え方に基づき、一定の計算式によって算出する方法。この方法では、会社の株式資本全体に対する新規発行株の実影響を見ることになるため、フル・ラチェットに比べて、従業員や管理職層など、投資家以外の株主にとって公平感が高まる。

加重平均ラチェットには、「ブロードベース」と「ナローベース」がある。ブロードベース加重平均では、計算式に用いる既発行株式数について、顕在株に加え新株予約権の目的株式などの潜在株式の数も算入する。

それに対してナローベース加重平均では、顕在株のみを算入する。ナローベースの場合、被投資家は、通常、ブロードベースより大きな調整を受けることになる。

■注目すべき取引

・ NTTデータは、デジタル変換サービス部門を強化するため、英国のIT(情報技術) コンサルタント企業マジェンティス(MagenTys)・ホールディングスを買収した。

・ 日立キャピタルも、フランチャイズ(FC)市場にサービスを提供するフランチャイズ ファイナンスを買収し、デジタルトランスフォーメション支援を強化する。

・ 電通が、デジタル広告を含む主要広告媒体で強みを持つイタリアの広告会社ビッグナウ を手に入れた。

剣道については、英代表チームが、9月の世界選手権大会に出発する前の最終稽古を終えた。団体戦、個人戦の組み合わせも決まった。女子団体は日本チームと同じプールになり、個人戦では息子が、全国警察剣道大会の優勝者、安藤氏と剣を交える栄誉を与えられた。息子に安藤氏との対戦を伝えると、「今夜は稽古にもジムにも行く!」と即座に反応。いまから対戦を楽しみにしている。

Originally published by NNA in June 2018.