Summary

要約

オーストラリア連邦裁判所は最近、豪トヨタ自動車に対するワイヤーハーネス販売において日本の主要競合企業と談合を行ったとして矢崎総業に有罪判決を下しました。この判決は豪競争法の域外適用と、これに違反する外国企業が受ける大きな影響を示しています。

今回のeBulletinではこの連邦裁判所の判決について述べ、国際企業にとってこの判決が意味するものを反競争的行為という側面や、カルテル行為に科される重度の罰則という側面からまとめます。また豪消費者と取引を行う企業が豪競争法を考慮することがなぜ非常に重要であるのか、リスクを把握して適切な法令遵守管理を行うためにはどうする必要があるのかについても説明します。

矢崎総業に対する連邦裁判所の判決

ACCC が近年提訴したこの訴訟で連邦裁判所は日本企業矢崎総業が「談合行為」を行い、Competition and Consumer Act 2010(2010年競争・消費者法)に違反したという判決を下しました。

同裁判所はオーストラリアでのトヨタ社カムリの製造に使われたワイヤーハーネスの販売に関し、 矢崎総業が日本の主要競合企業と見積りを相互に調整するために複数の取決めを結んだり、有効化したりしたと判断しました。この違反行為は2003年および2008年に行われました。

豪競争・消費者法の競争規定は、オーストラリア国内で設立された、もしくは国内で事業を行う法人がオーストラリア国外で行う行為にも適用されます。矢崎総業は日本法人で、豪国内には店舗もオフィスも従業員もおらず、本件に関連する行為はすべて日本で行われました。したがって本件は、矢崎総業自身がオーストラリア国内で、その完全子会社オーストラリア・アロー社とは別に業務を行っていたかどうかが争点となりました。

裁判所は、豪トヨタ自動車に対するワイヤーハーネスの販売については、矢崎総業がその子会社と並行してオーストラリア国内で業務を行ったという判断を下しました。この理由は、豪トヨタ社へのワイヤーハーネス販売について矢崎総業が行った指示と統制の程度でした。矢崎総業は世界的にトヨタ自動車と関係をもち、製品は日本のトヨタ自動車を通じた世界的な設計に基づいて供給され、世界的に調達されたものでした。オーストラリアで製造されたトヨタ社カムリ向けワイヤーハーネスの入札過程については、裁判所は矢崎総業がその子会社を関与させず、自身が大きく関与したと判断しました。

またオーストラリア・アロー社については、2002年に矢崎総業の競合企業の豪子会社と市場分割および価格操作を行ったと裁判所は判断しました。

ただし、ACCCは請求内容のすべてにおいて勝訴したわけではなく、裁判所はオーストラリア・アロー社が日本の矢崎総業が結んだ談合の取決めを有効化したという主張は退けました。また競争・消費者法の以前の価格操作規定の下においては、価格操作の取決めはなかったと判断しました。この理由はトヨタに対するワイヤーフレームの供給においては、価格操作の対象となる市場がオーストラリアには存在しなかったと判断されたためです。

罰則についての審理はこれから行われることになっています。

国際企業がオーストラリアの競争法規制を遵守することの重要性

今回の判決から学ぶべきことは、オーストラリアでの業務が直接的であるか、間接的であるかに関わらず、国際企業は豪競争法とその域外適用を意識する必要があるということです。

外国企業がカルテルの取決めを結んだ場所がオーストラリア国外であっても、豪国内でなんらかの業務を行ったことが立証できる場合には、豪競争法違反と判断される場合があります。さらにACCCはこのような企業を提訴する意志があることを明らかにしています。矢崎総業の判決を受け、ACCCのロッド・シムズ会長は次のようなコメントを発表しています。


「談合の取決めがオーストラリア国外で行われた場合でも、ACCCは国内の消費者と産業を守るためにオーストラリアの反カルテル法の強制執行を求めます。」

ACCC と JFTC 間の協力に関する取決め

今回のACCCの提訴以前に、アメリカ、カナダ、日本でも競争当局が矢崎総業と他のカルテル参加企業に対して同様の強制執行を行いました。ACCCによれば、本件の発端は違反行為を通報した提訴免除申請でした。

以前の記事でもご報告いたしましたが、ACCCと日本公正取引委員会は今年はじめに相互協力に関する取決めを締結しました。この取決めは両国競争当局間の自由な情報交換と、審査における相互補助を可能にし、反競争的行為を阻止するための世界的な協力を促進するものです。このような取決めにより、反競争的行為の把握とその提訴の可能性は高くなっています。

豪競争法に違反した場合の罰則規定

矢崎総業が違反判決を受けた競争・消費者法の規定は現在も施行中です。さらに2009年以来、同法には刑事制裁を含め、カルテル行為に対処する対策が強化されています。

競争・消費者法の競争規定に違反した場合の罰則は重度なものとなりえます。法人の場合には一犯罪あたりの罰金は最高で、違反行為から得た利益の総額の3倍に1000万ドルを加算した金額か、利益額が正確に決定できない場合にはその企業(関連法人を含む)の前12か月間の売上額の10パーセントのいずれか高い方と定められています。

個人に対する罰金は50万ドルで、カルテル行為については最高10年の懲役と/もしくは各カルテル行為あたり最高36万ドルの罰金が科されます。