ここ数週間、出張先の日本や香港、シンガポールで多くの日本企業 を訪問してきた。

クリスマスと新年をロンドンで迎えるため帰途に 就く中、行く年と来る年のことを考えている。クリスマス休暇を またぐ案件もいくつか抱えてはいるが、それほど大変なものではな い。ブレグジットとトランプ当選をめぐる混乱や政局の不透明感、対立は、相変わらず多くの人々の意識や会話を支配している。そこ で今回は、ブレグジットがM&A取引の法的枠組みに及ぼす影響を 概観する。(ナイジェル・コリンズ/M&A専門弁護士)

ブレグジットがM&A取引に及ぼす影響

英国の欧州連合(EU)離脱交渉がまとまるには何年もかかるとの見方もある が、それまでは英国でのM&A取引の法的枠組みに変わりはない。海外の買い手 の間で、重大な事態の逆転に対する保護条項を売買契約に盛り込もうとする動き が出ると予想する声もある。これは、契約締結から取引完了までの期間が長く、 その間に通貨の変動など重大な経済的変化が起きて取引の経済性に悪影響を及ぼ すことを、買い手が懸念している場合に考えられる。

欧州経済領域(EEA)加盟国間の企業合併

英企業とEEA加盟国の企業の合併に関する現行のEUレベルでの規制枠組み は、ブレグジット後にはなくなる。これらの規制は、EU離脱交渉の一部を成す とみられている。

公開企業の買収

株式公開企業の買収をめぐる法的枠組みは、おおむね現行のままにとどまる見通 しだ。これは、EUの企業買収指令(Takeover Directive)を国内法化した英国の テイクオーバー·コード(Takeover Code)の大部分が同指令の導入以前から存在 しているためで、同法に大幅な変更の必要性はないだろう。ただし、英国がEEAを離脱する場合には、共同管轄のルールを見直す必要が出てくる。

非公開企業のM&A

国内取引や多くの国際取引の法的枠組みは、今のまま英契約法に従うことになる 見通しだ。国際取引における英国法の人気が他の欧州諸国に脅かされるようにな るかどうかは、まだ分からない。M&A取引のいくつかの分野では、やや変更が あるかもしれない。その1つが紛争解決で、英国の判決をEU加盟国で、またE U加盟国の判決を英国で執行できなくなる可能性もある。その場合、英国の判決 を欧州加盟国で執行するためには別途、事前承認が必要となる。仲裁が今より多 用されるようになるとの見方もある。

最近の注目の案件を以下に挙げる:

  • 英国でゴルフをしたことのある読者も多いと思うが、アサヒグループホールデ ィングスは、ロンドン郊外に所有する名門ゴルフ場「バッキンガムシャー·ゴ ルフ」を、欧州でゴルフ場やホテル経営を手掛けるイーグル·リゾート傘下の バッキンガムシャー·パーク·リゾート(BPR)に売却する。取引額は明ら かにされていない。
  • 味の素は、トルコの食品大手オルジェン(Orgen)を約2億2,000万トルコリラ (6,700万ドル)で買収する。調味料や加工食品の需要が伸びている同国で事業拡大を狙う。
  • 日立化成(東京都千代田区)は、蓄電池などを手掛けるイタリアのフィアム (FIAMM)から、自動車用·産業用鉛蓄電池事業を取得する。成長性の高いこ の分野で欧州に足がかりを得るため。

私生活面では、私の留守中に剣道の英国代表チームの選考試合が終わり、私が帰 国し次第、メンバーを確定する。その後、来年5月にハンガリーのブダペストで 開かれる欧州選手権に向け練習計画を練る予定だ。

加えて、資金不足の剣道英代表チームのスポンサー交渉を進めるつもりだ。ほん のわずかな金額でも、ちょっとした稽古道具でも構わないので、英国での剣道振 興に向けスポンサーになってくれそうな個人や企業をご存知の読者がいらっしゃ れば、ぜひご一報いただきたい。

皆様がよいクリスマスと新年を迎えられるようお祈りします。