2014年4月以降、アクティビスト投資家であるビル・ アックマン氏は、ヴァリアント・ファーマシューティ カル・インターナショナル社(以下「ヴァリアント 社」)によるアラガン社買収を試みてきた。本ニュー ズ・レターでは、以前(2014年7月)、アックマン氏 が買収を行うために計画した、異例かつ非公式の株主 総会に関するレポートを掲載した。11月中旬、アラガ ン社の取締役会がアクタヴィス社によるアラガン社の 買収を承認したことによって、アックマン氏の計画は 阻止されることとなった。アクタヴィス社によるアラ ガン社の買収金額は、660億ドルと見られている。 もっとも、アクタヴィス社による買収が承認されるま で、アラガン社は、同社の特別株主総会においてアッ クマン氏及びヴァリアント社が同社に賛同する取締役 を選任するための投票を行うことを差し止めること で、アックマン氏及びヴァリアント社の計画の進行を 妨げようとしていた。

アラガン社は、差止を求める訴状において、アックマ ン氏及びヴァリアント社が、インサイダー取引を禁止 した14(e)項を含む米国1934年証券取引法及び同法下で 施行されている規則の様々な規定に違反した、と主張 した。アックマン氏は自身のヘッジ・ファンド(パー

シング・スクエア・キャピタル)が出資するPS 1社(PS Fund 1, LLC)というペーパーカンパニーを設 立し、2014年2月後半からアラガン社の株式を取得し 始めていた。同年4月の早い段階で、PS   1社の運営契約 は、ヴァリアント社がPS  1社の持分の3%を有するもの と修正された。そして、PS   1社はさらに積極的にアラ ガン社の株を取得するよう動き出し、その結果、PS 1社は、2014年4月21日までに、アラガン社の発行済み 株式の9.7%を取得するに至った。アラガン社は、アッ クマン氏が、上記の時期に、ヴァリアント社によって 近いうちに株式公開買い付けが行われる予定であると いう、内部情報かつ非公知の情報を有していた、と主 張した。規則14e-3(a)項により、株式公開買付けの申出 人が、一旦株式公開買付けを行うための実質的な行動 をとった場合、株式公開買い付けに関する重要な非公 知の情報を保有する者(当該株式公開買付けによる買 付人は除く)が、対象会社の株式を取得することは、 詐欺的、不正的、そして操作的な行為又は活動とな る。アックマン氏及びヴァリアント社は、7月の段階 まで、株式公開買い付けではなく「交渉による買収合 併」の準備を行っていたものであり、株式が購入され た時点において、株式公開買い付けに向けた実質的な 行動をとってはいなかった、と反論した。さらに加え て、アックマン氏及びヴァリアント社は、ヴァリアン ト社がPS  1社の持分を有しており、彼らがひとつの

「買付人」として行動していた、と主張した。

2014年11月4日、カリフォルニア州中部連邦裁判所のデ ビッド・カーター裁判官は、アラガン社からの差止め の訴えを退けた。同裁判官は、アックマン氏に対し、 アラガン社の株主に対して同人とヴァリアント社との 関係を開示した上で、改めて委任状による代理投票を 求めるよう命じた。同裁判官は、アラガン社は、アッ クマン氏がインサイダー取引に関する規則に違反した か否かについて、「深刻な疑問」を投げかけたと述べ た。しかし、同裁判官は、PS1社の投票に対する差止 命令によって、アラガン社の株主が損害を受けるか否 か、どの程度の損害を受けるかを判断することは非常 に困難である、と述べた。最終的にアクタヴィス社が より高い金額でアラガン社の買収を行ったため、上記 裁判におけるアックマン氏とヴァリアント社の勝利 は、ヴァリアント社によるアラガン社買収成功につな がらなかった。しかし、彼らのかかる取り組みはクリ エイティブな敵対的買収戦略及びそれに関連するリス クの例を示すものである。