【平成29年(行ケ)第10132号(知財高裁H29・11・14)】

【判旨】

本願商標に係る特許庁の不服2016-1820号事件について商標法4条1項11号の判断は正当であるとして、請求を棄却した事案である。

【キーワード】

指定商品に係る類否判断、UNIFI、商標法4条1項11号

事案の概要

⑴ 原告は,平成27年1月27日,以下の商標登録出願をした(商願2015-6591号。甲33)。 商標の構成:UNIFI(標準文字)(以下「本願商標」という。) 指定商品:第9類「クロマトグラフィー及び質量分析の分野において用いられる 理化学装置の制御用コンピュータソフトウェア,データの収集・分析・管理・保存・ 転送及びデータの状況監視・レポート作成・法規制との適合性を図る理化学装置制 御用コンピュータソフトウェア,その他のコンピュータソフトウェア」 ⑵ 原告は,平成27年11月6日付けで拒絶査定を受けたので,平成28年2月5日,これに対する不服の審判を請求した。 ⑶ 特許庁は,これを不服2016-1820号事件として審理し,平成29年2月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同月20日,その謄本が原告に送達された。なお,出訴期間として90日が附加された。 ⑷ 原告は,平成29年6月20日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

【本願商標】

事案の概要を参照。

【引用商標】

(引用商標は1~3まで存在するが,裁判所の判断において言及されたのは,1のみであり,その他のものについては,省略する。)

争点

本願商標が、商標法4条1項11号に該当するかであり,具体的には,「商標登録に係る指定商品若しくは指定役務・・・又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」に該当するか否かである。

判旨抜粋(証拠番号等は適宜省略する。)

1 商標の類否判断

1 取消事由1(引用商標1に基づく商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)

について ⑴ 商品の類否 ア 指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとえ,商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,それらの商標は商標法4条1項11号にいう「類似する商品」に当たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。 イ 後掲の証拠(枝番があるものは,枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,本願商標の指定商品及び引用商標1の指定商品について,以下の事実が認められる。

(ア) 用途及び機能

本願商標の指定商品は,①クロマトグラフィー及び質量分析の分野において用いられる理化学装置の制御用コンピュータソフトウェア,②データの収集・分析・管理・保存・転送及びデータの状況監視・レポート作成・法規制との適合性を図る理化学装置制御用コンピュータソフトウェア,③その他のコンピュータソフトウェアであり,いずれもコンピュータソフトウェアである。コンピュータソフトウェアは,コンピュータを動作させるためのプログラムであり,パソコン等の汎用コンピュータだけでなく,様々な電子機器に使用されている。 引用商標1の指定商品は,「半導体チップ,半導体素子」(半導体素子等)である。「半導体チップ」とは,シリコンウエハにトランジスタやダイオードなどの回路素子を作り込んだ後,ウエハから所要機能部分だけが切り出された半導体片であり,「半導体素子」とは,半導体チップを入出力端子が付いたパッケージに組み込み,使用可能な状態に仕上げたものである。半導体素子等には,集積回路(IC),ダイオード,トランジスタ及び中央演算処理装置(CPU)等が含まれており,コンピュータのほか,多くの電子機器において機器の制御のために使用されている。 このように,コンピュータソフトウェアと半導体素子等とは,いずれも電子の作用を応用した商品であり,コンピュータ等の電子機器は,コンピュータソフトウェアを用いて,半導体素子等が含まれる電子回路等に指示されることで,必要となる機能を実現する。

(イ) 生産部門

コンピュータソフトウェア及び半導体素子等を製造する事業者の中には,ルネサスエレクトロニクス株式会社,セイコーエプソン株式会社,パナソニック株式会社,浜松ホトニクス株式会社及び富士電機株式会社のように,コンピュータソフトウェアと半導体素子等の両商品を製造している事業者が相当数存在する。 (ウ) 販売部門 コンピュータソフトウェア及び半導体素子等は,いずれも,様々な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店において販売されているだけでなく,Mouser Electronics Inc,緑屋テクノ株式会社,アナログ・テック株式会社,ユニ電子株式会社,東京エレクトロンデバイス株式会社,デンセイシリウス株式会社,株式会社ドスパラ(ドスパラ通販),株式会社ユニットコム(パソコン工房)など,半導体素子等を含む電子部品を専門に扱う販売店においても,両商品が販売されている。

(エ) 需要者

一般の個人需要者は,自らが求めるスペックに合わせて,必要なパーツを組み立ててパソコンを作り上げたり,所有するパソコンの性能を向上させたりするために,コンピュータソフトウェアに含まれるオペレーティングシス���ム(OS)やアプリケーションソフトウェア,半導体素子等に含まれるコンピュータの中央演算処理装置(CPU)等を購入し,使用している。

事業者等において半導体素子等を主に購入する者は,電子機器等の製造メーカーであり,これらの事業者の中には,企業内で使用するアプリケーションソフトウェアのほか,製品の品質・管理,又はその設計などに使用する産業用のコン

ピュータソフトウェアを購入し,使用する者が存在する。 ウ 前記イの認定事実によると,本願商標の指定商品である「コンピュータソフトウェア」と,引用商標1の指定商品である「半導体チップ,半導体素子」とは,①いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等の電子機器を稼働するために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能において密接な関連を有するものであること,②両商品を生産している事業者が相当数存在すること,③様々な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけでなく,半導体素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,両商品が販売されていること,④両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカーにおいて共通する場合があることなどの事情に照らすと,両商品の原材料及び品質が異なること,完成品と部品の関係にないことなどを考慮したとしても,両商品に同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同するおそれがあると認められる関係にあり,商標法4条1項11号にいう「類似する商品」に当たると解するのが相当である。

解説

本件は,商標権に係る審決取消訴訟である。特許庁は、本願商標について,上記引用商標の指定商品について類似しているとして,商標法4条1項11号1にもとづいて拒絶査定(及び審決)をおこなったものであるが、裁判所は当該判断を追認した。

裁判所は、従来の判例規範を確認した上で、本願商標の指定商品(コンピュータソフトウェア)及び引用商標1の指定商品(半導体素子等)の「用途及び機能」,「生産部門」,「販売部門」,「需用者」について分析した。 その上で、裁判所は、「①いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等の電子機器を稼働するために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能において密接な関連を有するものであること,②両商品を生産している事業者が相当数存在すること,③様々な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけでなく,半導体素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,両商品が販売されていること,④両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカーにおいて共通する場合があること」を認定した上で,「両商品に同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同するおそれがあると認められる関係」であるとした。

なお,本願商標と引用商標が類似するものであることについては,争いがない。 本件は、類似性について争いがなく,商標法4条1項11号の指定商品,指定役務に係る類似性の判断を理解する上で、参考になる事案である。よってここに取り上げる。