国際的外食チェーンにおけるベトナムでの経営について

ドウェイン・モリス・ベトナム法律事務所

オットー マンフレッド 倉雄

国際的外食チェーンにとって、ベトナム進出の絶好のチャンスが到来します。2015年1月より、ベトナムの外食産業に対して、100%外資系企業の参入が認められるようになります。外資系企業は、製造及び企業内の物流管理ネットワークも設けることができます。今まで小売店の参入障壁となっていた「エコノミックニーズテスト」(ENT)は、レストランに適用されないと考えられます(ただし、大規模小売店には未だに適用されます)。今回の市場アクセスの自由化で、外資により大量生産のファーストフード・チェーン店の法的枠組みが構築されます。また、今回の自由化は、現在、ベトナムでベトナム人の名義を借りて、レストラン事業を実質的に経営している外国人にも影響があります。今回の市場開放で、外資系企業による「100%外資」化と完全なコントロールが可能になり、多くの国際的外食チェーンが一斉に進出することが見込まれています。

1.外資系レストランに関するベトナムのWTO公約

現在、ベトナムの世界貿易機関(WTO)加盟時のサービス部門に関する公約によって、外資系企業は、「ホテルの建設、改装、再生又は譲渡にかかる投資と同時に行わない限り」、レストランを自己の名義で開設することができません(Sector 9.A., Viet Nam – Schedule of Specific Commitments, GATS/SC/142, WTO (2007))。このため、ホテル併設ではない、外国人が経営するような外形の多くのレストランでは、実際はベトナム人又はベトナム法人によって、法律上登録及び経営がなされていると考えられます。

法律上、ベトナム人又はベトナム法人とのジョイント・ベンチャーによって、そのような規制を回避することもできませんでした。ジョイント・ベンチャーは原則として、「外国による投資」と判断されていたためです。一方で、許認可権限を有する当局は広範な裁量を持っています。たとえば、ホテルの部屋が数室しかなくても併設条件を満たすとして、レストランの許可がなされていた可能性があります。

この「配膳サービス」(CPC(中央生産分類)642)及び「飲料サービス」(CPC643)にかかる市場アクセスに対する制限は、ベトナムWTO加盟の8年後である、2015年1月11日に撤廃されることになります。

2.セントラルキッチン設置が無制限

外食チェーンはセントラルキッチンを設置して、スケールメリットを生かし、大量生産で高品質の食品を店舗に供給してきました。

ベトナムで食品製造自体には、外資系企業特有の制限はかけられていません。ただし、諸外国の場合と同様、食品の安全性・衛生面に関して、レストランの従業員が許認可を取得・維持する必要があります。現地法人と外資系企業に、同一の規定が適用されているといえます。

3.企業内流通及び物流管理が無制限

外食チェーンでは通常、色々なサプライヤーから食料を調達するために強固な物流管理ネットワークを必要とします。物流部門について、外資系企業に対し一層の規制緩和がなされました。ただし、物流サービスを外部顧客に提供する場合は、諸制約が残っています(物流部門の市場アクセスに関する更新情報は、ここへ)。一方、外資系企業は、セントラルキッチンから自社レストランに製品を供給することができる見込みです。また、現地のサプライヤーからの調達は制限されていません。

4.エコノミックニーズテストのレストランに対する不適用

小売店に該当しない限り、「エコノミックニーズテスト」(ENT)が適用されないことになります。ENTが、小売分野での市場アクセスに対する非関税障壁であると多くの外国人投資家は考えています。しかし、小売サービス(CPC 631 + 632, 61112, 6113, 6121)は、ベトナムのWTO公約のもとでは、流通サービスと位置付けられています。一方、飲食サービスは広く、観光関連サービスに分類されます。レストランは、理論的には、流通ではなく、飲食物を提供するものであるという重要な違いがあります。

ENTの抜け道を利用して、外資系企業の参入阻止するため、許認可権限を有する当局がエコノミックニーズの裁量権を行使して、2店舗目以降の拡張計画を遅らせるということが行われていました。2013年に、特定の地域では、500平方メートル以下の店舗について、ENTが撤廃されています。現地の許認可権限を有する当局が、ENTを外資系レストランに適用しようとしても500平方メートル以下のレストランには適用できないということになります。

5.米及び砂糖の流通制限はレストランと無関係

外資系企業による、タバコ・米・砂糖等数品目の流通取扱は禁止されています。しかし、レストランで、飲食物を取り扱うことはできます。前述のように、外部顧客に流通サービスを提供することと、レストランで飲食物を提供することは異なるという違いがあります。換言すれば、もっぱら食事を提供するレストラン(例、米食、菓子、砂糖の入った飲料)は、米や砂糖そのものを扱う小売業者に該当しません。今回の改正で、外資系のレストランが、米や砂糖を含む飲食物の提供することは問題がないとされる見込みです。

6.100%外資系企業が外食チェーンを早期開設をする方法

大規模な外食チェーンの立ち上げに要する時間を考えると、ベトナムに速やかに進出することが望ましいといえます。

特に、商標・特許は、知的財産権の保護の見地から、開業に先立って準備・出願されることが重要です。仮に事業計画が変更されてベトナムに進出することがなくても、ベトナムでは商標登録による負のリスクはないので、出願する方がよいのは自明です。知的財産権を出願しないリスクは一層高いといえます。他の企業が、先に商標を登録して、知的財産権による排他的な権利を行使して利益を得るおそれがあるからです。

出願書類を十分に事前に準備するのが、賢い投資家といえます。外国の資料をベトナム法に適合させることは、時間を要します。2015年1月に一斉に規制緩和が行われれば、好スタートを切ろうとする他企業の案件と競合して、審査手続きが遅延するリスクがあります。他の企業に先立って、書類を整え、提出の準備を整えることが望ましいといえます。

7.既存のレストランの100%外資化

ベトナムで既にレストランを経営しており、100%外資化したい場合、今回のベトナム外食産業の規制緩和は非常に好都合です。しかしながら、現在のビジネスパートナーが登記上のオーナー、あるいは書面上でレストランの経営支配権を握っている場合は、交渉時にトラブルが起こりえます。パートナーとの利益相反の問題をできる限り避けられるように、よく事前に対策を練ることが賢明でしょう。

チャンス到来!

以前からベトナム国内の現地企業への投資又は現地ライセンシーとのフランチャイズ契約を検討していた外資系外食チェーンは、間もなく100%外資が可能になります。設立済みの現地レストランの経営者は、外食事業の所有を変更することができます。自社レストランの設立、運営の絶好のチャンスといえます