オーストラリア消費者法およびオーストラリア証券投資委員会(ASIC)法に対する変更が2016年11月に施行され、不当契約条項からの保護(これまでは消費者だけに適用)が小規模事業者にも適用されるようになります。

この規制体制の拡大は標準書式契約(金融サービスに関する契約も含む)だけに限られ、少なくとも一当事者が小規模事業者であり、契約当初の支払金額が30万ドル未満の契約、もしくは契約期間が12カ月を超える場合には当初支払金額が100万ドル未満の契約だけが対象となります。

このeBulletinでは、今回の変更が実際に及ぼす影響を考慮し、これに対して貴社がなんらかの変更を検討する必要があるとすれば、それがどのようなものであるかを考えます。

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クイックリンク

  •  不当契約条項規制体制の拡大
  • 今回の変更が及ぼす影響
  •  契約に不当条項があると、どのような結果を招きますか
  • 貴社のリスクと取るべき対策は
  • お問い合わせは 

不当契約条項規制体制の拡大

標準書式契約の不当条項からの保護が適用されるのは、2016年11月12日以降に締結もしくは更新された標準書式契約で、次の要件を満たすものです。

  • 少なくとも一当事者が「小規模事業者」(従業員数20人未満の事業)であり、かつ
  • 契約の当初支払金額が30万ドル未満である。もしくは
  • 契約期間が12カ月を超える場合には当初支払金額が100万ドル未満である。

標準書式契約とは、それを受け取る側の当事者には条項について交渉する余地がほとんどなく、契約を結ぶか結ばないかの選択肢しかない形で提示される契約です。

金融サービスに関しては、小規模事業者の与信契約が保護対象枠内であるかどうかの判断にあたり、支払金利は当初支払金額には含まれません。銀行業行動規程(Code of Banking Practice)や相互共済組合行動規程(Customer Owned Banking Code of Practice)といった業界の行動規程が適用される小規模事業者の契約も、この不当契約条項についての法規制の対象となります。

不当である可能性のある契約条項の例として、法は次のものを挙げています。

  • 契約に基づく義務の回避や制限を一当事者だけに許す条項(他方当事者には不可)
  • 契約の解約を一当事者だけに許す条項(他方当事者には不可)
  • 契約違反や解約の際に、一当事者だけを罰する条項(他方当事者は罰せられない)
  • 契約内容の変更を一当事者だけに許す条項(他方当事者には不可)

今回の変更が及ぼす影響

オーストラリア統計局によれば、2015年6月の時点でオーストラリアで業務活動を行っている事業のうち61%には従業員がおらず、28%が従業員数1-4人、9%が従業員数5-19人でした。従業員数が20人以上の事業は全体の3%に満たず、この内訳から判断して、今回の新規則は(契約の規模によりますが)国内事業の大多数に適用されることになります。

今回導入される変更の影響を受けるセクターとしてACCCは小売店舗リース、フランチャイズ、請負契約を挙げています。電気通信サービスやITサービスも影響を受けると考えられます。

金融サービスに関しては、小規模事業者は日常的に金融商品や金融サービスの標準書式契約を結んでいます。例えば事業者ローンやクレジットカード、顧客契約やブローカー契約などは、ほぼ確実に標準書式契約です。不当契約条項に関する規定の影響を受ける可能性のあるシナリオとしてASICは次のような例を挙げています。

  • 与信契約の一条項に基づき、書面による事前通知があれば金利や料金などの契約条件を変更する権利が貸し手にはあるが、貸し手が料金を大幅に値上げした場合でも、小規模事業者には解約する権利がない。
  • 有担保事業者ローンの一条項にある義務を借り手が履行しなかったことを理由に、小規模事業者が多額で過度の義務不履行金を払わなければならなくなる。
  • 期間の決まったリースの自動更新において、更新されたリース契約を解約する場合に早期解約金が適用される。

契約に不当条項があると、どのような結果を招きますか

不当条項は無効となります。ただし、同条項がなくても契約の運用が可能な場合には、それ以外の契約内容は引き続き当事者を拘束します。

  • 裁判所が契約の条項を不当と判断した場合には、次のような広範な命令を下すことができます。
  • 契約のすべてもしくは一部を無効とする。
  • 契約を変更する。
  • 契約や取り決めの一部の条項もしくは全条項の強制履行を拒否する。
  • 小規模事業者に対する返金や財産の返却を当事者に命令する。
  • 当事者の費用負担で、影響を受けた小規模事業者にサービスを提供するよう命令する。

不当条項によって生じる罪や罰則はありません。

貴社のリスクと取るべき対策は

標準書式契約を使用している企業にとってのリスクは、拘束力があると考えている契約の条項が無効にされてしまうことです。それ以外の契約条項に拘束力があっても、契約の見直しを行ってその条項がなくても強制履行ができるようにしておかない限り、強制履行の手段は限られてしまう可能性があります。

裁判所による契約の変更も、書き直しにおける当事者の影響力は限られている上、企業が通常主張できるこの他の権利が拒まれるリスクもあるため、望ましくありません。

また、小規模事業者が契約条項の不当を主張して、大企業による正当な強制履行を困難にすることも考えられます。

まだ対策を取られていない場合には、次のような対応をされることをお勧めします。

  • 小規模事業者向けに使われている標準書式契約を見直し、不当だと思われる可能性のある条項がないかどうか判断する。
  • 小規模事業者との既存の契約を見直し、契約の変更や更新にあたって新しい不当契約条項規制体制の対象となるかどうか判断し、対象となる場合には、その契約の中に不当と考えられる可能性のある条項があるかどうか確認する。
  • 標準書式契約や小規模事業者との既存契約に不当な条項がある場合には、それを修正する。