2016年4月5日、連邦司法省(DOJ)の詐欺担当部は、「詐欺担当部による、連邦海外腐敗行為の執行 計画とガイダンス」(本ガイダンス)(リンクはこちら)を発表した。本ガイダンスは、副司法長官 であるサリー・クイリアン・イェーツ氏が、企業による不正行為についての個人の責任についての見 解(イェーツメモ)を発表してから7か月後に出されたものである。イェーツメモでは、企業がDOJへ の協力により得られる便益は多くの要素に依拠するものであるが、そもそもそのような便益を得るた めに必須となる要素のひとつは、従業員個人の責任に関連する事実一切を訴追機関に開示することで ある、と述べられていた。本ガイダンスは、連邦海外腐敗行為法(FCPA)に基づく調査についての イェーツメモの内容をさらに進めるものであり、自主的開示による便益、自主的開示及び協力とみな される行為、自主的開示及び協力による全面的な便益を得るために企業が行う必要のある行為につい て記載している。

本ガイダンスによると、DOJは、3つの方法でFCPAに基づく執行を推進してきている。 第1に、DOJは、FCPAユニットに10人の新たな検察官を追加するとの昨年の発表を繰り返し、FCPAの 執行に必要なリソースを増加させている。第2に、DOJ及び他国の規制機関は、さらに一層協力関係を 深め、FCPA違反可能性行為、文書、証言等をより効果的に共有している。リソースの増加に同様、こ れは既に明らかなものであり、特に目新しいものではない。重要な点として、第3に、1年間の新た なFCPA試行プログラムが発表された。この試行プログラムは、違反行為の自主的開示、DOJへの全面 的な協力、企業による内部統制及びコンプライアンスプログラムの改善を促すためのものである。違 反行為の全面的な自主的開示、調査官への協力、違反行為からの改善措置により企業が全面的な便益 を受けるための基準についての透明性を増すため、本ガイダンスでは、これら3つについてDOJが期待 している内容の詳細について記載されている。

自主的開示:本ガイダンスによると、試行プログラムのもとで自主的開示を理由に便益を受けるため には、(1)自主的開示が「開示される現実的な恐れ又は政府による調査の前」に行われており、(2)問題 となった行為について企業が把握した後即時といえる合理的な期間内に開示され、かつ、(3)(イェー ツメモに記載されたように)関与した個人に関する関連事実を含め、FCPA違反について知っている関 連事実の一切を開示したこと、が必要とされる。

調査官への協力:試行プログラムのもと、DOJは、以下に記載された要素が全て満たされた場合に は、企業に対して協力による全面的な便益を与える。全要素が満たされなかった場合には、可能な限 りの部分的な便益が可能かDOJは考慮する。本ガイダンスでは、全面的又は部分的な協力を評価する にあたり、連邦検察局のマニュアルに記載された「連邦政府による企業の起訴に関する原則」に加え て、以下の要素を検討することが指摘されている。

  • 役員、従業員、エージェントの関与に関する事実を含む、関連する事実一切が適時に開示され たか否か
  • 協力が受身ではなく積極的であった程度
  • 関連資料が収集され開示されたか否か、及び、企業が内部調査についてのアップデートを適時 に提供したか否か
  • 政府調査に対して企業が協力したか否か
  • 第三者による違反行為の可能性がある行為について、関連する事実一切が提供されたか否か
  • DOJの要求に応じて、役員や従業員(米国外に所在する者も含む)をDOJによるインタビュー に供したか否か(修正第5条による保護を前提とする)
  • 企業による独立した調査において発覚した関連事実一切が開示されたか否か
  •  米国外に所在する文書が開示されたか否か
  • 第三者による文書提出や米国外での証言獲得(法的に可能な場合)を促進・調整したか否か
  • 要求された際に、関連する外国語での文書が翻訳されたか否か

本ガイダンスによると、DOJは、協力の範囲、量、質、時期等を勘案のうえ、事案ごとに個別に検討 する。

違反行為からの改善措置:本ガイダンスによると、違反行為からの改善措置を理由に便益を得るため には、上述の協力に基づいて便益を得られることが必須となる。すなわち、上述の協力に基づき便益 を得られる場合で、当該企業に即した内容の効果的なコンプライアンス及び倫理プログラムを策定・ 実施する場合には、さらなる便益を得ることができる。

試行プログラムにおける便益:2015年を通じて、DOJは、FCPA調査に協力した企業に対しては「一貫 して」便益を供与し、その透明性も増加させる、と述べてきた。本ガイダインスでは、自主的開示、 協力、改善措置による便益の具体的内容及び一環性を示す努力が伺える。特に本ガイダンスで は、FCPA違反行為について企業が自主的に開示し、全面的に協力し、適時かつ適切な改善措置を行っ た場合にDOJが取り得る行動として、以下が記載されている。

  • 罰金が求められた場合には、量刑ガイドラインの罰金最高額からの50%を上限とする減額(自 主的開示の要件が満たされた場合には、最大で25%の減額)を供与する
  • 企業が効果的なコンプライアンスプログラムを策定・実施した場合に、監督官の指名を必要と しない
  • 不起訴を検討する

企業と政府の間でこれまで不起訴契約や起訴遅延契約がどのように締結されたかについては透明性に 乏しく、また、自主的開示や協力が行われた事案における刑罰の内容を比較することは、個別事案の 特殊性により非常に難しいため、自主的開示を行って協力するか否かの判断に迫られた企業にとっ て、自主的開示及び協力による便益の可能性について評価したり量計化したりするのは非常に難しい と考えられてきた。本ガイダンスは、潜在的な便益について量計化する方法を提示することにより、 これらの問題について検討し、自主的開示及び協力へのインセンティブを高めるためのものである。 本ガイダンスが最も重要な影響を与える点は、自主的開示、協力、改善措置により便益を得ようとし ている企業に対してDOJが何を期待しているかについての具体的な説明に加え、自主的開示を行わな かった場合には、訴追機関との交渉において非常に大きなマイナス要素として扱われる、という点で ある。

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