事件紹介

意匠権者であるロイヤル・フィリップス社は、コンシューマーヘルスケア及びホームケアの分野で世界をリードしてきた世界的に有名な企業である。120年以上前に最初のフィリップス電球が発売されて以来、イノベーションと人材を中心とした姿勢が当該会社の推進力の中心となっている。このようなイノベーションは間違いなく消費者にアピールされ、革新的な製品は一般の人々の日常生活に浸透している。

係争意匠は、201430552761.9号の意匠権に関し、出願日が2014年12月25日であり、優先日が2014年7月4日である。意匠に係る物品の名称が「美容装置」であり、具体的に毛髪トリミングデバイスであり、日用品に属し、広い市場空間を持っている。専利製品が市販されると、すぐ多数の模倣品が出回り、意匠権者の市場やブランドに深刻な影響を与えた。権利を守る過程で、意匠権者は常に専利無効の課題に直面していた。無効請求人は、近い先行意匠文献を見つけることができなかったので、発明専利の公開公報から証拠を探すことになる。

係争意匠の設計要点は製品の形状、模様又は形状と模様の結合である。授権公告された図面は以下の通りである。

無効審判決定の内容

2.1 証拠の認定

請求人は、従来技術の証拠として2つの専利文献を提出した。その中、証拠1は、CN102744736A号中国発明専利出願の公開公報であり、公開日が2012年10月24日である。证据2は、CN3534957D号中国意匠専利の授権公告公報であり、公開日が2006年6月7日である。

請求人は、以下のことを主張した。証拠1の図1、4、5を一つの対比設計とし、係争意匠との差異は、係争意匠のハンドルの底部が滑らかでありかつ孔がないことにある。一方、証拠2に示す対比設計は、ハンドルの底部が滑らかでありかつ孔がないことを開示した。そのため、係争意匠は、証拠1と2の組合せに対して専利法第23条第2項の規定に合致しない。

無効審判決定書において、まず、先行意匠としての中国発明専利文献の公開日が係争意匠の出願日より前であり、その図面に示す意匠が係争意匠の先行意匠になることが認められた。しかし、証拠1における図1、4と図5は、異なる実施例に属し、図1、4と図5に示されるいくつかの部位が対応していないため、図1、4と図5が示す意匠は、同一の対比設計ではなく、それぞれ個別に考慮されるべきである。

2.2 専利法第23条第2項について

証拠1と係争意匠との対比について、主に以下のように評価された。

2.2.1 証拠1における図141つの対比設計になる

図1は構成模式図であり、製品の外観のうち、側方部の最も外側の輪郭の線条のみを示し、図4は主に図1の側方部の下部ケース2の部分の外形を示すが、ハンドル部の全体形状を開示していない。図1と図4に示す意匠を係争意匠と対比すると、両者は、何れもハンドル部とブレード部からなること以外、証拠1の図1と4に示すハンドル部とブレード部の形状が係争意匠と異なり、係争意匠におけるハンドル部の外周の前、後、左、右この四面が弧線状を呈するケース面と、前、後ケース面がそれぞれ左、右ケース面と面取りで移行する設計と、前ケース面の中央位置にU字状に配置されるボタン設計が開示されていない。また、証拠1に開示のブレード部とハンドルケースの部分の形状が係争意匠の対応部分と明らかに相違している(下記関連方向からの対比図を参照)。

係争意匠の一部図

証拠1の図1と4

2.2.2 証拠1の図5がもう1つの対比設計になる

図5は、主に製品の外観のうち、上半部の斜視図方向の設計を示し、ハンドル部の下半部の形状を開示しておらず、かつ当該方向から見た製品の上半部の他の部分が隠れられている。図5に示す意匠を係争意匠と対比すると、両者は、いずれもハンドル部とブレード部からなること以外、証拠1の図5に示すハンドル部とブレード部の形状が係争意匠と異なり、係争意匠におけるハンドル部の外周の前、後、左、右この四面が弧線状を呈するケース面と、前、後ケース面がそれぞれ左、右ケース面と面取りで移行する設計と、前ケース面の中央位置にU字状に配置されるボタン設計が開示されていない。また、証拠1に開示のブレード部とハンドルケースの部分の形状が係争意匠の対応部分と明らかに相違している(下記関連方向から見た対比図を参照)。

係争意匠の斜視図

証拠1の図5

2.2.3 係争意匠が証拠1と対比すると明らかな差異を有する

証拠1は、製品の全体形状を開示しておらず、前記開示されていない部分は係争意匠の差異点と見なされ、開示されている部分も係争意匠と異なる。

2.2.4係争意匠が証拠12の組合せに対して明らかな差異を有する

証拠1と2の組合せ方式では、請求人が証拠2のハンドルの底部の充電孔がない設計で証拠1の充電孔ありの設計を替えることのみを主張した。係争意匠と証拠1はハンドル部とブレード部にいずれも多くの差異点がある場合、証拠2を組み合わせるとしても、係争意匠は、2つの証拠の組合せに対して明らかな差異を有する。

したがって、係争意匠は、証拠1と2の組合せに対して専利法第23条第2項の規定に合致する。

弊所コメント

本事件の係争焦点は主に2つある。1つ目は、発明専利を先行意匠の証拠とすることについてどのように認定するかである。2つ目は、意匠専利無効において異なる対比設計の組合せをどのように認定するかである。

専利法第23条第2項の規定によると、専利権が付与される意匠は、先行意匠又は先行意匠の特徴の組合せに比べて、明らかな差異を有していなければならない。先行意匠について、専利審査指南の規定によると、出願日前に国内外の出版物に公に発表され、公に使用され、又はその他の方式により公然知られた設計を含む。

これで分かるように、発明又は実用新案専利出願書類の図面に示される設計も先行意匠を構成することができる。ただし、発明又は実用新案専利出願によく複数の実施例があり、複数の図が示す設計が同一の設計に属するかについて判断する必要がある。

発明又は実用新案専利出願書類は、製品の内部構成を示すケースが多いが、意匠が内部構成ではなく、外部の設計を保護するものであり、特に、第4回改正前の専利法によれば、意匠専利が局部ではなく、製品全体の意匠を保護するものである。それで、図面は製品全体の意匠を明確に開示していない場合、発明又は実用新案専利出願書類を対比設計として係争意匠専利と対比することができない。

しかし、発明又は実用新案専利出願書類において、複数の図面を組み合わせて製品全体の意匠を公開すると、この複数の図面が同一の実施例に属するかを判断する必要がある。同一の実施例に属しない場合、異なる実施例間に製品の意匠が対応性を有するかを判断する必要がある。対応性を有しない場合、複数の図面を直接に組み合わせて一つの対比設計とすることができない。

証拠1の第1実施例(即ち、図1~4に示す実施例)は、「同方向両ブレード毛髪トリミングデバイス」を開示し、そのブレードヘッド9は、同方向に並べて設置される厚ブレードアッセンブリー91と薄ブレードアッセンブリー92との2つのブレードアッセンブリーを有し、この2つのブレードアッセンブリーは、それぞれ厚ブレードロッカアーム8と薄ブレードロッカアーム7を通してダブル偏心体軸6により駆動される(図1~4及び明細書の段落0024~0030を参照)。第2実施例は、「反対方向両ブレード毛髪トリミングデバイス」を開示し、そのブレードヘッド10は、固定ブレード30と可動ブレード40からなる一組のブレードアッセンブリーのみを有する(図5~7、及び明細書の段落0038~0045を参照)。第2実施例に公開の単組のブレードアッセンブリーは、第1実施例に公開の両ロッカアーム構成により駆動されて毛髪トリミングの機能を有する製品を構成することができない。実は、図1、4と図5から見ると、2つの実施例の製品の意匠が同一であることはありえない。例えば、ハンドル部の側面の線条を対比すると、図1において、その左右の側部が対称している可能性が大きいため、対称設計であることを仮定する場合、図5に示す側部の設計が明らかに図4に示す側部の設計と対応していない。また、ハンドル部のネック線条を対比すると、図4におけるハンドル部のネック部の湾曲が比較的短いことに対して、図5のほうが長いため、この箇所において両者は対応していない。前記対応しない状況は、両者が異なる実施例に属するという実際の状況に合致する。これで分かるように、図1、4と図5が示す設計は、同一の対比設計にならない。

上記2つの実施例の内部構成が異なり、作動原理も異なるため、両者の外観が対応性を有しないことになり、対比設計として組み合わせることができない。

本事件は、発明専利出願書類の図面を対比設計として意匠専利の有効性を評価する証拠について有益な検討を行った。まず、本発明専利出願書類を先行意匠の証拠とすることができることを肯定し、次に、異なる実施例の図面が一つの対比設計になれるかについて詳細に検討した。これについて、合議体は、意匠権者の答弁意見を支持した。一概には言えないが、異なる実施例の製品の外観が対応性を有するかについて考慮すべきである。対応性を有しない場合、2つの独立した対比設計として分析することになる。対応性を有する場合、異なる実施例の図面が製品の完全な意匠を示すかを考慮する必要がある。

本事件の決定理由は、係争意匠の特許性を十分に肯定するとともに、意匠権者が権利を主張するのに十分な余地を残すものである。