はじめに

建設契約は一般的に、契約条件書一式と、これに付属する発注者要件書などの技術 書類により構成されます。建設契約の一部となる各書類はそれぞれに固有の機能を 有しますが、その一方で、契約が全体として効果的に機能するためには、他の契約 書類と整合性をもって機能する必要があります(そして、その逆も言えます)。

もっとも、実務上は、契約条件書や技術書類は複数の作成者によって準備され、 お互いの作業がほとんどまたは全く参照されない場合もあります。そしてこれは、必然 的に契約書類の間で整合性が欠けるという結果をもたらすおそれがあり、ひいては、 (書類の優先順位を定める条項が盛り込まれているにもかかわらず)契約を解釈する際 に困難が生じる可能性があります。

今般控訴院で審理がなされたMt Højgaard v E.ON事件では、契約書類の間で整合 性が欠如するという問題に焦点が当てられました 1 。本事件における高等法院の判決 については、以前当事務所の建設ニュースレター(2014 年 6 月号)で検討しており、 また(省略された作業の評価に関する)本事件の別の側面についても、2014 年 8 月 号で取り上げています。

Mt Højgaard v E.On 事件

本事件は、Mt Højgaard(本件請負者)が設計と設置を行った洋上風力発電所の基礎 構造物が 20 年の耐用年数を有することを同社が保証していたとする第一審の認定に ついて、同社が控訴を提起したものでした。

背景および第一審における認定の概要

本件請負者は、洋上風力タービンの基礎部分の設計と建設を行うために、E.On(本件発注者)に雇われていました。

本件発注者は、入札段階において発注者要件書(Employer's Requirements、以下「ERs」)を発行しており、その技術要件の中で、 20 年の「設計寿命」と、「基礎部分の設計は、計画的な取替作業を行うことなく、あらゆる面において 20 年の寿命を確保するものとする」 ことに言及していました。

本件請負者は ERs に基づいた入札書類を提出し、契約が締結されましたが、この契約には、契約条件書が含まれており、これによれば 契約条件書が ERs に優先するとされていました。同契約条件書では、本件請負者の義務として、善良なる管理者の注意と努力をもって 本工事を設計・実施する旨と、各項目が仕様書に基づいて決められたとおり目的に適合 するように工事を設計し、実施しなければならない旨が定められていました。

ERs には、本件請負者が基礎部分の詳細設計を作成するにあたっては、中でも J101 と して知られる国際規格に従うという要件が含まれており、本件請負者はこれを遵守しました。 ところが、不運なことに J101 に含まれていた方程式には誤りがあり、それが原因で、完成 後間もなく基礎部分に欠陥が生じました。その結果、両当事者は、修復工事の費用を どちらの当事者が負担すべきかについて、裁判所による宣言を求める申立てを行いま した。

第一審の裁判官は、本件請負者が、基礎部分について 20 年の耐用年数を保証して いたと判示し、かつ、本件請負者がこの保証に違反した(しかしその他一切の契約条件に は違反していない)との認定をしました。その根拠は、本件請負者が、ERsに基づき、 一定の結果(すなわち、基礎部分が少なくとも 20 年の耐用年数を有すること)を達成する ことを義務付けられていたとするものでした。本件請負者はこの認定について控訴しま した 2

控訴審

控訴院は、第一審の判決を覆し、契約を適正に解釈すれば、耐用年数が 20 年である ことに関する保証は含まれていなかったと判示しました。控訴院の論拠は次のように概説 することができます。

  • 同裁判所は、基礎部分の設計において 20 年の耐用年数を確保する旨が ERs に 定められていたこと、そして、一見したところ、そのような規定が契約に盛り込まれた 場合は、基礎部分が 20 年間機能するという保証になることを認めました。
  • 一方、技術要件における他の全ての規定は「設計寿命」を示唆するものでした。 同裁判所は続けて、ある構造物の設計寿命が 20 年である場合、それが必然的に 20 年間機能することを意味するわけではない(ただ、恐らくそうではあろうが)と述べ ました。
  • 仮に契約で絶対的な品質の保証が要件とされていたとすれば、それは(契約書類の 優先順位において 4 番目であった)技術要件の中に隠されることなく、契約条件書 に記載があることが期待されるところでしょう。
  • 契約条件書により課せられた義務は、20 年の稼動寿命を保証するというものでは なく、それとは逆に、善良なる管理者の注意、専門技能、(同条件書に定義されて いるところの)良き商慣行(Good Industry Practice)の厳守、ERs の遵守などと いったものでした。裁判所はまた、「目的に適合する」という用語が、「良き商慣行を 用い、かつ、仕様書に基づき決められたとおり」という文言により限定されていたという 事実も強調しました。
  • 最後に、裁判所は、主張されたところの稼動寿命に関する保証については、これが その他の技術要件(および契約条件書)との整合性に欠けているとの認定を下しま した。裁判所は、主張されているところの保証を遵守するために仕様書と入札書類の 遵守を超えた「一層の努力をする」ことを本件請負者に義務付けることがもしも意図 されていたとするならば、そのことが契約書類において明白に警告されておくべきで あったとも指摘しました。

結語

Mt Højgaard v E.On 事件は、契約条件書とそれに関連する技術書類との間で相反する文言が存在することの危険性について教訓を 与えてくれる事例です。よって、契約を作成する段階において契約書類の作成担当者全員が緊密に連携し、契約のあらゆる要素に ついて整合性が保たれているよう確実を期すことは、絶対に必要なことでしょう。