タイビバ・サベコ投資ストラクチャーの賛否

タイビバ系関連会社が、法律上「ベトナム国内投資家」としてサベコの49%外国人保有比率上限を突破しました。

ベトナム商工省は、2017年12月18日にサイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)普通株の過半数を競売しました。サベコのベトナムビール市場シェアが40%強です。タイ・ビバレッジ(タイビバ)系のベトナム・ビバレッジ社が、このラウンドで放出予定のほぼ全株53.59%を110兆ベトナムドン(約5,500億円)で取得し、ベトナムにとって記録的な取引となりました。

世界のビール会社から高い関心が寄せられましたが、国内外を含め、入札に参加した企業はタイビバ以外が出ませんでした。(一方、入札にはベトナム人個人投資家が一人参加しました。)その理由の一つは、売却額が高額だったことです。このような売却を予期してよく起きることですが、商工省が競売日を公表した前の6ヵ月の間にサベコの株価が約75%上昇していました。ベトナム・ビバレッジが落札した価格は、1株32万ベトナムドンで2017年度株価収益率のほぼ47倍となります。株価が取引完了後に急落し、過去数週間25万5000ベトナムドン前後の狭帯域で取引されています。

 

 

価格に加えて、国際投資家がためらった他の主な理由は、サベコの外国人保有比率上限と、競売公表、入札登録そして競売日のタイミングの組み合わせでしたかもしれません。タイビバでさえが、2017年12月22日に上場しているシンガポール証券取引所(SGX)への報告書で、応札登録のスケジュールが「極めて過密」であり、事前に正式な株主の承認を得ることなく、資金調達の点でも妥協しなければならなかたことを明らかにしました。タイミングは非常に重要ではありますが、ここではサベコの外国人保有比率上限及びタイビバが使用した法的構造をもう少し詳しくみていきます。まずストラクチャーをご理解し、これからの投資案件の準備、そして厳しい締切りに整えるために役立つと願っています。

タイビバ・サベコの投資ストラクチャー

タイビバのサベコに対する出資の法的構造(ストラクチャー)を公開された情報に基づいて以下の表でまとめました。弊所はこの構造をベトナムの現投資法が施行された2015年から提案してきました。弊所の解釈は、投資法第23条により、外国人保有比率51%未満のベトナムで登録されている会社の子会社は、国内投資家と同じ条件で投資活動を行うことができます。この解釈の有効性が今回のサベコ案件により確立され、重大なディールでも、上記のような子会社には外資規制が適用されません。

ここで、ベトナム・ビバレッジは、Vietnam F&B Alliance Investment Joint Stock Company(ベトナムF&B) の全額出資子会社となります。タイビバの香港で登録されている間接子会社BeerCo Limited(ビールコ)が、ベトナムF&B 株の49%を保有しています。ビールコ が保有するベトナムF&B株は51%未満で、 ベトナムF&Bの子会社であるベトナム・ビバレッジには、外国人投資家の外資規制が適用されません。従って、ベトナムF&B は、サベコ株を国内投資家として取得することができました。

サベコの外国人保有比率上限

外国人保有比率上限が適用されるサベコ株の過半数を取得する為には、タイビバは、上記の国内企業構造を選択したと発表しました。ベトナム証券規制により、外国投資家が原則としていわゆ��「条件付き」事業内容を登録している公開会社の合計49%までしか保有することができません(国際条約や国内法によって別途に定めがない限り)。

条件付き事業内容とは、追加条件(特別な事業ライセンスなど)の対象となる活動です。ベトナム地場企業でよくみられますが、サベコも事業内容を豊富に登録していました。その中には、例えば、流通及び不動産取引などの条件付き活動もあります。(ベトナムでの会社は、全ての事業活動を登録しなければなりません。)事業内容を大幅に再構築しない限り、サベコの外国人投資家への売却は制限されていました。合計49%という上限でしたが、外国人投資家が既にサベコ株の10.4%(ハイネケン5%を含む)を保有していたことを考えると、今回売却対象の54%弱のうち外国人投資家が購入できる上限は39%未満でした。しかし、タイビバ傘下のベトナム・ビバレッジは国内投資家として過半数の株式を取得することができました。

タイビバによるサベコのコントロールはどの程度か?

サベコに対するタイビバのコントロール・レベルは大きな課題です。ベトナム・ビバレッジは、サベコ株の過半数54%を保有しています。但し、ベトナム・ビバレッジの100%親会社がベトナムF&B で、タイビバの子会社ビールコ がベトナムF&Bの少数株主に過ぎません。

政治などをさておき、純粋に法律観点から会社の決議採択要件をみてみましょう。株主総会の普通決議は原則として、総会に出席した株主全員の議決票総数の少なくとも51%を代表する株主の賛成で採択されます。特別決議の場合は、65%以上が必要です。同様に、取締役会の決議は、出席した取締役の多数が賛成するれば採択されます。ベトナムの企業法により、会社が定款で決議採択のためにより高い割合を定めることができます。しかし、公開されている最新の定款により、サベコは標準的な決議採択割合(株主総会51%及び65%、また、7名の取締役会で51%)を設定していました。従って、ベトナム・ビバレッジは、(関連当事者間取引を除き)サベコの株主総会普通決議を一方的に採択し、取締役候補者を選任することができます。

但し、ベトナムF&B株 の少数49%しか保有していませんので、タイビバはベトナム・ビバレッジを完全にコントロールすることはできない可能性があります。ベトナム人個人株主二人が51%を保有しています。2017年12月22日付タイビバのSGX報告書によると、『ベトナムF&Bのベトナム人投資家一人は、ベトナムにおける事業家で、ベトナムで弊社のアルコール飲料販売会社と同じグループの一員です。もう一人のベトナム人投資家は、〔サベコの〕買収に関連する助言を提供し、弊社の現地における事業コンサルタントです。』

上記のストラクチャーは、ベトナムにおける名義借り会社(ノミニー会社)と似たような潜在的問題をもたらします。要するに、タイビバのビールコ は、ベトナムF&B のベトナム人株主二人をどの程度コントロールすることができるでしょうか?

  • ビールコ 及びベトナム人株主は、ビールコ に更なるコントロール権を与える保留事項などの権利保護措置を含む適切な株主間契約を締結し、ベトナムF&B の定款を承認したか?(ベトナム企業法により、政府の承認を受け、発起株主のみが議決権優先株式を掌握でき、また、その有効期限が最大3年間に限られている。)
  • サベコ及びベトナム・ビバレッジの配当金はどうなるか?ベトナム人株主二人は51%をもらえるのか?(配当優先株主には議決権がないため、ビールコには役立たないと考えられる。)
  • タイビバはベトナム人株主の株式を買収することが可能か?いくらで?(ベトナムF&Bの市場価値は今やとてつもなく高くなっているはず。)
  • 彼らが株式を競合へ売却したらどうなるか?
  • もし争う場合、裁判所は株主間の約束を認め、執行するのでしょうか?(ベトナムでは裁判所判決の30%未満しか執行されず、 ましてや外国仲裁判断の承認及び執行。)

ベトナムF&Bの資料が公表されていませんので、全ての疑問を確かめることができませんが、このタイビバ・サベコ出資構造にはいくつかの潜在的なリスクがあります。

新投資法及び国有企業株式化の新管理委員会

ベトナムは、施行から3年間もかからず、投資法を再び改正しようとしています。最初に公開された草案には、M&Aの事前承認を含むM&A活動に影響を与えうる改正条項が含まれています。上記のタイビバ構造は、将来そのまま採用できない可能性があります。新法が早ければ2019年施行される予定です。従って、のちのHabeco、PV Power、PV Oil を含む後の国有株式の放出や商工省が保有するサベコの残り35%の売却は、2018年内にクロージングすれば、上記のストラクチャーを適用するチャンスがあるかもしれません。

その上、省々及び国家資本投資公社(SCIC)から権限を引き継ぐ、これから国有株式の放出を管理する新な国家資産管理委員会を設立する予定です。投資家にとって、今まで交渉したお話相手が変わる可能性があります。

タイビバ・サベコ投資ストラクチャーの賛否

+ 外国人投資家が国内投資家と同じ条件で、 投資活動に参加できる。

- その投資対象を完全に保有せず、 コントロールが限られている。