【出典:知的財産局ウェブサイト】

台湾の立法院(日本の国会に相当)は、2022年5月27日に三読会で「著作権法」の一部条文改正草案を可決した。今回の法改正のポイントは、「(1)教員が安心して授業ができるように、今後学校の対面授業の延長である遠隔授業において、他人の著作物を合理的に使用することができるようになった。(2)非営利目的の遠隔授業において、他人の著作物を使用することができ、且つ使用報酬を支払わなければならない規定を増設した。(3)電子かばん(デジタル教科書)の利用を通じて、かばんを背負う生徒の負担を軽減するために、今後、教科書の編纂者は当該教科書の電子ファイルを教員と生徒に提供することができるようになった。(4)今後、国立図書館は、利用者が館内でオンライン閲覧ができるよう、一定の条件を満たせば、デジタル化による所蔵著作物の複製ができるようになった」である。

この改正案の各条文の改正ポイントは以下のとおりである。

  • 学校に登録している生徒に対して遠隔授業を行う場合、他人の著作物を合理的に使用することができる規定を増設した。(46)

現行法では、教員が学校で対面授業を行う場合にのみ、合理的な範囲において、資料をコピーして生徒に配ることができると規定されていた。だが、科学技術の発展に合わせて、教員が学校で行う対面授業と同じように遠隔授業ができるように、教員が学校授業を行う目的で必要な合理的な範囲内において、生徒に参考となる文章或いは資料をインターネットを介して提供することができるとの規定を増設した。これによって、新型コロナウィルスで登校できないときの遠隔授業のニーズに対応でき、教育効果が拡大するだけでなく、世界的な潮流及び科学技術の発展趨勢に沿ったものになることが期待されている。また、著作財産権者の権益が過度に侵害されるのを防ぐために、授業を履修していない生徒が授業を受けられないように、学校は合理的な技術的措置(例えば、アカウント及びパスワードの設定)を講じなければならないとの規定を増設した。また、この種の遠隔授業は高い公益性を有するものであることを考えて、学校の教員が授業で他人の著作物を使用する場合、報酬を支払うことなく利用許諾を得ることができるようにした。

  • 非営利目的の遠隔授業を行う場合、他人の著作物を使用することができ、且つ使用報酬を支払わなければならないとの規定を増設した。(第46条の1)

一般公衆を受講対象とする遠隔授業の類型(例えば、営利を目的としないムークス〔MOOCs:Massive Open Online Courses〕のプラットフォームであるエデックス〔edX〕等)について、現行法では、放送大学のテレビ授業のようなものに関する合理的な使用の規定はあるが、インターネット授業に関する合理的な使用の規定はなかったため、今回の法改正では、学校、教育機関がインターネットによる遠隔授業を行う場合、他人の著作物を合理的に使用することができるとの規定を増設した。この種の利用類型には、従来のラジオ、テレビ放送のほかに、インターネットによる同時・非同時配信の利用も含まれ、また、受講対象は、上述の学校に登録している生徒ではなく、範囲が非常に広い一般公衆であるため、著作財産権者の権益を考慮して、教育の目的上必要と認められる範囲内において使用することだけでなく、権利者に使用報酬を支払うことも規定した。営利を目的とする遠隔授業(例えば、塾などの教育機関のインターネットによる遠隔授業)については、公益性を有していないため、著作財産権者の権益を保護するために、利用許諾を得なければならないことを明確に規定した。

  • 電子かばん(デジタル教科書)の使用ニーズに対応するために、教科書の編纂者が電子ファイルを教員と生徒に提供できる規定を増設した。(第47条)

現行法では、教科書の編纂者は、教科用図書の検定又は編纂を完成させるために、他人の著作物を使用することができるが、教員と生徒へは紙の教科書しか提供できないことが規定されており、デジタル時代における生徒の電子かばん(デジタル教科書)の使用ニーズに対応できていなかった。そのため、今回の法改正では、教科書の編纂者がインターネット経由で教科書を送信することができる合理的な利用の規定を増設した。また、著作権者の権益保護を考慮して、この種の使用では、著作財産権者に使用報酬を支払わなければならないことも規定した。

  • 国立図書館がデジタル化により所蔵著作物を複製し、図書館内でオンライン閲覧サービスを提供することができる規定を増設した。(48)

今回の法改正では、国立図書館は、館内の所蔵著作物の紛失又は破損を防ぐために、先ずデジタル化により所蔵著作物を複製して、現代の著作物を完全に保存することができる規定を増設した。また、図書館のデジタルサービスの向上及び紙の所蔵資料の保存のために、現行法の館内所蔵書物の貸し出し又は閲覧に関する合理的な使用規定の代わりに、国立図書館又は普通の図書館などの機関が、一定の条件を満たせば、館内でオンライン閲覧サービスを利用者に提供することができるようにした。